《中部西和賀》西和賀町における「西わらび生産・販売振興」
奥羽山脈に囲まれ、豪雪地帯として知られている西和賀町在来のわらび「西わらび」は、例年、5月上中旬に旬を迎えます。「西わらび」という名称は、その昔、商売人達が他産地のわらびと区別するため、岩手県の西に位置する当地域のものを「西わらび」と呼んだことに由来すると言われています。茎が太くて長さもあり、水煮にすると「とろっ」とした食感で柔らかく、うま味成分が豊富でアクやスジが少ないと言った特徴を持つ「西わらび」は、品質が良いと評価されてきました。
西和賀町では、「西わらび」の可能性に着目し、平成12年頃から水田転作品目として、山に自生していたわらびの栽培を進め、希望する町民に根茎を配布するなど、生産拡大に取り組みました。そして、平成20年3月には、生産者だけでなく加工・販売業者、関係機関団体で一体的に対応するため「西和賀わらび生産販売ネットワーク(以降ネットワーク)」を設立し、町全体でブランド化に取り組んでいます。
1「西わらび」の高品質・安定生産に向けて
(1)高品質なわらびを提供するために 優良系統選抜
ネットワークでは、生産者が増えてきたことから、より品質が良いものを安定的生産できるよう、町内に自生していた有望と思われる系統を集め、平成25年には、優良系統選抜ほ場を設置し、特性の調査を始めました。そして、複数年にわたる継続調査により、太さ・収量・食味に優れた系統を選抜しました。
(2)安定生産に向けた苗生産と凍霜害対策にチャレンジ
選抜した優良系統については、町内で原種の管理(原種圃2か所)と苗生産を行っています。苗は、定植後の生育が安定しているポット苗とし、ネットワーク会員に提供しています。
また、近年春の融雪が早まることで、凍霜害に遭遇するリスクが高まっています。そこで、昨年は、凍霜害対策として、家庭用の小型スプリンクラーを用いて、早朝に地下水を散布する方法を試験し、一定の効果があると確認しました。今年は、さらにタイマー利用による散水の自動化と、被覆資材による方法にチャレンジする予定です


2 地理的表示(GI)保護制度の登録に向けた取り組み
ネットワークでは、産地銘柄のPRや他産地との差別化、西わらびの高い品質の維持・確保を目的に、平成21年には、「西わらび」の名称と「図柄」で、登録商標を取得しました。これらの使用方法について基準を設け、商品シールや販促用のぼりなどに使用されています。
また、平成27年に国の地理的表示保護制度がスタートしたことから、更なるブランド化を推進し、類似品との差別化を図ることを目的として、「西わらび」の地理的表示(GI)登録を目指す取り組みが進められました。令和2年5月にGI登録申請し、その後2度の現地調査や学識経験者による委員会を経て、令和6年1月29日付で、登録されました。
登録の際には、「西わらび」の根茎から取れるわらび粉についても評価を受けました。山里深く冷涼な当地域において、度々発生した飢饉の際には、保存食として人々の命をつなぐ役目を果たしていた貴重なわらび粉。現在、その技を復活させ、町内の菓子店では、この「本わらび粉」を使った「わらび餅」がお土産品として販売されています。
地理的表示(GI)登録後に迎えた昨年春には、ネットワークで祝賀会を開催し、多くの報道機関から取材をうけました。


3 春を味わいに出かけてみませんか
今年は、ネットワークの会員でもある株式会社西和賀産業公社が中心となり、春の観光シーズンを「西わらび」で盛り上げようと、『西和賀わらびロード祭り2025』(令和7年5月11日から令和7年6月8日まで)が開催されます。西わらび販売店に加えて、わらびを使ったメニューを提供する飲食店や宿泊施設、さらには町内産の貴重な本わらび粉を使ったわらび餅を提供する菓子店も参加し、お揃いののぼりを目印に、皆さんの訪問をお待ちしています。
詳しくは、株式会社西和賀産業公社のホームページから最新情報をご確認ください。
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