岩手県立農業試験場研究報告 第23号(昭和57年11月発行)

ページ番号2004855  更新日 令和4年10月6日

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イネもみ枯細菌病菌による苗腐敗症の発生生態と防除法

諏訪正義・小川勝美・渡部 茂

 イネもみ枯細菌病菌による、苗腐敗症の発生生態とその防除法について、特に稚苗育苗法を中心にして検討し、以下の結果を得た。

  1. 育苗法と発病程度との関係について検討した結果、稚苗、中苗、成苗のいずれの育苗法においても発病が認められ、その程度は成苗<中苗<稚苗であった。
  2. 本病の発生は、30℃以上の高温で出芽、緑化処理することによって助長された。
  3. 一方、昼20℃・夜15℃の低い温度条件下で緑化処理することによって、本病の発生を著しく抑制することが出来た。なお、この傾向は接種菌量が少ない程顕著であった。
  4. 本病の発生は、育苗培土のpHが5.6以上の場合に助長された。一方、5.1以下の場合では抑制された。
  5. 本菌は、浸種・催芽液中、並びに育苗箱内で2次感染した。育苗箱内での過潅水は、2次感染を助長した。
  6. 本菌の感染時期は、1.5葉期以前の若い葉齢期に限られ、2葉期以降の感染はほとんど認めなかった。
  7. 本病の防除薬剤として、カスガマイシン剤が卓効を示した。すなわち、カスガマイシン粒剤(KSM 2%)の育苗箱当り20~30グラム培土混和、および同液剤(KSM 2%)50倍液覆土前1,000ml潅注処理の防除効果が高かった。
  8. カスガマイシン液剤50倍液1,000ml潅注処理の効果は、覆土前処理で最も高く、これ以後の処理では劣り、特に初発生以降では著しく劣った。

冷害年(1980、'81年)産水稲種子の特質と使用上の対策

渡部 茂・諏訪正義・小川勝美

 この報告は1980、1981年と連続した異常気象条件下における、水稲登熟状況について述べるとともに、生産された種籾の褐変、割れ籾、玄米着色等について、その調査結果と種子として使用する場合の問題点にふれ、健苗育成に必要な技術対策について試験結果をとりまとめたものである。

