野菜を守る強い味方! ~ 天敵と物理的防除によるピーマン、ナスの化学合成農薬削減技術を検討しています
岩手県内のピーマンやナスの雨よけ・ハウス栽培では、化学合成農薬である殺虫剤(以下、殺虫剤)の使用回数を減らすため天敵製剤(生物農薬)の普及が進んでいます。天敵製剤は、容器の中に害虫を食べる天敵が生きたまま入っており、これをハウス内に散布し、天敵が害虫を食べることで害虫の密度が低下し、野菜への被害を抑えることができます。
しかし、天敵も生き物であることから万能ではありません。害虫が多発した場合や天敵が食べない害虫が発生した場合は、殺虫剤を散布して害虫の密度を下げなければいけません。この場合は、殺虫剤によって天敵を殺さないよう、散布する薬剤の選定に注意が必要です。また、化学合成農薬の削減には、物理的防除も重要です。
では、害虫の物理的防除はどうしたらよいでしょう。防虫ネット等で害虫の侵入を防止する方法が有効と考えられますが、防虫ネットを設置すると風が通りにくくなり、ハウス内の温度が上昇して、野菜や天敵の生育環境が悪化するという問題があり、夏秋産地である本県ではなかなか普及が進んでいませんでした。
そこで病理昆虫研究室では、平成23年度からピーマンやナスの雨よけ・ハウス栽培で、網目が大きく通気性の良い防虫ネットを使い害虫の侵入を抑制しながら、侵入した害虫を天敵や天敵に影響の少ない殺虫剤により防除する技術開発をスタートさせました。
まず、反射資材を織り込んだなるべく通気性の良い防虫ネット等でアブラムシ類やチョウ目などの比較的大きい害虫の侵入を抑制します。通気性の良い資材は、網目が大きいのでアザミウマ類やハダニ類は侵入しますが、それを天敵を利用して防除します。これらのガードを突破して増えた害虫があった場合にだけ、天敵に影響の少ない殺虫剤を使用して、害虫の被害を減らす体系の構築を目指しています。
さらに、天敵がより安定的に定着できる温度や餌となる花粉量などの放飼条件、雑草等のハウス周辺環境が害虫の侵入にどのような影響を与えるか等を解明して、総合的な殺虫剤の使用回数削減技術の確立につなげていきます。
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反射資材(タイベック)織り込み防虫ネット(ピーマン)
目(6×2.5mm)が大きく通気性の改善効果と反射資材によるアブラムシ等の進入抑制効果を検討 -
1×1mm防虫ネット(ピーマン)
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天敵製剤
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ハウスサイドに反射資材(タイベック)を敷き害虫の侵入抑制効果を検討しています(なす)
(環境部病理昆虫研究室 主査専門研究員 多田 典穂)
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