岩手県蚕業試験場要報 第17号

ページ番号1042063  更新日 令和3年4月22日

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1993年の異常冷夏における桑の生育

阿部末男・伊藤眞二・土佐明夫・宍戸 貢

 1993年の暖候期における気象は、県下全域にわたり低温・日照不足など近年まれにみる異常な冷夏で、桑の生育が悪く収量も減少した。そこで県下の主な4地域について桑の発芽発育状況、伸長状況、収量等を調査し、過去12年間のデータと比較検討した。

  1. 各地域とも気温が4月以降平年を下回り、特に、7月下旬から8月上旬の平均気温が平年より、水沢は-5.7℃、一戸で-5.0℃、一関では-5.1℃、久慈で-6.6℃と低かった。
  2. 本年の桑の脱苞は、種市が5月6日で平年並みであったが、他の地域は平年より5日から8日遅れで1984年と同じ(花泉)かそれに次ぐ遅い(水沢、一戸)脱苞であった。
  3. 桑の新梢長及び葉面積調査は、一戸においては生育不良のため指定日の調査ができず10日遅れの6月2日測定となった。過去には1984年に例がある。他の地域の5月23日における新梢長も、平年の45%から70%の伸びであり、葉面積については、種市が67cm2と最も小さかった。
  4. 春蚕期の桑収穫量は、新梢量割合は各地区とも平年並みであったが、収量は、県北(一戸・種市)が平年と同等の収量のほかは、水沢の改良鼠返が平年の77%、水沢のしんけんもちと花泉の改良鼠返が67%と少なかった。
  5. 本年の桑の伸長状況を、改良鼠返の夏切桑で1日当たり平均伸長量を平年に比較すると、各地区とも桑が最も伸長する8月上旬までの伸びが極端に不良であった。
  6. 本年の晩秋蚕期の収量は、春切桑園では平年の42~75%で、一戸のゆきしのぎが42%、改良鼠返が49%と少なく平年の半分以下の収量であった。品種間では、しんけんもち、ゆきしのぎが同じ地域の改良鼠返より平年比で7ポイント少なかった。夏切桑園では、種市が生育不良のため収穫不能であったほか、各地区とも平年の35~56%と極端な減収となった。品種間では、水沢の改良鼠返としんけんもちの平年比に大差はなかったが、一戸は春切桑園とは逆にゆきしのぎが改良鼠返より平年比が7ポイント高かった。また、調査圃場における春蚕期収量と晩秋蚕期収量(夏切)の合計収量(年間収量)は、水沢のしんけんもちと花泉が平年の62%と低かったが、そのほかは平年の70~81%であった。
  7. 春秋兼用の密植桑園における品種別の生育状況を比較すると、桑の脱苞ではしんいちのせが5月15日で最も遅く、その他の品種は5月12・13日で大差なかった。春蚕掃立時(6月1日)における新梢長及び開葉数は、品種間に大差はなかった。7月初日から8月20日の間の1日当たり平均伸長量は、はやてさかり・おおゆたかが1.8cmで最も伸び、ゆきしらずが1.1cmで最も伸びが悪かった。また、8月20日から9月27日の間では、しんいちのせが2.2cmと最も伸び、伸びが悪かったのは、剣持とゆきしらずの1.3cmであった。春(6月25日収穫)と晩々秋(9月27日収穫)の合計収量を品種間で比較すると、しんけんもち>はやてさかり>ゆきしのぎ>剣持>ゆきしらずの順であり、1990~1992年の平均収量との対比では、しんけんもちが94%弱で最も被害が少なかった。

