《ルポ・西和賀》山菜で築こう 私の未来町の未来 〜西和賀町〜

ページ番号2003360  更新日 平成22年11月1日

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ルポルタージュ産地・人を訪ねて 2010年11月号

山菜で築こう私の未来町の未来

(第6回全国山菜文化産業祭キャッチフレーズ)

西和賀町

写真1
西わらび

西和賀町の概要

本県の最西端に位置し秋田県横手市に隣接する西和賀町は、平成17年に旧湯田町と旧沢内村が合併して誕生しました。農業生産額の主なる品目は、水稲、りんどう、乳・肉用牛、いちご等ですが、温泉のまちでもあり、また、わらびを中心とした「山菜の宝庫」としても有名です。

西わらびの特徴

わらびは世界でも国内でもどこにでも生息する多年生のシダ植物で、古くは「万葉集」にも登場するほど日本人には馴染みの深い品目です。町内で穫れるわらびは「食感が柔かく粘りが強い、アクが少なく加工しても鮮青色を呈する」など、他産地では見られない独特の品質を有しています。これは、以前から地理的な違いによるもの(奥羽山系と北上山系)と推測されており、そのため町内産のわらびは「西わらび」と呼ばれています。

最近の取り組み

西和賀町では、水田転作品目としての奨励と産地化のため、希望する生産者には無料で根茎を配布してきました。これにより、本年は24haとなるなど栽培面積は年々増加しています。

これまでのわらびの生産と販売は、加工も含めそれに携わる方々が個別に活動し、各部門が一堂に会して組織的に行動することはありませんでした。しかし、「つくれば売れる時代」は終わり、産地では現状を見直して新たな取り組みを模索する必要性が生じました。そこで、それを一元的にかつ組織的に行おうとする気運が、町内で徐々に高まりました。

西和賀わらび生産販売ネットワークの設立

わらびを中心に、山菜類の今後の産地化に向けての検討課題は多く、例えば、計画的な生産と品質の確保、西わらびのPRと販路拡大、消費地ニーズの把握と生産者へのフィードバック等、多岐にわたります。そのため、普及サブセンターの働きかけで、生産者や加工・販売業者、関係機関・団体で一体的に対処するためのネットワークが、平成20年3月に設立されました(事務局は西和賀町農林課、会員数146名)。

運営委員会の開催

本委員会は、地域毎の生産者の代表と関係機関等により構成され、年間の活動計画や行程表を作成し、ネットワーク活動の全体運営を行っています。

また、本委員会の構成員は、全国山菜文化産業祭の準備機関である「実行委員会」とも兼務しました。

実証ほの設置

ネットワークでは、来年秋に生産者に配布する根茎の養成ほ場を設けており、現在その増殖を図っています(平成20年秋移植)。

また、町内で栽培されているわらび系統の特性調査を行いながら、優良と思われる系統の選抜を行うための優良系統選抜ほ(平成21年秋移植、本年11月で11系統)も設置しています。当地では、そもそも「西わらび」の特性について科学的な調査を行ってきませんでした。このため、今後は、生育と収量、食味評価、成分分析等を行いながら、また、品種登録も視野に入れながら選抜を行う予定です。

写真2
優良系統選抜ほ(沢内・若畑)

西わらびのブランド化

イラスト:西わらびブランドロゴ

産地銘柄のPRや他産地との差別化、西わらびの高い品質の維持・確保を目的に、出願中であった商標が昨年末にめでたく登録商標となりました(デザイン・出願協力は岩手大学、商標権者は西和賀町)。商標は、「西わらび」の文言と「図柄」の二つで、その使用法は運営委員会で一定の基準を設け、現在西和賀産業公社が販売する生・煮わらびの結束テープ、加工品での商品シール、販促用の「のぼり」等で活用されています。

販路の拡大

西わらびの仕入れ・販売は、現在その大部分を公社が担っています。これまでの仕入れは湯田地区からが大半で、沢内地区からはわずかでした。このため、本年はJAの協力を得ながら沢内地区3か所の野菜集荷場からも搬入を行い、その結果、仕入れ量は昨年対比700kg増となりました。

また、郵便局との協働で生わらびの産地直送便を開始し、福岡県や愛知県など全国各地へ600箱を発送しました。一方、6月には埼玉県の丸広百貨店でも試食販売会を開催し、首都圏でのPRも新たに行いました。

第6回全国山菜文化産業祭

6月6〜7日に当地で行われた産業祭には、遠くは九州など町内外から総勢250人以上の参加がありました。大会シンポジウムでは、今後のわらび振興にとって必要な事柄が検討され、西わらびの特徴と他産地との違いの明確化、消費地に向けてのPR等が挙げられました。これは、ネットワーク設立時の今後の検討課題と一致しており、改めて着実な実行の必要性を確認しました。

交流会や昼食会では、食の匠や生活研究グループ自慢の山菜料理が24種類も並び、参加者のみならず、地元民も地域に眠る食文化に感激しました。

写真3
第6 回全国山菜文化産業祭のシンポジウム
写真4
収穫体験(つきざわワラビ園)
写真5
交流会の山菜料理(食の匠)
写真6
異なるアク抜き法による食味試験

わらび粉の機械化生産

西わらびからできるわらび粉は、砂糖のように純白で熱を加えても透明です。

また、西わらびの高位安定生産のためには、移植後4〜5年目での根茎の間引きも必要です。そこで、その間引き根茎を原料にした機械によるわらび粉生産が、この程スタートしました。昨年度は、機械メーカー(東洋工機、奥州市)の協力を得ながら「西和賀元気な産業再生コンソーシアム(国交省事業)」と協働で根茎粉砕機を開発しました。本年は、その粉砕機を使って180kgの粉の生産を計画し販売も行います。今後は、別途工程での更なる機械化や、お菓子づくりの試行(和・洋・中)をプロの指導を受けながら進めます。

写真7
根茎粉砕機
写真8
わらび粉(ブロック状)

加工技術の開発

西わらびのアク抜き及び塩蔵処理は、これまで個々で行われていましたが、生での流通が少ないわらびに関しては、加工技術を統一し品質を揃える必要があります。このため、アク抜き方法は聞き取りやその実証、食味試験等を行って特性を損なわない処理方法を整理しました。さらには、消費者が手軽に利用できるよう、ネットワークとしての統一したアク抜き法と料理のレシピも作成・配布し、会員が販売する際に添付して消費拡大につなげています。

なお、今後は塩蔵方法も同様に整理し、加工マニュアル等を作成していく予定です。

わらび産地としての将来像

農業経営上のわらびは、10aあたりの目標単収が300kg、肥料(たい肥含)3万円、単価600円/kgで、所得は15万円になり、他野菜品目よりも有利といえます。
また、収穫期間は2か月と短く主な作業は除草のみのため、高齢者や女性でも栽培は容易です。
一方、西和賀町では現在ゼンマイやウルイなど他山菜類の試験栽培にも取り組んでおり、これによって将来は当地を山菜の一大産地とする計画を持っています。それには、農家後継者など若者が帰農しての山菜を核とした経営モデルの育成が必要であり、ネットワークではこの点も想定しながら活動していきます。

(中央農業改良普及センター西和賀サブセンター佐藤 喬)

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中部農業改良普及センター西和賀普及サブセンター
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