母は強し、雪のコートもなんのその ~ 冬期屋外飼養試験牛の出産始まる
外山畜産研究室は、標高680メートルの盛岡市玉山区藪川にあります。この「藪川」という地名の全国的知名度はなかなかのものです。何で有名かと言えば、皆さんもご存じのとおり「最低気温の低さ」です。本州では、長野県上田市菅平(標高1253メートル)に次いで寒い場所で、1988年2月17日に「-27.6℃」という最低気温が記録されました。当研究室では、こうした厳しい気候を活かした試験を実施しており、今回ご紹介する「黒毛和種妊娠牛の冬期屋外飼養試験」もその一つです。
なぜ大切な子牛を身ごもった母牛を過酷な環境にさらすのか?それには当然理由があります。本県は、肉用繁殖牛の飼養頭数では全国第5位にありますが、一戸当たりの飼養規模では全国最下位です。これまで、寒い地域では冬期間の妊娠牛の屋外飼養は難しいと考えられてきました。寒さによるストレスで流産等の恐れがあるためです。そのため、繁殖経営の規模拡大には、多大な費用のかかる牛舎の新増設が必要とされ、規模拡大を妨げる一因となっていました。
そこで、妊娠牛を安定期(妊娠3か月以降出産前1か月まで)に冬期間屋外で飼養し、その影響について調べることにしました。寒さの厳しい藪川で冬期屋外飼養が可能という成績が得られれば、規模拡大を阻むハードルを一つ乗り越えることができます。
平成24年11月から、牛舎に隣接したパドックで妊娠牛10頭の屋外飼養を始め、出産予定日の1か月前に牛舎に戻し、この4月から出産が始まっています。残念なことに最初の出産では、生まれたばかりの子牛が他の牛に踏まれてしまう事故がありましたが、その後生まれた4頭は順調に育っています。試験期間を通じて定期的に母牛の健康状態を調べ、冬期屋外飼養技術の確立に結び付けたいと思います。
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雪のコートをまとう試験牛
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乾草を食む試験牛
(畜産研究所外山畜産研究室 専門研究員 佐々木 正俊)
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