急傾斜草地の除染作業の切り札に? ~ 無線トラクターによる草地除染現地実証開始

ページ番号2005815  更新日 令和4年11月4日

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 岩手県は、北海道を除いて国内最大の草地面積を有し、自給粗飼料の供給源として本県畜産(酪農・肉用牛)の強みとなっています。その草地のうち、東京電力福島第一原子力発電所事故によって放射性物質に汚染された約1万5千ヘクタールについて、平成26年度内の完了を目指した除染対策が進められています。

 一般的な除染方法としては、大型のトラクタに装着したプラウやロータリ注1)を用いて草地の反転や撹拌を行い、放射性セシウムを土壌に固着させるとともに、放射性セシウムと化学的に競合する性質を持つ肥料成分のカリウムを通常より多量に施用し、牧草への移行を抑える方法が取られています。平坦で石礫が少なく作業条件の良い草地については、上記の方法で効率的な除染作業ができますが、除染対象のうち約2千ヘクタールの草地は、傾斜がきつく大型機械による作業では転倒の危険性があるため、除染が進んでいない状況です。

 畜産研究所では、こうした課題を解決するため畜産草地研究所注2)が平成24年度に開発した、無線操縦低重心トラクタによる除染技術注3)の効果実証試験を、平成25年度から開始しました。開始に先立って9月に実施した実演会では、最大斜度38度と人が登るのも大変な草地を、遠隔操作されたトラクタが土壌撹拌していく様子に参加者の注目が集まりました。

 畜産研究所では、今後、試験圃場で生産された牧草の放射性物質測定など、除染効果を検証することとしています。

注1)プラウ、ロータリ:プラウは土壌の反転(天地返しともいう)を行う作業機、ロータリは土壌の撹拌を行う作業機
注2)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所那須研究拠点
注3)無線操縦低重心トラクタによる除染技術
 もともと、堤防・河川敷等の草刈り用に開発。傾斜草地で安全に刈取り・施肥等をできるように、畜産草地研究所等が改良(平成17年)。既に、トラクタ本体に取り付ける刈払い機、播種機及び施肥機はあったが、平成24年度に除染技術として新たに撹拌耕用ロータリを開発。

  • ロータリを装着した無線トラクタの写真

    ロータリを装着した無線トラクタ

  • 傾斜地での除染作業の様子の写真

    最大斜度38度での除染作業

(畜産研究所家畜飼養・飼料研究室 室長 藤原 哲雄)

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