たい肥施用は“耕起前”or“耕起後”? ~ 飼料用とうもろこしでの施用適期を検証

飼料用とうもろこし栽培でのたい肥施用は、ほ場を耕起する前に行うのが常識となっています。けれども、「どうして耕起前に施用するのか?」、「耕起後に施用したらどうなるのか?」と、改めて問われてみると、すぐには答えが出てきませんでした。なぜいきなりこのような話をするかというと、「ある生産者が、耕起後にたい肥を施用して良好な収量を確保している」という情報が寄せられたからです。
そこで、飼料用とうもろこし栽培におけるたい肥施用を、耕起前と耕起後の2つに分けて行い、どちらが収量で優れるのか、そして何が収量に関係しているのかを調べてみました。ほ場の条件やたい肥の施用量を統一して試験を実施したところ、耕起前にたい肥を施用した方が、耕起後施用よりも収量が多いという結果が得られました(図1)。
施用したたい肥は、とうもろこしが成長するための養分として利用されます。その養分が、耕起前施用と耕起後施用とで、土壌中にどのように分布するのか、深さを地表から10センチメートルまで、10センチ以上20センチメートルまで、20センチ以上30センチメートルまでと3つに分けて、時間を追って調べてみると、窒素分(硝酸態窒素)の量の違いが明らかになりました。特に7月の時点では、3つの階層すべてにおいて耕起前施用より耕起後施用の方が少なくなっていることがわかりました(図2)。
7月は、とうもろこしが穂を作り始める重要な時期にあたります。この時期に十分な窒素分が供給されないために収量に差が生じるという科学的な裏付けを、今回の試験結果から得ることができました。

(左:耕起前施用、右:耕起後施用)
(畜産研究所家畜飼養・飼料研究室 専門研究員 山形 広輔)
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