春蚕期および晩秋蚕期における桑の収量予想

阿部末男・宍戸 貢

 1982年から1993年までの調査資料を基に、県下4地域の春蚕期及び晩秋蚕期の収量予想について検討した結果の概要は次のとおりである。

  1. 春蚕期の桑収量と気象要因との関係は、5月中旬の平均気温との相関が高く、発芽との関係では発育が進むにつれて高くなる傾向があった。
  2. 平均気温と桑の発育発芽状況を用いた春蚕期の掃立前の収量予想重回帰式では、重相関は0.903から0.702の範囲であった。
  3. 晩秋蚕期の桑収量との関係では、7月下旬から8月中旬までの気温と相関が高い傾向はあるが、平均・最高・最低気温の特定はできなかった。また、最長枝条長との関係では、時期が進むにつれて相関が高くなる傾向にある。
  4. 晩秋蚕期の収量予想式を平均気温と平均最長枝条長を用いて求めた結果、掃立前における重相関は、春切の場合で0.580から0.890の範囲であり、夏切では0.508から0.847の範囲であった。

 以上、今回作成した収量作成式は、普通桑園を対象にしたもので、また桑品種も改良鼠返・しんけんもち・ゆきしのぎのみであり、広大で、立地条件や気象条件が複雑な本県において、この予想式を県下全域に適応することは困難と考えられる。さらに精度を高めるよう検討を加えたい。

被覆肥料入り桑専用肥料による春一回施肥法

宍戸 貢・土佐明夫・遠藤征彦

 緩効性被覆肥料記合の桑専用肥料による春一回施肥法は慣行の施肥法より条桑収穫量が勝り、夏肥(追肥)を省略できることとあわせて有望な施肥法である。また、若干収量は落ちるが2割程度の減肥が可能であり、省資源・環境保全の面でも利点が大きい。

桑園の土壌・作物栄養診断手法の改善

遠藤征彦・宍戸 貢

1 土壌窒素分析におけるブレムナー式窒素蒸留法の装置の部分改良

  1. 市販のブレムナー式窒素蒸留装置の改良として、本装置の基本機能を損なわない範囲で部分改良を行った。すり合わせ接続部分の肉厚シリコン管での接続や、蒸気導入ガラス管の中間部を切断し、シリコン管での接続により装置全体がフレキシブルな接続となり、分析操作中の衝撃等が接続部分で吸収され、破損の危険性が軽減された。このことは、分析の能率向上に結びついた。
  2. すり合わせガラス栓であったストップコック部を小型ロート・シリコン管・ピンチコックの組合せに改造した。ガラス栓の固着のトラブルが解消されるとともに、本装置が一般のケルダール蒸留装置と同様の使用法が可能となり、アンモニア態窒素定量専用にも利用できた。
  3. 市販セットのうち、導入管部のみを購入し冷却管・スチームトラップを既存の部品の組合せにより安価に装置の増設ができ、2連とすることにより分析の能率向上に結びついた。

2 分析操作方法の改善

  1. ブレムナー蒸留装置を用いた「硝酸態+アンモニア態」合量窒素定量法「デバルダ合金還元-水蒸気蒸留法」の分析能率向上について検討した。
  2. アルカリ剤として添加する、市販特級酸化マグネシウム試薬に含まれる炭酸は無視でき、除去のための加熱処理は不要であり、添加量も0.2~1.0グラムの範囲で分析結果に影響しないことが明らかとなった。また、還元剤として添加するデバルダ合金量も0.2~0.5グラムの範囲で分析結果に影響なかった。
  3. 蒸留時間については、5分以上、留出液量30ml以上あれば良いとの結果を得た。
  4. 以上のことから、酸化マグネシウムおよびデバルダ合金の添加量は必ずしも正確に秤量する必要はなく、目安として一定量以上添加すればよく分析能率の大幅な向上が可能となった。

銅・ストレプトマイシン剤散布による桑の霜害軽減効果

伊藤眞二・鈴木繁実・宍戸 貢

 銅・ストマイ剤散布による桑の晩霜被害軽減効果について検討した。

  1. 1992年:供試剤を数布した3日後の5月11日に降霜があったが、供試剤による霜害軽域効果は認められなかった。
  2. 1993年:供試剤を散布した2日後の5月16日に降霜があり、対照区の被害芽率を100とした数で対比すると、供試剤散布区では19~42の指数であり、霜害軽減効果が認められた。
  3. 両年の相違は、供試剤散布から降霜までの日数差と桑株を中心とした供試剤の散布範囲の差により飛散付着する細菌密度の差によるものと推測された。

