尿石症予防の第一歩は栄養バランスから ~ 肥育牛の尿石症発症とエサとの密接な関係

岩手県は、全国屈指のブランド和牛の産地です。和牛肉の生産には、生後約30か月という長い期間を要します。この間を無事に乗り越えた牛が、ブランド牛肉として消費者に届けられることになります。けれども、牛も生き物です。私たち人間と同じく、途中で様々な病気になることがあります。
岩手県農業共済組合連合会のデータでは、肥育牛の死亡・廃用原因のトップは「心臓疾患」、第2位が「肺炎」、そして第3位が「尿石症」となっています。道半ばで倒れた牛もかわいそうですが、生産者にとっては、それまでに費やした餌代や人件費などが回収できず、大きな損失となります。
そこで家畜育種研究室では、平成22~25年度までの4か年、尿石症の発症と肥育牛に給与される餌の関係を突き止めるための試験を行いました。その結果、肥育牛の14か月齢以降に給与される飼料中のタンパク質(DIP注1)と炭水化物(NFC注2)のバランスが、尿石症の発症と密接な関係を持つことが明らかになりました。すなわち、DIPとNFCの比率が概ね1対4の場合には尿石症を発症したのに対して、1対5及び1対6では発症しませんでした(下表参照)。
今回の試験で得られた成果を、肥育牛の生産現場で活用し、尿石症による損耗防止と経営安定に役立てていきたいと思います。
注1 DIP:ウシの第一胃に生息する微生物によって分解されるタンパク質
注2 NFC:デンプンや糖類などの非線維性の炭水化物
DIPとNFCの比率 |
試験頭数 |
尿石症発症頭数 |
発症率 |
---|---|---|---|
1対6 |
6頭 |
0頭 |
0% |
1対5 |
5頭 |
0頭 |
0% |
1対4 |
10頭 |
4頭 |
40% |
(畜産研究所家畜育種研究室 主査専門研究員 児玉 英樹)
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