岩手県立農業試験場研究報告 第18号(昭和49年12月発行)

ページ番号2004860  更新日 令和4年10月6日

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水稲稚苗機械移植に関する研究(1)-育苗の簡易化に関する試験-

佐々木由勝・北田金美・佐々木 功

 水稲稚苗機械移植のための育苗の簡易化に関する試験を、昭和45年から昭和48年までおこない、以下に記す結果を得た。

  1. 労働力の軽減のための農閑期播種による播種貯蔵日数の限界は、土壌水分25%前後であれば、催芽乾燥籾、浸漬籾で約30日、乾燥籾で40日以上であった。しかし、生育面では浸漬籾が発根力で優り安定性も高い傾向にあったが、催芽乾燥籾は出芽むらが多く、また、乾燥籾は出芽が遅い傾向にあり、ともに良苗率の低下が認められた。
  2. 散播方式による育苗法においては、出芽にあたって根上がり現象が発生するが、この現象は箱当たり200グラム以上の密播で多発する傾向がある。根上がり防止策としては苗箱を積重ねることで回避することができ、以後の生長に対して悪影響をおよぼすことはなかった。
  3. 寒冷地における稚苗育苗の問題点の一つとして、出芽以降の低温の回避があげられるため、二重トンネルおよび市販の各種資材の効果について検討した。二重トンネルの効果は実用性が認められるが、さらにその上を各種資材で被覆してもそれほど効果は増加されない。また、ビニールハウス中で家庭用石油ストーブを燃焼させるだけでも保温効果は大きく、二重トンネルとほぼ同等の効果が得られた。なお、これらの保温方法はいずれも外気温が低いほど有効であった。
  4. 二重トンネル中での緑化は、ある程度の遮光条件さえあれば可能であり、さらに電熱床を利用すれば出芽から緑化までの工程を同一床でおこなうことができる。とくに、緑化以前は育苗箱を5段程度積重ねて根上がりを防止し、緑化時以後練瓦積みをすると遮光資材も必要とせず能率的であるため、実用性は高いと考えられる。
  5. 葉苗令2.5葉以上の苗の確保には箱当たり150グラム以下の薄播きすることが必要であり、厚播きで育苗日数を長くすると苗素質はむしろ低下する傾向にある。

小豆新品種「岩手大納言」について

古沢典夫・米田秋作・佐藤忠士・大野康雄・鎌田信昭・神山芳典・高橋康利

  • 来歴
     昭和40年に県内の在来種21集団を収集した際に、久慈農業改良普及所から送付を受けたものを母集団とし、早中晩生に分類するなど43年まで系統選抜を加え固定を図ったものである。旧系統名は「久慈在来」であり、44年からは選抜した早生系統を供用している。
  • 特性の概要
     本品種は粒が大きく豊満であり、皮色は鮮紅色で冴えていて、大納言銘柄にかなう良質種である。また、多収であること、成熟期は中の晩生に属し高冷地を除く県下一円に適応性を持つこと、などが特徴である。 すなわち、粒は楕円形、百粒重は17グラム以上で「大館2号」に比べ55%も重く、粒色も「大館2号」に対し優っている。収量は「大館2号」に対し、本場では10%増の22kg/アール程度であり、県北分場では13%増の29.5kgの多収となっている。成熟期は9月22日頃で、「大館2号」よりは本場で4日ほど遅くなっている。
  • 適応地帯・用途
     高冷地を除く県下全域(編入当初は高冷地を除く県中部以北全域としたが、その後の成績により地域拡大)。販売用ならびに自給用。大納言規格とするために5.5mm位の篩を通し、粒色を揃えるなどの調整を吟味すること。葉は円葉(まるば)型、茎長は「大館2号」よりは多少長目の中位でやや蔓化しにくいが、茎はやや細目で登熟後期になびくことがある。分枝数は「大館2号」程度か多少多目、節数は少な目、着莢数は主茎上位に疎で多くないが粒大で収量を確保することになる。熟莢色は明るい淡褐で、熟色は美しい。

岩手県の農耕地に生息する野ネズミの種類と食性

阿部 禎・大矢剛毅

 耕地の野ネズミの発生予察研究の基礎として、1966年から1973年まで、岩手県下31個所の耕地で捕獲調査をおこなった。本稿では、そのうちの分布と食性についてまとめ、つぎの結果を得た。

