岩手県蚕業試験場要報 第13号

ページ番号1042081  更新日 令和3年4月22日

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被覆尿素(LPコート)を用いた超多収桑園の窒素施肥法

宍戸 貢・壽 正夫・鈴木繁実・及川直人・藤沢 巧

  1. 超多収桑園の窒素施肥として、LPコートを用いたところ、土壌中無機態窒素濃度の極端な高まりがみられず、長期的な土壌管理の面からみて有効な施肥法と考えられた。
  2. LPコート施用は固形肥料の施用に比較して桑の生育に障害がみられず、条桑収穫量も多くなる傾向があった。

クワの株下げ樹形改造の秋冬期処理と生育

及川直人・壽 正夫・藤沢 巧

 既設普通桑園の株下げ樹形改造処理を秋冬期に実施したところ、慣行の3月処理に比べ11月処理では枝条の発生状況や収葉量が劣ったが、12月以降の処理では大差ない生育を示した。

3倍体桑品種の繭層生産効率 -太繊度用蚕品種を用いた場合-

壽 正夫・及川直人・藤沢 巧

 単位面積当たりの産絹量の向上を図るため、3倍体桑品種の密植桑を用い、密植桑の飼料効率を繭層生産効率の視点から太繊度用蚕品種を用いて検討した。

  1. 春蚕期における桑品種別による繭層生産効率(繭層重/食下量)では、みつしげり>しんけんもち>あおばねずみの関係を示し、蚕品種別では対照に比べ太A、太Bはやや劣った。
  2. 初秋蚕期における桑品種別による繭層生産効率では、しんけんもち>みつしげり>あおばねずみの関係を示し、蚕品種別では対照に比べ太A、太Bとも優った。
  3. 晩秋蚕期における桑品種別による繭層生産効率では、あおばねずみ>みつしげり>しんけんもちの関係を示したが、その差は小さかった。蚕品種別でも大差なかった。
  4. 桑品種別繭層生産量の試算では、一春一夏輪収型式における年間平均収葉量では品種間で大差なかったが、平均繭層生産量では、みつしげり>しんけんもち>あおばねずみの関係を示し、みつしげりで高い傾向が認められた。

春切桑における凍霜害被害後の桑生育促進技術

土佐明夫・菊池次男・伊藤眞二

 桑の新梢長が23.6~35.8cmと比較的伸びた6月上旬に凍霜害被害直後の春切桑に対して、複合液肥ポリコープ(865)300倍を葉面散布すると、夏蚕期及び初秋蚕期の収量が17~23%増収となり桑の生育促進効果が確認された。

抗幼若ホルモン活性物質投与による早熟3眠蚕の誘導と大量飼育

橋元 進・佐藤正昭・若澤 貢・阿部信治・大津満朗

 抗幼若ホルモン様の作用を示す物質(AJH)のイミダゾール系化合物SSP-11を用い、極細繊度繭を生産する早熟3眠蚕の実用的な誘導方法を検討し、その早熟3眠蚕の大量飼育を試み次の結果を得た。

  1. 4眠蚕から3眠蚕を誘導するため、人工飼料を用いてSSP-11を添食させ、その添加濃度の影響を明らかにするとともに、3眠蚕の効果的な誘導法を見出した。
  2. 人工飼料育で3眠蚕を誘導する環境条件は、全暗より8L16Dの光線リズムが有効であった。
  3. AJH添加人工飼料の給餌後は、標準の給餌量より10%増量することにより高率の3眠化率が得られた。
  4. 最終齢蚕へのAJH投与により、蛹体重、繭層重が増加したが、特に繭層重の増加割合が高く、繭層歩合が向上した。
  5. 早熟3眠蚕の大量飼育を行い、年間多回育(年10回程度)の見通しが得られた。

AJH投与により誘導された早熟3眠蚕の核多角体病・黄きょう病抵抗性の推移

鈴木繁実・宍戸 貢

 イミダゾール系抗幼若ホルモン活性物質“SSP-11”(AJH)の投与により誘導された早熟3眠蚕の3齢3~5日目及び4齢幼虫の核多角体病・黄きょう病抵抗性の経時的変化について検討した。

