岩手県蚕業試験場要報 第18号

ページ番号1042062  更新日 令和3年4月21日

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岩手県における桑新品種「わせゆたか」の栽培特性

澤口拓哉・藤沢 巧

 桑新品種「わせゆたか」の普通植試験を行ったところ次の結果を得た。

  1. 先枯率は低く、また春の発芽が早く、新梢の発育も良好であった。
  2. 春蚕期の収量(新梢量)は、栽培試験4年間の平均で「あおばねずみ」の95%であった。
  3. 晩秋蚕期の枝条数および平均最長枝条長は「あおばねずみ」を上回った。
  4. 晩秋蚕期の収葉量は「あおばねずみ」より低いが、葉質の低下が少なく、晩秋蚕期の飼育試験で良好な結果が得られた。

 以上の結果から、「わせゆたか」は岩手県でも、晩秋蚕期以降まで良質の繭を生産するために有用な品種であると判断された。

冷夏年(1993年)における春秋兼用の密植桑の生育と翌春の枝枯性病障害の発生

土佐明夫・佐々木敬治・伊藤眞二

1 冷夏年(1993年)における気象と春秋兼用の密植桑の生育

  1. 桑が最も伸びる7~8月にかけての平均気温が19.3℃で平年より3℃低く経過し、さらに、7月中旬~8月中旬は極端な日照不足(平年対比59.9%)であった。
  2. 夏切後の桑生育状況は、8品種の平均最長枝条長が98cmで前2ヶ年平均に比較して76%の伸びにとどまった。
  3. 晩秋蚕期の枝条80cm残し収穫では、前2ヶ年平均に比較して12%の収葉量となり極端な減収となった。

2 翌春(1994年)の枝枯性病害の発生

  1. 異常冷夏の影響は桑の越冬態勢の遅れや耐凍性にも影響を与えたと思われ、翌年の収穫枝条の枯込みや発芽不良などの障害が発生した。
  2. 枝条の先枯れの発生は、ゆきしのぎ・しんけんもち・剣持が少なく、しんいちのせ・はやてさかり・おおゆたかが33.0~34.0cmと多く発生した。
  3. 桑胴枯病の被害率は、カラヤマグワ系の品種では高く(54.8~96.2%)、ヤマグワ系の品種では低かった(7.0~18.9%)。
  4. 定芽の発生障害も認められ、発芽しても葉が奇形・縮葉症状を呈する出開き状態の異常芽や、芽に病斑が認められる不発芽が多く発生した。
  5. 春蚕期の新梢収量は、前3ヶ年に比較して、しんけんもちが77%で被害が少なく、ゆきしのぎの65%、はやてさかり54%の順となり、他の品種は19~45%の収量にとどまった。

ヘッドルーペを利用したクワシントメタマバエ幼虫の発生消長調査法

鈴木繁実

 クワシントメタマバエ幼虫の発生消長から防除適期を簡易に把握することを目的として、無耕転・除草剤無使用の桑園において、桑の頂芽に寄生している幼虫数の発生消長を1992~1994年の3ヵ年間調査した。

  1. 本病の発生は、気象条件により大きく左右された。また、土壌水分が発生を制御する主要因と考えられた。
  2. 実体顕微鏡観察による芽内幼虫数の発生消長は幼虫寄生芽数の消長と同様なパターンを示した。
  3. ヘッドルーペ観察による幼虫寄生芽数の発生消長は実体顕微鏡観察によるそれと近似した。
  4. ヘッドルーペ観察による幼虫寄生芽数の発生消長から、薬剤による頂芽散布および地表面散布の適期を簡易に把握する方法を提案した。

プロメトリン・メトラクロール細粒剤の桑園雑草防除効果

澤口拓哉・境田謙一郎・菅原洋一・中村勇雄・川村東平

 除草剤による桑園雑草の防除体系に組入れる目的で、プロメトリン・メトラクロール細粒剤について岩手県内4ヵ所で現地試験を行った。

  1. 各試験区とも1年生雑草、特にメヒシバなどの発生がよく抑えられた。
  2. 生育中の雑草に対しては効果が劣った。
  3. 抑草効果は30~45日持続した。
  4. 桑樹に対する影響は、いずれの場合も認められなかった。

 以上から、本除草剤は春蚕期収穫後の土壌処理剤として実用性が高いと判断された。

移動式超微粒子噴霧器による蚕室・蚕具類の無人消毒

鈴木繁実・高橋 司・橋元 進・佐藤武彦・及川直人・境田謙一郎

 常温煙霧タイプの2種類の超微粒子噴霧機(M社製LVM400V-2およびJ社製JP-103)を用い、超微粒子ホルマリンによる蚕室消毒への応用を試み、次の結果を得た。