  1. ハタネズミ、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ、アカネズミ、ヒメネズミの2亜科6種の捕獲をみた。
  2. 総捕獲数1,041頭のうち、ハタネズミが最も多く(909頭)、すべての耕地で優占し、分布の偏りも認められない。
  3. ついでアカネズミの捕獲が多かった(75頭)が、水田地帯ではほとんど認められず、環境選択性がハタネズミより強いと推定された。
  4. ドブネズミ、ハツカネズミ、クマネズミの3種は人家周辺で捕獲される例が多く、耕地における定住の可能性は少ない。
  5. ヒメネズミは山林に隣接した耕地だけで捕獲され、偶発と考えられる。
  6. 胃内容物の剖検から、耕地鼠害を誘起する種類として、ハタネズミ、アカネズミのほか、人家周辺においてはドブネズミの存在も無視できず、その動向を注目する必要がある。

りんご作集団化に関する研究 特に樹園地評価と収益配分について

小原昇夫

(摘要なし)

航空機利用による草地造成ならびに管理技術(施肥)に関する研究

大森秀雄・小原繁男

  1. 本報告は、航空機が草地造成資材ならびに施肥の散布に利用できるかどうかについて、技術的・経済的な資料を得る目的で、岩手県が国の委託を受けて実施した調査を中心に取りまとめたものである。
  2. 試験の実施は、岩手県肉牛生産公社玉山牧場地内約40ヘクタールの原野において、昭和45年は蹄耕法で草地造成を、翌年は施肥散布を行った。使用した航空機は、ペルー204B(中型)で、1回の積載量は800kgとし、吊り下げ方式をとった。なお、ヘリポートと作業現地の距離は、平均約1kmである。
  3. 航空機による資材の散布精度は、散布飛行幅25メートルの条件では、炭カル、化成肥料、溶りん等比較的散布量の多い資材は、均一性が確保されたが、種子ではばらつきが大きく、変異係数87%以上であった。また、牧草の着床密度の変異係数も73%で、慣行手まき区の49%よりも変動が大きく、裸地率の出現頻度も高かった。このように、種子の散布精度が劣ったのは、散布幅が広すぎたためであって、均一性の上からは、20メートルが限界と考えられ、さらに、重ね散布方式等により精度の向上が期待できる。
  4. 草地造成において、40ヘクタールの面積に71.6トンの資材を散布するに要した飛行時間は、8時間11分、また、1回の往復時間は、4分52秒であった。この時間には、資材が雨で吸湿し、ホッパーからの吐出が悪く、しばしば故障した時間も含まれており、作業が順調であった場合だけについてみると、往復時間4分45秒、トン当たり6分19秒、1時間当たカ5.4ヘクタール(9.5トン)の能率となる。
  5. 施肥散布(化成肥料)における能率は高く、往復時間3分32秒、トン当たり4分25秒、1時間当たり34ヘクタール(13.6トン)であった。
  6. 飛行時間の内訳は、ホッパー交換8~10%、往復45~46%、ターン15~19%、実散布26~31%となっており、往復時間やターンの時間の占める割合が高かった。作業の馴れや散布技術の改善による能率化を前提に、造成作業能率を試算すれば、1時間当たり7.1ヘクタール(12.8トン)で、1日約40ヘクタールの面積が可能となる。
  7. 資材の積込み時間は、平均2分23砂であってほとんどが往復時間内に終了し、問題はなかった。
  8. 播種牧草の生育は、野草の抑圧は十分でなかったものの、翌年度の収量で比較すれば、対照の手播きより10~15%減程度、また、牧草化率も最終的には95.7%に達し、かなり良好であった。なお、牧養力は、体重500kg換算で263Caw-day/haであって、利用1年目としては満足すべきものであった。
  9. 航空機利用による草地造成の諸経費は、ヘクタール当たり43,260円で、慣行の人力散布の約1.8倍に達した。この経費の約95%が、散布料・空輸料等いわゆる契約料金であって、利用面積が小さいため割高となった。造成面積が100ヘクタール(3日作業)ともなれば、ヘクタール約3万円となって、慣行作業とあまり差がない。
  10. 航空機で施肥散布した場合の経費も、利用面積が小さく、しかも、遠距離空輸のため、ヘクタール当たり2万円で、人力作業の3.8倍となった。しかし、この場合も、利用面積の拡大によっては、人力作業に近い経費まで下げられ得る。
  11. 航空機利用の作業経費は、現状では、慣行作業にくらべ割高であった。しかし、航空機の作業能率は、人力等の慣行作業とは比較にならない程大きく、しかも、地形に影響されることが少ないので、大規模な山地の草地管理への利用に適した新しい技術と言える。

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