  1. 1980年の気象経過の概要は、育苗期は気象変動がはげしかったが、5月下旬~6月末までは高温多照に推移した。7月以降は一転して低温少照多雨となり、これが収穫期まで長期間持続した。このため全県的に不作となり、作況指数は60を示し、近年稀にみる冷害となった。1981年も前年に引続いて不順天候となった。5~6月は連日異常な低温と強風が吹き、本田初期の生育は極めて不良であった。7月は中~下旬が高温多照で、夏型の気候となったが長続きせず、8月から収穫期までは前年とほぼ同様に低温多雨の天候が連続し、加えて8月23日には台風15号の襲来によって、出穂直後の穂が白、褐変し、登熟が著しく阻害された。このような経過から作況指数は76となり、前年に次ぐ冷害となった。
  2. 両年の水稲登熱状況を粗玄米1,000粒重の推移で調査したがそれによると、1980年稚苗ハヤニシキ、フジミノリ、中苗ハヤニシキ、ササミノリでは、出穂20~30日後で平年より約4~8グラム(出穂20日後)から3~7グラム(同30日後)も軽量に推移したが、出穂50日後以降は1~2グラムの軽量にとどまった。このことにより登熟は初期は著しく遅延したが後半はばん回し、平年との差を縮少した。粒厚別段篩調査でも同様で、2.1mm以上の大型粒の比率は、稚苗ハヤニシキ23.6%(平年33.8%)、同フジミノリ15.1%(同24.2%)、同ササミノリ13.7%(同45.0%)であり、各品種とも平年より減少した。
     1981年稚苗ハヤニシキ、フジミノリ、中苗アキユタカ、ササミノリでは、出穂20~30日後で平年より約4~14グラム(出穂20日後)から約7~11グラム(同30日後)も軽量に推移し、前年よりその差が大きい。出穂50日以降も平年差は約3~8グラムあり、依然としてその差が大きく、前年よりも明らかに軽量であり、粒の充実が不良であった。粒厚別段篩調査でも同様であるが、その傾向は前年より著しい。
  3. 粒の肥大に影響した気温の積算量を平年対比で示すと、稚苗ハヤニシキの出穂40日後では、1980年97%、'81年87%であった。他品種でもほぼ同様である。積算温度の不足は'80年よりも'81年が顕著である。
  4. 日照時間の積算では気温積算と逆転し、1980年の実数が大きくおちこみ、出穂40日後の平年対比は稚苗ハヤニシキで72%、同60日後で85%を示し、他品種もほぼ同様の傾向を示した。'81年は、出穂40日後の比較では、品種によりむしろ平年を上廻るものもみられたほどで、以後もその差は大きくない。
  5. 1980年褐変籾、割れ籾の発生実態を調査した。県内各地から送付をうけた50点のすべてに褐変籾の混入が認められ、特にハヤニシキでの混入程度が高かった。滝沢村、遠野市産ハヤニシキでは、褐変の認められないものが僅かに16.4%、2.1%であった。褐変程度は褐変面積率50%以下のものが大半を占めた。
  6. 1980年着色玄米の発生実態について調査した。着色米の発生時期はフジミノリ、ハツニシキ、アキヒカリとも出穂15日後には発生が認められる。以後徐々に増加するが、品種により差があり、とくにハツニシキで出穂40日後に急増し、最多発生となった。着色米として紅変米、背黒米、茶米の発生を確認した。紅変米は出穂20日後から、背黒米は同35日~40日後から認められた。3品種とも粒厚2.1mm以上の充実した玄米では着色米の発生が少く、これ以下で多かった。
  7. 1980年の着色米の種類別発生率を各普及所から送付されたサンプルで調査した。紅変米は本県では初記録である。紅変米、背黒米、茶米の発生は、程度差はあるものの各地域で認められ、中には合計で30%以上の混入率を示したものもあった。着色米は籾の褐変程度が高いほど多く、とくに褐変面積が51%以上のものでは茶米の発生が多い。精籾と割れ籾では褐変程度に関係なく割れ籾に多発した。また、褐変程度「多」の精籾では37.5%と高率に発生した。
  8. 1981年では褐変程度の高いほ場では個々の籾褐変が多く、玄米着色粒も多かった。前年同様に県内各地から送付されたサンプルについて調査したところ、紅変米、背黒米、茶米が識別され、それ以外のものは認められなかった。地域では雫石町、西根町、遠野市産玄米の着色粒率が高く、前年同様であった。
  9. 褐変籾から分離される菌類は、Epicoccum. Fusarium. Rhizopus. Cladosporium. Alternaria. Trichoderma. Pyricularia各属菌が検出された(1980年)。着色玄米からはEpicoccum sp.が高率に分離された。紅変米から94.0%、背黒米61.3%、茶米54.9%の分離率であった(1980年)。'81年もこれとほぼ同様であった。このEpicoccum sp.を玄米と籾に接種したところ、玄米では容易に着色が認められた。また、玄米、籾に接種すると根の伸長抑制が顕著であった。
