長く険しき「りんご道」~ りんごの新品種ができるまで
果樹研究室では、りんごの品種育成を行っていますが、今回は交雑育種という方法について紹介します。交雑育種は、交配親となる品種を決め人工授粉による交配を行い品種改良する方法です。
交配作業では、まず開花前に袋掛けを行い、他の品種の花粉が入らないようにします。その後、花が膨らみだした頃に、中心花のみを残して摘花し、花弁と葯をピンセットで取り除きます。この葯を取り除く作業を除雄(じょゆう)と言います。次に、梵天や綿棒等を使い交配したい品種の花粉を授粉させます。そして、他の品種の花粉が受精しないように、再度袋掛けを行えば作業完了です。
人工授粉で実を結んだ果実は、秋に収穫して貯蔵し翌年の春に果実から種子を取り出して播種します。その後、1年間育てた実生苗を穂木として、わい性台木に接ぎ木します。そこから実が成るまでには2~3年かかり、品種登録に必要なデータの収集や特性の把握には、さらに10~20年もかかります。このように、りんごの育種には長い年月と多くの労力が必要です。
当センターでは、これまで「きおう」「黄香」「紅いわて」「岩手5号(大夢)」の4品種を育成してきましたが(岩手5号は品種登録申請中)、新たな目標は果皮が赤色の早生品種です。現在、赤色の早生品種の主力は「つがる」ですが、需要が減少傾向にあり価格の低迷が続いています。これに代わる新たな品種を育成することにより、需要の掘り起こしとりんご農家の経営安定を図りたいと思います。
本年交配したものが実を付けるのは早くても5年後になりますが、少しでも早く新しい品種をお披露目できるよう励んでいきます。
-
梵天での人工授粉作業
-
交配後の袋掛け
(撮影日:平成24年5月11日)
(技術部果樹研究室 技師 田口 礼人)
このページに関するお問い合わせ
岩手県農業研究センター 園芸技術研究部 果樹研究室
〒024-0003 岩手県北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4417 ファクス番号:0197-71-1083
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。