受胎率向上は日頃の栄養管理から! ~ ホルスタイン未経産受胚牛の飼料給与プログラム
牛の受精卵移植における受胎率は48%前後で推移しており、技術の普及のためには受胎率の向上が課題となっています。これまで受胎率向上を目的とした試験研究は、胚の凍結方法等についての検討は行われてきましたが、受胚牛の飼養管理についての検討は十分に行われていませんでした。
そこで、家畜育種研究室では、ホルスタイン未経産受胚牛の血液検査指標値と、受胎率向上が期待できる飼養給与プログラムについて検討したので、その概要を紹介します。
血液検査数値と受胎率の関係を調査した結果、NH3は101μg/dl以上、BUNは10~12mg/dlでそれぞれ高い受胎率を示し、TCは86mg/dl未満で受胎率が低下する傾向を示しました(表1)。
また、給与飼料成分のNFCとDIPの比率(NFC/DIP)が3.5から6.0となる飼料を、移植前発情日から28日間給与すると高い受胎率が期待できることが分かりました。ただし、CP充足率の不足は、受胎率の低下を招くので100%を切らないことが重要です(表2)。
検査項目 |
区分 |
移植頭数 |
受胎頭数 |
受胎率 |
---|---|---|---|---|
NH3 |
<101 |
32 |
11 |
34.4 a |
NH3 |
101≦ |
47 |
28 |
59.6 b |
BUN |
4~9 |
21 |
9 |
42.9 |
BUN |
10~12 |
17 |
12 |
70.6 a |
BUN |
13~17 |
23 |
11 |
47.8 |
BUN |
18~25 |
17 |
7 |
33.3 b |
TC |
<86 |
14 |
5 |
35.7 |
TC |
86≦ |
65 |
37 |
56.9 |
注:検査項目ごとのa,b異符号間で有意差あり(P<0.05)
区分 |
NFC/DIP |
充足率(%) |
充足率(%) |
充足率(%) |
移植頭数 |
受胎頭数 |
受胎率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A区 |
3.2±1.1 |
70±3 |
102±5 |
92±6 |
2 |
0 |
0.0 c |
B区 |
6.7±0.3 |
104±7 |
77±5 |
91±7 |
7 |
1 |
14.3 c |
小計 |
9 |
1 |
11.1cd |
||||
C区 |
2.5±0.4 |
108±6 |
105±14 |
159±28 |
12 |
6 |
50.0 b |
D区 |
4.7±0.9 |
115±31 |
122±25 |
128±25 |
10 |
9 |
90.0 a |
小計 |
22 |
15 |
68.2 e |
注:(妊娠鑑定60日)ab;P<0.05, ac;P<0.01, de;P<0.01
(畜産研究所家畜育種研究室 主査専門研究員 児玉 英樹)
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