高校野球は「春のセンバツ」、水稲品種の「センバツ」は……?
今回は、水稲の品種開発過程の中から「室内選抜作業」をご紹介します。
品種開発の過程は、簡単に言えば「たくさんの個体・系統の中から良いものを選び出す」作業の繰り返しです。1つの品種がデビューするまでには、何年も掛けていろいろな特性(収量、食味、品質、耐冷性、耐病性、耐倒伏性、熟期、草姿、穂数、籾数、etc…)を調査し、何度も選抜を繰り返すことで優れた系統だけが選ばれていきます。
個体選抜作業は、大きく2つあります。1つ目が、夏~秋の間に圃場の中で実際に植えてある稲を見ながら行う「圃場選抜」、そして2つ目が、今回ご紹介する「室内選抜」です。室内選抜では、圃場選抜した稲を1個体ずつ机に並べ、親系統や基準品種と比べながら、玄米品質などを中心に評価し選抜していきます。一日中立ったまま、多い日では数百個体を見る時もあり、夕方には腰痛に襲われることもしばしばです……。
個体選抜は、多い時には1集団で約5,000個体が植えられ、その後、圃場選抜で100~150個体程度、さらに室内選抜で20~30個体程度にまで選抜されます。つまり、最初に植えた5,000個体のうち、約0.5%の個体のみが翌年度の選抜に供試されます。
このような厳しい選抜を勝ち残った稲だけが品種となり、「銀河のしずく」や「金色の風」のようにデビューを迎えることが出来るのです。
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選抜を待つ稲たち
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品質が見やすいように黒いお皿(カルトン)に玄米をのせています
(技術部作物研究室 専門研究員 藤岡 智明)
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