決して怪しい者ではありませぬ ~ 補植用取置苗の「いもち病」巡回調査
田植えが終わった田んぼには、補植に使って余った苗、いわゆる「補植用取置苗」が田んぼの片隅に置かれたままになっているところがあります。この取置苗、実は風通しが悪くて湿気ムンムンの状態でカビが繁殖しやすいため、カビの一種で水稲の重要病害である「いもち病」の感染・増殖に好適な環境となっているのです。
この取置苗で増殖したいもち病(葉いもち)菌は、周辺の田んぼに胞子を拡散し、その年の気象条件等によっては、イネに感染して大きな被害をもたらすことがあります。すなわち、取置苗はいもち病の重要な発生源(伝染源)となるわけです。
そのため病害虫防除所では、補植で余った苗は放置せず、田んぼから撤去するよう呼びかけると共に、毎年6月上旬に県内全域の水田約3,000~4,000筆を巡回し、放置されたままの補植用取置苗にいもち病が発生していないか調査を実施しています。取置苗を見付けると、田んぼの中にしゃがみ込んで、数千枚の小さな葉を丁寧にかき分けながら、1つの病斑も見逃すまいと鋭い目で観察する職員のその様子、遠目からは一見すると「怪しい集団」に映るかもしれませんね。
でも、こうした努力の結果から、その年のいもち病の伝染源量を把握し、水稲関係の指導機関やJA等に「防除速報」として情報提供し、各地域のいもち病防除指導に活用してもらっているのです。いもち病の「プロハンター」、今度はあなたの街にやって来るかもしれませんよ~?
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水田に放置された取置苗を調査する防除所職員(1)
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水田に放置された取置苗を調査する防除所職員(2)
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取置苗に発生したいもち病(1)
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取置苗に発生したいもち病(2)
(岩手県病害虫防除所 技師 田村 恵里佳)
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