「汗」と「汗」の結晶!? ~ 水稲新品種はこうして作られる

ページ番号2006308  更新日 令和4年12月7日

印刷大きな文字で印刷

 平成20年8月1日から22日まで、技術部作物研究室では水稲の新品種を育てるための第1段階である「交配」の作業を行いました。今回は実際にどのような作業が行われたかを紹介します。

 まず、交配しようとする株を圃場や温室で育てます。交配親は全国各地から取り寄せた品種や系統なので、出穂する時期はまちまちです。そこで、交配時期に出穂・開花のタイミングが合うよう、移植する時期を変えたり、短日処理注)を行います。

 母本(母親になる株)は、開花を促すため前日の夕方に室温28℃の暗室に入れます。交配当日の朝9時頃に、水温43℃の温湯に7分間、穂の部分を浸けて母本の花粉を死滅させます。これはおしべ(花粉)がめしべより高温に弱い性質を利用したものです。お湯からあげて、しばらくすると花が開いてきます。開花しないものはすでに受精したか、未熟なものであると見なし取り除きます。

 一方、イネの花粉は寿命が短く保存ができないため、父本(花粉親になる株)は交配当日に開花予定の穂を採取します。そして、交配専用の仕切りのある部屋で、母本の穂に採ってきた穂の花粉を振りかけ、他の株からの花粉がかからないようにパラフィン袋をかぶせて終了です。交配室内の温度は常に30℃以上になり、研究員は連日汗だくでの作業となります。

 本年は約100通りの組み合わせの交配を行いましたが、「食味が良い」「病気に強い」「収量が多い」など、目標ごとに候補を絞り込みながら育てていく予定です。
 
注)イネは昼が短くなると穂のもとになる部分ができる性質があります。短日処理とは、人工的に日長を短くして出穂を早める操作をいいます。

  • 穂をお湯に浸けた後、開花しない籾を除く作業中の写真

    穂をお湯に浸けた後、開花しない籾を除きます
    右の方は財団法人岩手生物工学研究センターのムルネーさん(エチオピア出身)です

  • 母本に花粉をふりかける作業の様子の写真

    母本に花粉をふりかけているところ
    右は開花中の穂の様子で籾から出ているものがおしべです

(技術部作物研究室 専門研究員 阿部 陽)

このページに関するお問い合わせ

岩手県農業研究センター 生産基盤研究部 作物育種研究室
〒024-0003 岩手県北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4414 ファクス番号:0197-71-1081
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。