  1. 飼育施設の容積1m3当たりホルマリン原液20~30mlの散布量で、核多角体病ウイルス、ホルマリン耐性こうじかび病菌に対して消毒効果が認められた。
  2. 消毒効果は施設の密閉度により大きく左右された。
  3. 単位容積当たりの散布量が同量であっても、噴霧時間が長いほど消毒効果が高くなる傾向がみられた。
  4. 床が湿った土面のアルミパイプハウスでは床面の消毒効果が不十分であった。
  5. ホルマリン原液を噴霧しても施設や機械・器具類の金属に腐食の発生は殆ど認められなかった。

養蚕省力機械化技術実証試験 -農業革新技術実証拠点試験地設置事業-

伊藤眞二・土佐明夫・阿部末男・佐々木敬治

  1. 桑園除草剤と桑害虫防除薬剤の混用による同時散布は効果が認められたが、混用する薬剤の種類によっては薬害発生の危険性があるため中止した。なお、拠点農家の桑園雑草処理は茎葉処理剤と土壌処理剤の混用による除草処理体系となっている。
  2. 肥効が長期間持続するBBロング肥料は夏の施肥が不要であるとともに桑収量も増加し、窒素量を20%減量しても既存施肥と同等の収量が得られた。また、経済負担も軽減されることから晴山地区では1994年には桑園面積の約30%で使用され、1995年からは全面的に使用されることになった。
  3. 熟化促進剤利用による自然上蔟技術は繭質面では対照区に比べて大差なく、熟化が揃うため上蔟後の残蚕が少なく、渡り蚕も少ない等再上蔟に要する労力も省力化できるため、導入技術として有望と思われた。 しかし、拠点農家では上蔟後の残渣片付けにマニュアホークを利用するため、蔟の運搬方法に問題点が生じ、導入されるまでには至らなかった。ただし、熟蚕収集を条払い、若しくは網取り法で行い、上蔟専用室で振込み上蔟する場合は導入可能であり、また、飼育室と上蔟室が兼用である場合、蔟運搬の必要がなく、上蔟作業のピークを崩すとともに再上蔟作業の省力に有効な技術であることが認められた。
  4. 4齢期齢中2回給桑育技術は当初不安が持たれたが、実証により桑葉萎凋防止効果が認められ、拠点農家は継続して実施する意向である。また、実証展示した飼育室は軽量鉄骨蚕舎であるが、拠点農家はビニールハウスで桑葉萎凋防止資材を利用して効果を得、5齢飼育にも利用している。
  5. 超微粒子噴霧機による蔟器消毒は完全な消毒効果が得られたほか、飼育室の消毒にも効果がある。しかも小型軽量で持ち運びが容易であるとともに無人消毒が行えるなど、農家の評価は高く、組合として購入が決定された。薬剤の基準量を満たない不完全消毒や、消毒の省略等が解消されるものと期待される。
  6. 一方、分場試作の簡易消毒装置は電力を必要としないため電気設備のない蚕室消毒に効果的であるとの評価を得たが、サイドノズルから吐出される拡散幅が狭いためノズルの改良が必要であった。
  7. 実証試験の実施時期は地区の養蚕農家も飼育時期であるため新技術を参観する暇が無く、蚕期以外に新技術についての研修会を開催するよう要望された。
  8. 養蚕から他作目へ較換した農家が、農産物の輪入自由化や価格変動の激しさに不安を持ち、養蚕復活を思考していることがうかがわれた。

天蚕の野外孵化による全齢屋外放飼育

橋元 進・高橋 司・神山芳典

 天蚕繭の生産の省力・低コスト化を目的として、野外孵化による全齢屋外放飼育試験を行い次の結果を得た。

  1. 5月中・下旬または7月上旬に天蚕卵を出庫し、水切りネットを加工した袋に収納して飼料樹(クヌギ)に取り付け、野外孵化を行っても孵化率は低下せず、孵化後の発育にも異常がみられなかった。
  2. 80%以上の結繭率が得られ、繭質も3齢まで人工飼料育後に飼料樹に付ける方法に比べ遜色がなかったことから、無毒卵(微粒子病病原に感染していない卵)を用い、飼育林の病害虫防除を徹底することを前提として、野外孵化による全齢屋外放飼育の実用性は高いものと考えられた。

[資料]桑の発芽・発育調査(付・1994年気象調査表)

澤口拓哉・伊藤眞二

(摘要なし)

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