  10. 1980年産の褐変籾、割れ籾を種子無消毒のまま播種した育苗予備試験では、播種した60箱のすべてに苗立枯れが発生し、そのほとんどが腐敗枯死した。これには、Rhizopus. Fusarium. Trichoderma.属菌が旺盛に繁殖していた。このことから、'80年冷害年産の種子を用いての育苗に当っては、その取扱いについて厳重な注意が必要であると思われた。
  11. このような種子を用いた場合、軽度の発病苗では地際部の褐変の顕著な場合と比較的軽症な場合とが多くみられた。発病調査に当りこれらを同一視してよいか否かを知るため、重~軽苗に分けて剪根処理し、以後の消長を観察した。それによると褐変重、中症苗ではそのまま腐敗枯死するものが7日後で84.0%、60%発生し、新根発生株が少なく、その根も短かかった。軽症苗は枯死苗率低く、新根発生株数も高い。発病調査に際しては地際部褐変中以上の苗は健全苗、軽症苗と区別するのが適当と思われる。
  12. 1980年産の割れ籾混入種子に対する現行種子消毒効果の検討を行なった。割れ籾は脱ぷ粒率で表現した。その結果は、
    1)腐敗枯死、地際部褐変等障害苗の発生は、脱ぷ率の高低により差がみられ、脱ぷ率が高いほど多発の傾向を示した。Rhizopus sp.の発生も同様であった。
    2)種子消毒法で有効なのは、ベンレートT水和剤20の0.5%湿粉衣法(風乾処理)であり、他の方法はこれより劣った。
    3)播種層に発生する主な菌種は、Rhizopus sp.の発生が顕著であった。
    4)各消毒区とも生育不良苗の発生、草丈の伸長抑制が認められたが、特にベンレートT水和剤20の0.5%湿粉衣処理区では、脱ぷ粒率の高い種子でこの傾向がみられた。
  13. 脱ぷ率1.6%の割れ籾混入種子を用い、ベンレートT水和剤20の粉衣量を種子重の0.3、0.4、0.5%として、効果と生育抑制の軽減試験を行なった。障害苗の発生率は人工粒状培土で高く、火山灰土壌、沖積土壌で低かった。菌の発生は人工粒状培土でRhizopus sp. Trichoderma sp.が、火山灰土壌ではRhizopus sp.の発生が多かった。粉衣量では0.5~0.3%でも大差はないが、人工粒状培土では粉衣量の減少で健全苗率が低下する。結局0.4%粉衣で健全苗率も高く、生育抑制も少ないので、割れ籾混在の場合は0.4%粉衣が適当と思われる。
  14. 着色玄米に対する消毒効果をベンレートT水和剤20、ベンレート水和剤の0.5%湿粉衣、ホーマイコート2%湿粉衣処理して素寒天培地に移植したが、Epicoccum属菌の発生は認められなかった。
  15. 1981年産褐変種子に対する種子消毒法及び播種時の処理法を検討した。前年のような割れ籾の発生はほとんどなく、籾の褐変程度の強いものと、着色玄米の多いのが特徴的であった。このような種籾に対し種子消毒効果の検討を行なった。床土にヒドロキシイソキサゾール粉剤箱当り6グラムを施用し、播種時にTPN1,000倍液を箱当り0.5リットル潅注したあと消毒種子を播種して常法どおり管理した。消毒効果はベンレートT水和剤20の0.5%湿粉衣が高い防除効果を示した。同剤の200倍液24時間浸漬法、ホーマイ水和剤0.5%湿粉衣法はこれより劣るようであった。無処理区の播種層にはEpicoccum sp. Fusarium sp. Rhizopus sp.の発生が顕著であるのに対し、消毒区ではRhizopus sp.の発生を僅かに認めた以外は発生しなかった。
  16. 出芽後発生する苗立枯れの防止対策は、種子消毒、播種時、出芽後のTPN潅注法等によって行なわれる。これに準じて1981年産種子を用いて、ベンレートT水和剤20の種子重の0.5%湿粉衣(1日風乾)を行なって、TPN500倍液を箱当り1リットル潅注したあと播種した。1葉期にダコニール水和剤500倍液を箱当り0.5リットル潅注、同ベンレートT水和剤20、1,000倍液を箱当り0.5リットル潅注した。障害苗の発生率は人工粒状培土で多く、沖積土で少なかった。多発した人工粒状培土では、ベンレートT水和剤20の1,000倍液潅注の効果が高く、火山灰土壌、沖積土では両剤の潅注法が有効であった。
  17. 中苗様式における薬剤潅注法を検討した。1980年産種子(脱ぷ率0.1%)をベンレートT水和剤20の0.5%湿粉衣し、人工粒状培土に播種した。有孔ポリフィルムを平張りし、出芽後にこれを除去して供試薬剤を潅注した。その結果、常法どおり種子消毒し、播種時にダコニール水和剤500倍液を1リットル潅注して、さらに出芽時に同剤500倍液0.5リットル潅注した区と、ベンレートT水和剤20の1,000倍液0.5リットル潅注区は、障害苗や菌の発生がなく有効であった。播種時ダコニール水和剤500倍液1リットル潅注のみで、出芽時に潅注しない区はRhizopus sp.の発生を抑えきれなかった。