  1. 早熟3眠蚕の3齢3~5日目幼虫の核多角体病抵抗性は、AJH無投与の4眠蚕の4齢幼虫と差が認められなかった。
  2. 早熟3眠蚕の4齢起における核多角体病抵抗性は、起蚕では対照の4齢起蚕と差がなく、4齢2~3日目にかけてlogLC50値が急速に上昇した。4日目以降は4眠蚕の5齢幼虫と近似した高い抵抗性を示した。
  3. 早熟3眠蚕の4齢期における黄きょう病抵抗性は、4齢起~3日目幼虫では4眠蚕の幼虫とほぼ同じ値を示した。4日目以降では4眠蚕の5齢幼虫と差が認められず、次第に上昇するというパターンを示した。
  4. 以上のことから、早熟3眠蚕を耐病性という点で分類すると、3齢3~5日目幼虫は4眠蚕の4齢幼虫に、4齢幼虫は4眠蚕の5齢幼虫に相当するものと考えられた。

マツノマダラカミキリの防除に利用されようとしているBeauveria bassiana の蚕に対する病原性

鈴木繁実・宍戸 貢

 マツノマダラカミキリ幼虫の生物防除に利用されようとしているBeauveria bassiana 263株の蚕に対する病原性を検討した。

  1. B.bassiana F263株は、5齢起蚕、5齢3日目蚕児に最も強い病原性を示し、5齢末期から繭中で発病した。
  2. 5齢5日目の幼虫、熟蚕の接種でも繭中での発病がみられた。
  3. 蚕からの分離菌28株に比べると病原性がやや弱く、発病時期も遅い傾向であった。
  4. F263株に対する用途別蚕品種の感受性は普通繊度品種に比べ、太繊度品種ではやや高く、細繊度品種あけぼのではほぼ同じ水準であった。
  5. 以上のことから、天敵微生物利用の害虫防除には、蚕への病原性のない菌種または病原性の極く弱い菌種・菌株の選定が強く望まれる。

岩手県北部地域における大規模養蚕経営の実証に関する研究 -地域農業開発拠点試験地設置事業成績-

菊池次男・伊藤眞二・土佐明夫・亀卦川恒穂

 県北部地域において実施した地域農業開発拠点試験地設置事業の現地実証試験で、桑園面積5ヘクタール・繭5トン生産程度の大規模養蚕経営を確立するにあたり、次の技術改善を行った。

  1. 密植桑園及び新桑品種の導入では、苗木横伏法で畦間1.2~1.5メートルの密植桑園を造成し、ゆきしのぎ(春秋兼用)、しんけんもち・あおばねずみ(夏秋専用)の新桑品種を導入した。
  2. 年6回飼育対応の収穫法として、一春一夏輪収法、株上・株下輪収法、春切法を組合わせた用途別桑園を設定し、密植桑園は条桑刈取機による機械収穫とした。
  3. 春切桑園の収穫は原則として初秋蚕期までに収穫し、残桑の見込み時には隔畦収穫とした。
  4. 桑園の肥培管理改善では、春切り作業の秋冬期処理を12月以降とした。また、肥料の代替としてブロイラー鶏糞を窒素施肥成分量の60%まで施用した。
  5. 廃条片付けの機械化を容易にするため、U字形枠を通路に配置した簡易蚕座を導入し、さらに、機械作業を容易にするため育蚕施設入口を改造した。
  6. 飼育管理の改善として、水盤利用による長期貯桑技術を導入し、4齢~5齢初期の貯桑が労働の平準化に有効であった。
  7. 省力上蔟法の導入による雇用労働の削減として、条払い自然上蔟法を採用し、動力条払機を中心とした上蔟作業の組立てを行った。
  8. 専用上蔟室を設置し、大型扇風機による通風換気及び早期排尿処理等による蔟中管理の徹底を図り繭質改善を推進した。
  9. 廃条処理の省力化はトラクター装着のマニュアフォークを利用して屋外に搬出し、堆肥化を図り桑園に還元した。
  10. 中・壮蚕施設と上蔟室を隔離し、多回育における蚕病防疫管理の徹底を図った。
  11. 桑収量からみた繭生産量の見込みは5.2トンで、粗収益12,547千円、経営費9,031千円で所得が5,993千円となり、47.8%の所得率が試算された。

[資料]交雑種比較試験成績(人工飼料育)、桑の発芽・発育調査(付・1989年気象調査表)

佐藤正昭・藤沢 巧・伊藤眞二

(摘要なし)

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