蚕の営繭中の時期別不良環境が繭解じょにおよぼす影響

大津満朗・高橋 司・橋元 進

 上蔟後吐糸開始から終了までの期間を前期、中期、後期に分けそれぞれの時期別に不良環境に遭遇させることにより、どの時期の不良環境が繭解じょに影響するか検討し、次の結果を得た。

  1. 全期間では高温多湿環境が解じょ率低下に大きく影響する。
  2. 時期別では、中期(上蔟後40~72時間)の高温多湿が影響し、解じょ率を大幅に低下させる。
  3. 中期の高温多湿環境は、その後の後期(上蔟後72~96時間)を湿度70%に改善しても解じょ率の向上は少ない。

こうじかび病菌の簡易検出手法「濾紙・ポリ袋法」の開発

鈴木繁実・佐藤武彦

 こうじかび病菌の簡易検出法として培地吸着濾紙とポリエチレン袋を利用した「濾紙・ポリ袋法」を考案した。本法は、新しいポリ袋に入れた手で培地吸着濾紙を取り出し、その両面を検査対象に軽く押し当ててからポリ袋に回収し、ポリ袋の口を固く結び、そのまま30℃で48~72時間培養後、発育した菌のコロニーを調べ、こうじかび病菌の有無・多少を判定するものである。この方法はアガースタンプ法とほぼ同じ水準の優れた菌検出精度が認められ、そのうえ、安価で、培養用滅菌機器等が不要であり、省力化が著しく、また、誰にでもできる極めて簡易な現場向き検出法であることが確認された。

天蚕繭の安定生産技術 第7報 天蚕卵の長期保護、天蚕の羽化調整及び紙袋を利用した交配・採卵方法

橋元 進・高橋 司・大津満朗

 天蚕繭の生産技術上の課題であった、多回育に対応した天蚕卵の保護法および交配・採卵作業の簡易化や能率向上策についていくつか試験を行い次の結果を得た。

  1. 天蚕卵を催青開始時まで2.5℃で冷蔵保護すると、6~8月の野外放飼育可能期間を通して高く安定した孵化率がえられた。また、孵化期間や孵化の斉一性に関しては、卵の冷蔵保護条件や催青条件の違いによる顕著な差はみられなかったが、掃立て時期が遅くなるほど孵化最盛日の孵化個体数が多くなる傾向であった。
  2. 天蚕繭を吐糸開始後6日以内に温度と日長を組み合わせたいくつかの条件で処理した結果、室温12L-12Dと25℃12L-12Dの条件が蛹期間の短縮に最も有効で、羽化期間も自然日長条件に比べ大幅に短縮された。
  3. 紙袋を利用した交配・採卵方法は、従来行われていた竹かご利用の交配・採卵方法に比べて、高い交尾率を示した。

食品原料としての桑葉粉末の調製

澤口拓哉・宍戸 貢

 桑葉の新しい利用法を関発する目的で、桑葉粉末を調製し、粉末の特性を調査した。また、桑葉粉末入りのうどん・そばを試作して、桑葉粉末の実用性を検討した。

  1. 桑葉を煮沸処理することにより、調製された粉末は青臭さが軽誠し、緑色が濃くなった。また、各主成分を分析したところ、無機成分ではカリウム、有機酸・糖類ではコハク酸、リンゴ酸、ショ糖が煮沸処理lこより損失した。これらの結果から、桑葉の煮沸時間は2分程度が適当であると結論した。
  2. 桑葉の煮沸時間を2分間にして150メッシュ全通の桑葉粉末を調製し、うどんに加えて試食会を行った。その結果、評価にばらつきがあったものの、総合的には良い評価を得ることができた。

[資料]桑園用除草剤の桑園雑草防除効果

及川直人

(摘要なし)

[資料]桑の発芽・発育調査(付・1993年気象調査表)

澤口拓哉・伊藤眞二

(摘要なし)

[資料]交雑種比較試験(1993年)

高橋 司

(摘要なし)

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