冷害年(1980、'81年)における水稲刈取時期と品質 -主に着色粒について-

佐々木忠勝・畠山 均・赤坂安盛

 障害型冷害年(1980)、遅延型冷害および台風の併発被害年(1981)の刈取時期別の品質変動と、これに伴う着色粒の動向について考察し、事例的ではあるが着色粒の発生の指標となる不稔歩合別(1980)、および褐変籾程度別(1981)に刈取適期を推定した。

  1. 障害型冷害年(1980)の場合
    1)障害不稔の多発により、割籾、褐変籾が発生し、不稔歩合が高い程、割籾、褐変籾の発生が多くなり、割籾、褐変籾が多い程、刈取時期が遅くなる程着色粒の発生が多い。
    2)着色粒は紅変粒、背黒粒、斑紋粒、茶米等があるが、着色程度が強いのは紅変粒である。着色粒からの分離菌はEpicoccum属菌が多くとくに紅変粒はほとんどがEpicoccum属菌である。Epicoccum属菌は、岩手県を含む本州での着色粒被害は確認されておらず、はじめての確認である。
    3)1980年の種々の試験結果から、障害型冷害年の着色粒発生の場合の刈取適期を着色粒混入率0.7%以内、整粒歩合60%以上を基準として不稔歩合別に推定すると、(1)不稔歩合0~30%の場合、刈取適期は平年並(登熟積算温度1,000~1,100℃)とする。(2)不稔歩合30~40%の場合、刈取適期は平年よりやや早め(積算温度950~1,000℃)とする。(3)不稔歩合40%以上の場合、刈取適期は積算温度950℃前後とし、整粒歩合が3等玄米規格以上であれば着色粒の発生にあわせて早めに刈取る。
    4)着色粒は積算温度650℃から出始め、750℃時点では明らかに発生が確認されるので、小型籾摺機で玄米を調査することにより発生予測が可能である。
  2. 遅延型冷害および台風併発被害年(1981)の場合
    1)遅延型冷害が主な場合は、出穂期のおくれと登熟期間の不順天候により登熟遅延となる。出穂後40日間の積算気温が720℃を切るような場合は、強霜直前まで刈取りを延ばすことにより未熟粒歩合の減少が期待できる。ただし、被害粒、着色粒の動向に注意することと、強霜は品質の低下を招くので、強霜前の刈取とする。
    2)台風併発被害の場合、出穂期前後の台風のため褐変籾が多発し、褐変籾が多い程、着色粒が多い。着色粒は色の濃い茶米が多く、背黒米も多い。着色粒からの分離菌は1980年同様、Epicoccum属菌が大部分である。また、着色粒は登熟期間の不順天候により発生が助長されており、積算温度が多くなると褐変のない籾にも着色粒が出ている。
    3)刈取時期別の品質調査と着色粒の発生動向から刈取適期を着色粒混入率0.7%以内、整粒歩合50%以上を基準として褐変籾割合別(籾両面の面積の3分の1以上の褐変籾の混入割合)に推定すると、(1)褐変籾割合80%の場合、着色粒混入割合、整粒歩合のいずれか、あるいは両者が基準に満たず規格外米となる。(2)褐変籾割合45%の場合、積算温度900℃が適期となるが、基準の限界であり、3等米か規格外米の境となる。(3)褐変籾割合25%の場合、積算温度1,000~1,050℃が適期となる。ただし、1,100℃以上では着色粒の増加により規格外米になる可能性がある。(4)褐変籾割合15%の場合、着色粒に刈取時期が左右されず、積算温度1,100℃前後で、被害粒の多くならないうちに刈取る。

水田散布農薬の残留実態ならびに魚毒性

小澤龍生

A 水面施用剤の殺菌剤(IBP)と除草剤(モリネート)の残留実態を農試水田と江刺市および水沢市の現地水田で調査し、次の結果を得た。

  1. IBPの田面水濃度の最高値は施用1日後で、農試水田の止水区が6.6ppm、現地水田(江刺市)では9.54ppmであった。
  2. これらの水田土壌中の濃度は田面水より高く、農試の止水区が表層で30ppm、現地では23.7ppmとなり、田面水の2.5~4.5倍の高濃度であった。
  3. モリネートの田面水濃度の最高値は施用1日後で2.056ppbであった。
  4. 養魚池取水口地点における農薬の水中濃度は、6月中~下旬に増加し、最高値がモリネートで5ppb、ベンチオカーブで43.8ppb、PMPで6ppbであった。

B IBPと殺虫剤(MEP、PAP、PMP、カルタップ)のドジョウに対する毒性を、又、モリネートとベンチオカーブのコイに対する毒性をガラス水槽内で調査し、次の結果を得た。

  1. IBPはドジョウに対し、半数致死濃度(15ppm)の2分の1~3分の1の低濃度で、へい死、横転の中毒症状を示すとともに背曲り個体も生じた。しかし、土壌の存在下で中毒症状の発現は抑制され、土壌吸着による毒性の軽減が示唆された。
  2. PAP、MEP、PMP、カルタップの各殺虫剤の毒性比較では、PAPがとくに中毒症状の個体率が高く、背曲りを生じた。これらの殺虫剤にそれぞれIBPを添加すると毒性が増大した。
  3. モリネートおよびベンチオカーブとも低濃度になるほど、へい死魚は後期に出現した。モリネート区では水槽内の初期濃度が0.023ppmの低濃度でもへい死魚が発生した。
  4. 貧血症状を示す個体はモリネート区で発生したが、ベンチオカープ区では認められなかった。

