県産飼料「100%」の短角牛肉を食卓へ ~ 大豆サイレージ給与による短角牛肥育
平成24年は7月に入ってから、各メディアはトウモロコシ・大豆の主産地であるアメリカ中西部が干ばつに見舞われ、穀物相場が急騰していることを伝えています。過去にも、平成19~20年にかけて、燃料用エタノール生産向けにトウモロコシの需要が増大したために配合飼料価格が高騰し、県内の畜産農家が苦労したことは記憶に新しいところです。
それ以降、飼料自給率の向上が国内畜産の大きな命題となっており、畜産研究所でも、飼料作物の収量増加に関する研究のほかに、未利用資源の飼料化などにも取り組んできました。今回は一例として、いずれも県内で生産できるトウモロコシと大豆のみで、短角牛を肥育する技術を紹介します。
トウモロコシサイレージは、すでに短角牛の主な肥育飼料として使われ、飼料全体の8割まで給与する肥育技術が確立されています。しかしながら、トウモロコシだけではタンパク質が不足するため、その分をこれまでは輸入物である大豆粕やふすまで補わざるを得ない状況にありました。
そこで、これまで飼料として利用されてこなかった大豆をタンパク質の供給源としてサイレージ化したものを、トウモロコシサイレージと組み合わせ肥育試験を実施しました。その結果、一日当たりの体重増加が約1割減るものの、仕上がりの肉質などは従来法と遜色がなく、県産飼料100%で美味しい短角牛を生産できることが判りました。
世界的に穀物の争奪戦となって、容易に飼料原料が輸入できなくなる事態が、いつやって来ないとも限りません。今回紹介した技術は、短角牛の生産を途絶えさせないための一つの武器になるものと考えています。
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大豆収穫の様子
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大豆サイレージを食べる試験牛
(畜産研究所家畜育種研究室 主任専門研究員 鈴木 強史)
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