春播きによる草地更新にチャレンジ ~ 除染対策の加速と選択肢拡大のために
酪農や肉用牛の畜産農家の皆さんにとっての春一番の作業は、雪解け後の草地への肥料散布やトウモロコシ畑への堆肥散布で、今がその最中ではないでしょうか。草地における草の収量は、造成後2~3年でピークに達しその後は徐々に減少します。そのため、造成後7~8年で更新することが望ましいとされています。
寒冷地である県内の草地更新は、8月下旬から10月上旬までに行われるのが一般的です(秋期更新)。
その理由は、
- 気温が下がり、雑草の生育が劣り始める秋に牧草を定着させておくことで春の雑草混入を抑えられること
- 翌年のスプリングフラッシュ(5月上旬に牧草が一斉に勢いよく育つこと)による高収量が期待できること
などが挙げられます。
しかし、この秋期更新は播種に適する期間が短く限られているという課題があります。播種時期が早すぎれば暑熱や乾燥で、逆に遅れれば低温や積雪で、せっかく芽生えた牧草が枯死してしまう恐れがあります。現在、県内各地で放射性物質の除染対策として草地更新に取り組んでいますが、更新作業に適した時期に人手や作業機械が十分に確保できず、「耕起はしたけれど、播種には遅すぎた」という場合が想定されます。
そこで、畜産研究所では、前年の秋に更新のための耕起を終えた草地で、春播きによる草地更新体系の確立に取り組んでいます。春播きでは生育の旺盛な一年生雑草の制御が課題となります。この課題を解決するため、異なるタイプの除草剤の組み合わせで複数の試験を組み立て、雪解けから3週間が過ぎた平成25年4月9日にいくつかの試験区で播種を行いました。この試験によって早期に技術確立を行い、除染対策の加速や草地更新時期の選択肢拡大に貢献したいと考えています。
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岩手山をバックに牧草播種作業
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鎮圧作業風景
(畜産研究所家畜飼養・飼料研究室 専門研究員 山形 広輔)
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