過去最高値となった背景と課題は? ~ 日本短角種子牛秋期市場が終了
日本短角種子牛の秋期市場が、平成25年10月末に2日間の日程で全農岩手県本部中央家畜市場で開催されました。平均取引価格は、秋期市場では過去最高値となる314,424円(税込)を記録し、前年の約2.4倍の高騰という結果になりました。
初日が280,570円だったのに対し、2日目は324,905円に跳ね上がり、その差額は、44,335円にもなりました。当室で生産された牛47頭は初日の上場だったため、1頭当たりの販売単価は233,971円となりましたが、それでも前年比184%の大幅アップです。
2日間で大きな差が生じた理由は、初日から購買者の予想外の価格で取引が始まったことにあると考えられます。次の日には下がるのではとの予想に反して、2日目も高値で始まり、頭数確保のためにはせり上げるしかなかったのではないでしょうか。
売買頭数は前年比97%でしたから、供給面ではほぼ変わらずに、需要が大きく上回った形です。購買者の内訳を見ると、資金力のある大口購買者4社で約8割を占めており、さらに、この4社は前年より約300頭も多く購買していました。
この大口購買者4社の動きは、単一の動機ではないと考えられます。秋田県の1社は、日本短角種を地域ブランドとして位置づけ、繁殖・肥育一貫経営を目指しています。黒毛和種をメインに肥育してきた業者では、黒毛和種子牛価格の高騰から、和牛として売ることのできる割安の日本短角種子牛にシフトしたと見ることもできます。
今回のこの結果は、県内生産者の明暗を分けました。6年ぶりに肉用子牛価格安定制度の保証基準価格を上回って手取りが増え、自然と笑みがこぼれる繁殖農家、その一方で高値で素牛が十分確保できずに顔を曇らす肥育農家……本県日本短角種の安定生産への影響が懸念されます。今後は、そうした状況を踏まえた試験研究の方向性をも考えていかなければなりません。
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上場前、手入れに余念がない生産者
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高値となったセリの風景

(畜産研究所外山畜産研究室 主査専門研究員 太田原 健二)
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