ベンチオカーブ剤の水田および河川における消長

築地邦晃・小澤龍生・飯村茂之

 除草剤による魚類被害防止のための資料とするため1979~'80年にべンチオカーブの水系における消長を実態調査した。調査は花巻市湯本地区の潅漑水取水口から北上川に至る約6キロメートルの水系およびクミリードSM粒剤を散布した試験水田について行ない次の結果を得た。

  1. 水田においては、散布1日後に最も濃度が高くなり(約2ppm)、その後4~6日の半減期で減少した。
  2. 河川においては、ベンチオカープ剤使用盛期になると水中濃度も増加し最高約0.1ppmとなり、その後低下して1ケ月後では0.001ppm程度の残留となった。
  3. 分析値および仮定に基づき薬剤成分の水系への流出率を推算したところ約3%であった。
  4. ベンチオカーブの魚毒性と河川水中残留実態からみて、通常の使用法では水棲生物に対する同剤単独の影響はないと判断された。

畑土壌改良基準策定のための基礎研究 第3報 有効燐酸目標設定方式による土壌改良法

千葉 明・白旗秀雄・石川格司・新毛晴夫・千葉行雄・宮下慶一郎

 畑土壌改良基準策定のための研究の一環として、岩手県内に広く分布する火山灰土壌を主休に、燐酸欠乏土壌の合理的改良法を確立するための検討を行なった。その結果を要約すれば次のようである。

  1. 岩手県内には性格の異なる火山灰が各種分布するが、その代表的な火山灰は岩手山系火山灰土壌、焼石岳系火山灰土壌、十和田、八甲田系火山灰土壌の3種である。これら火山灰は、土壌酸性、塩基含量、微量要素含量などでそれぞれ異った性格を有しているが、燐酸吸収係数が高く有効燐酸が少ないということは共通した性質で、これが作物の生産力を規制しているところが大きい。
  2. 土壌中に有効燐酸を殆ど含まない場合の土壌改良法として、山本方式を現場対応に簡便なように若干の変更を加え、作物も経営的に有利な野菜類を主体に供試し検討を行なった結果、作土10cm相当の土量について、燐酸吸収係数の7.7~10%のP2O5を、過石(重過石)と熔燐の比率を1対4にして併用することにより、生育は著しく良化した。
  3. 燐酸質資材による土壌改良の効果は長く、農試の圃場では(岩手火山灰B統)9年10作まで認められ、その後も引続き試験は継続され、持続効果の長いことが確認されている。
  4. 燐酸質資材による土壌改良効果の大小を作目により比較すると、最も大きいのはレタス、短根にんじん、白菜、小麦であり、やや大きいのはきゅうり、ばれいしょ、ソルガム、トマトであり、小さいのは陸稲、大豆、小豆、青刈とうもろこし、菜豆、だいこんであった。
  5. 土壌中に有効燐酸を含む場合の改良法設定の検討の結果、燐酸吸収係数の1%のP2O5(熔燐4 対 過石1等、熔燐主体)の施用で、土壌中の有効燐酸は約1.6ミリグラム%富化されることがわかり、これより改良基準を作成した。
  6. 有効燐酸目標を設定して土壌改良を行なって圃場試験を行なった結果、ほぼ目標通りの成果が得られた。
  7. 燐酸供給資材としての熔燐、過石、重過石のほかに、土壌反応を変動させる要因となるこれらの資材について検討した結果、熔燐と過石又は重過石の混合物は土壌pHに与える影響は概して小さかった。
  8. 珪カルも塩基と珪酸を補給することにより土壌の燐酸吸収係数の低下にあずかるが、その程度は土壌により著しく異なった。

[資料]奨励品種編入に関する資料

水稲(うるち)「コガネヒカリ(東北125号)」(昭和57年1月)

(摘要なし)

水稲(もち)「およねもち(渡育糯213号)」(昭和57年1月)

(摘要なし)

ばれいしょ「トヨシロ」(昭和57年1月)

(摘要なし)

ばれいしょ「ワセシロ」(昭和55年12月)

(摘要なし)

大豆「フクナガハ(中育10号)」(昭和56年1月)

(摘要なし)

小豆「紅南部(岩系2号)」(昭和54年1月)

(摘要なし)

落花生「ナカテユタカ」(昭和56年1月)

(摘要なし)

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