サシの最上級率アップの秘訣はコレ! ~ 人気No.1県有種雄牛「菊福秀」の利用法
県有種雄牛「菊福秀」は、平成21年度以降、本県における人工授精用凍結精液利用本数ナンバーワンの座を維持し続けています。本牛の特徴は、体格はやや小ぶりながら、サシ(脂肪交雑)・ロースの大きさ・歩留注)などに優れ、その性質を子孫に伝える力、すなわち遺伝力の強さにあります。
岩手県内で肥育された黒毛和種の枝肉約12万8千頭(平成16年7月~平成25年6月にと畜)について、「菊福秀」産子とその他種雄牛産子とに分けて、サシの最上級とされるBMSNo.が8以上となる割合(最上級割合)を調べたところ、両者では格段の差があることがわかりました。具体的には、その他種雄牛産子で最上級割合が雌27%・去勢30%であるのに対して、「菊福秀」産子では雌41%・去勢36%と、遺伝力の強さを物語っています(図1)。
さらに、同じ「菊福秀」産子でも、母方の種雄牛(父牛)が違うことによって、最上級割合が異なることがわかりました。雌、去勢のいずれでも最上級割合が50%を超える母方種雄牛は、「勝忠平」、「安茂勝」、「百合茂」及び「菊安舞鶴」の4頭で、「菊福秀」との相性の良さを示す結果となっています(図2)。
また、母方種雄牛の前3者はいずれも体格に優れており、「菊福秀」の歩留の良さが加わることで可食肉量の増加が期待され、牛肉を取り扱う事業者にとって、利益の上がる牛として大きな魅力です。
こうした交配パターンごとの枝肉成績が、子牛市場での取引価格に影響するのは当然です。是非、「菊福秀」の能力を最大限に引き出し、さらに、相乗効果の発揮も期待できる交配で、繁殖経営の収益性向上に役立てていただきたいと思います。
注)歩留:骨などを除いた後で、可食肉が取れる割合。この割合が高ければ、小ぶりであっても、可食肉量は多くなる。


(畜産研究所種山畜産研究室 主査専門研究員 今野 一之)
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