《中部遠野》産地情報 遠野産トルコギキョウの生産・市場評価向上の取組

ページ番号2007366  更新日 令和5年10月20日

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遠野市でのトルコギキョウ栽培の歴史

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収穫を迎えた大輪のトルコギキョウ

 遠野市のトルコギキョウ栽培は一九八六年(昭和六一年)頃に始まり、三五年以上の歴史があります。現在は十二戸の生産者が、東京都の大田花き市場に出荷しています。

 平成元年には「遠野市花き研究会」が結成されたほか、遠野地方農業協同組合(現・花巻農業協同組合)でも生産部会が組織され、栽培技術や市場評価の向上に取り組んできました。

 平成二八年には、両生産組織が合併し、「花巻農業協同組合遠野野菜生産部会花き専門部」として活動しています。

 今回は、遠野産トルコギキョウの生産向上と市場評価向上に向けた取組を紹介します。

生産向上に向けた取組

(1)土壌病害対策

 トルコギキョウはハウスで栽培されるため、連作すると土壌病害が発生しやすくなります。遠野市内でも、フザリウム菌によるトルコギキョウ立枯病などが各地で発生していました。

 普及センターでは主に薬剤による土壌消毒の実証や、安全で確実に効果を得るための使用方法の講習会などを実施してきました。遠野市の助成事業も後押しとなり、土壌消毒の普及とともに被害程度も軽減されてきています。

(2)オオタバコガ、アザミウマ類対策

 これらの害虫は、花や蕾を食害するため、切り花の商品価値を著しく低下させます。オオタバコガについては平成二八年度に、防虫ネットをハウスの出入り口とサイドに設置する実証を行い、高温になりがちな夏場でも通気性を確保しながら花への被害率も抑える方法が定着しています。

 アザミウマ類は体長が小さく、防虫ネットをすり抜けてしまうため、ハウスの外周に反射資材を敷き、外からの侵入を抑制できないか実証しました。反射資材なしのハウスと比べて侵入数はやや減りましたが、ゼロにはできなかったため、薬剤散布等の防除との組み合わせが必要との結果となりました。

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オオタバコガ対策の防虫ネット

(3)栽培マニュアルの作成と技術の平準化

 長年培われてきた遠野市の栽培方法に、これらの実証結果を加えた栽培マニュアルを令和二年度に発行しました。また、毎年一回以上は専門部会員の相互圃場巡回を行い、作物を見ながら生育や管理の疑問を解決する場となっています。これらの活動により、新規栽培者も高品質のトルコギキョウを出荷できるようにし、平準化に取り組んでいます。

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相互巡回で平準化

(4)ハウス環境のモニタリング

 近年の異常気象などにより、高品質のトルコギキョウの安定生産も難しい環境となりつつあります。令和四年度は夏場の曇天で、かん水や高温対策となる遮光資材のかけ外しのタイミングが難しく、花首の徒長や茎折れが生じました。茎折れは、切り花の花数の減少に直結するため、単価の高い上位等級品生産の障害となります。

 このため、令和五年度の途中から、国のジャパンフラワー強化プロジェクト推進事業を活用し、水分および環境モニタリングの装置をのべ三カ所に設置し、実証農家のかん水状況や気温、日射量などを測定し、見える化に取り組んでいます。データ収集は概ね順調に進み、冬場の実績検討会などで専門部員に結果を報告する予定です。環境モニタリング装置は農家のスマートフォンでデータを確認できるため、外出先でもハウスの状態が分かると好評でした。

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環境モニタリング装置

市場評価向上の取組

東京都・大田花き市場での挨拶会と展示会

 遠野産トルコギキョウの主要な出荷先に、東京都の大田花き市場があります。

 大田花き市場は国内最大規模の市場で、都内や関東地方の生花店が仕入に訪れるほか、全国各地に花を配送する役割も担っています。

 遠野産トルコギキョウは三〇年以上の取引の中で、市場と協力しながら高い評価と単価を獲得してきました。

 毎年欠かせない取組に、セリ場での「挨拶会」と、市場通路での「展示会」があります。

 挨拶会は、新型コロナウイルスの影響で、中止やオンラインでの情報交換会にとどまった年もありましたが、今年度は四年ぶりに対面での開催が実現しました。

 専門部役員等が朝のセリ前に横断幕やのぼりを持って入場し、元気に生産を続けていることや、暑い夏でも日持ちの良い花を出荷していることを約一〇〇名の買参人にPRしました。

 展示会は、買参人や関係者に直接花を見ていただく機会です。開催は七月末から八月初旬で会場の気温も三〇℃を超える暑さでしたが、五日間の展示で軽微なしおれはあったものの、大輪の花を咲かせ続けました。市場関係者からも「他産地と比べて日持ちに優れる」との評価をいただいたほか、前述の挨拶会を聞いて展示会を見に訪れる買参人の姿もありました。

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遠野産トルコギキョウ挨拶会
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展示会の様子

更なる向上に向けて

 現在のトルコギキョウ生産はベテランから若手まで多様な構成となっていますが、新規栽培者が少ないという課題もあります。また、異常気象に加え生産資材も高騰しており、更なる市場評価の向上など経営面も含めた安定生産が求められています。

 前述の環境モニタリングは始まったばかりで、遠野のトルコギキョウでのデータの蓄積や、専門部内での分析結果の活用を検討する予定です。

 今後も普及センターでは専門部や関係機関とともに、技術・品質・市場評価などの向上を支援していきます。

 (文:中部農業改良普及センター遠野普及サブセンター)

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