岩手県蚕業試験場要報 第8号

ページ番号1042213  更新日 令和3年4月23日

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稚蚕人工飼料への桑乾燥成形物の利用

橋元 進

 桑葉のへイキューバー処理によって得られた桑乾燥成形物の長期貯蔵技術を確立するための資料を得る目的で成形処理後の冷蔵効果および、保存包装材料について検討し次の結果を得た。

  1. 桑乾燥成形物を冷蔵保存した場合、毛振るい率は良好であるが3眠体重が軽くなる傾向であった。しかし、繭質および繰糸成績はさほど低下しなかった。
  2. 桑乾燥成形物保存中の包装材料について検討した結果、ガスバリヤー性フィルムに脱酸素剤、乾燥剤を併用することにより、保存中の変質が抑制された。

省エネルギー対策の育蚕技術

阿部信治・及川 論・菊池次男・河端常信

 省エネルギー暖房法としてポリフィルムによる蚕座被覆暖房、発酵熱を利用した蚕座加温およびマキ暖房を取り上げ暖房効果と経済性について検討した。

  1. 蚕座をとりまく最小限の空間をポリフィルムで被覆して暖房することにより、蚕舎全体暖房より約50%の燃料費が節減できた。
  2. 前蚕期の廃条を細断・堆積し、この発酵熱により蚕座加温を図った結果、蚕座温度は約2℃上昇した。
  3. 灯油暖房機とマキ暖房機(灯油併用)の経済性を比較した結果、マキ暖房機は燃料費が節減され、経済的に有利であった。

ビニールハウス利用による蔟器の簡易消毒 -太陽熱によるホルマリンくん蒸-

鈴木繁実・及川英雄

 蔟器の簡易消毒法として、液剤を散布せずにビニールハウスを利用して、太陽熱とホルマリンの組合せによる方法について、室内試験および実証試験を行い、次の結果を得た。

1 室内試験

  1. 50℃の高温処理ではホルマリンを加えなくてもウイルス不活化効果が得られたが、糸状菌には不十分であった。
  2. 5℃の低温処理でもホルマリンを加えるとウイルス、黄きょう病菌には効果がみられたが、こうじかび病菌には不十分であった。
  3. ホルマリンと温度処理による相乗効果が得られた。

2 ビニールハウスでの実証試験

  1. ウイルス病原には3日間以上の処理で消毒効果が得られた。
  2. 黄きょう病菌に対する消毒効果は得られたが、こうじかび病菌には、蔟器蔟片が閉じている状態では効果がなく、半開きおよび開いている状態では効果があるものの不十分であった。
  3. ビニールハウス内の温度は天候に左右され易く、晴天の日には高く最高50℃を記録した。ホルムアルデヒドガス濃度はハウス内温度と高い関係がみられた。

 以上のことから収繭直後、蔟器をビニールハウスに持ちこみ広げて積み重ね、晴天の予想される朝にホルマリン原液50ml/m3をロの広い容器(洗面器、カルトン等)に入れ、数ヵ所に配置し、ビニールハウスを密閉し約1週間保つことにより簡易消毒ができる。

葉タバコによる桑園のニコチン汚染とその対策(1)タバコ汚染桑のニコチン迅速検定法

八重樫誠次・鈴木繁実・及川英雄

 葉タバコによって汚染された桑葉中のニコチンを簡易に検出する方法を検討した結果、桑葉を熱湯処理して圧搾汁をとり、ガスクロマトグラフで分析する方法が簡便であり、約15~20分で検定することが出来た。なお、ニコチンの検定を、ケイタングステン酸による比濁法で実施した場合、精度は劣るが、0.1ppmまで検出することが出来、何れの場合も検定値が蚕の中毒症状とよく一致した。

葉タバコによる桑園のニコチン汚染とその対策(2)しゃへい物による桑の汚染防止

及川英雄・鈴木繁実・八重樫誠次

 タバコ畑または葉タバコ乾燥室に隣接する桑園について、しゃへい物によるニコチン汚染防止効果を検討し次の結果を得た。

  1. タバコ畑(白遠州)からのニコチンによる桑葉汚染は、7月下旬から始まり天葉収穫期の8月下~9月上旬がピークで、以後漸減した。なお春切桑は夏切桑より汚毒が強い傾向を示した。
  2. タバコ畑(タバコ乾燥室)と桑園の間に防風ネットまたは寒冷紗を設置し、あるいはタバコ畑に隣接する1畦目を春切無収穫として、桑葉の汚染防止効果を検討した結果、春切無収穫の実用効果が高かった。なお、タバコによる中毒蚕の回復は、軽症ではほとんど回復し、吐液した中・重症蚕は回復が鈍く繭質も劣った。

桑葉の着葉部位別の形態的な品種特性

壽 正夫・高木武人・境田謙一郎

 桑品種の発育特性を知る一環として、桑葉の着葉部位別に葉重と葉面積を測定し、形態的な面からの特性を検討した。

  1. 着葉部位別による葉重と葉面積を桑品種別にみるとしんいちのせ、ゆきしのぎ、剣持、あおばねずみ、しんけんもちでは15葉部位で最大となり、これより下部葉は順次小さくなる傾向が認められた。改良鼡返、一ノ瀬では着葉部位による一定の傾向は認められなかった。
  2. 中間伐採部位別による葉重、葉面積を桑品種別にみると、植付2年目の100cm残中間伐では葉重、葉面積ともゆきしのぎ>剣持>しんいちのせ>一ノ瀬>改良鼡返であった。80cm残中間伐採の葉重ではゆきしのぎ>剣持>しんいちのせ>改良鼡返>一ノ瀬で、葉面積ではゆきしのぎ>しんいちのせ>剣持>改良鼡返≧一ノ瀬であり、改良鼡返、一ノ瀬と比較し他の品種では優った。植付7年目のあおばねずみは改良鼡返と比較しいずれも優る傾向を示した。植付8年目のしんけんもちは改良鼡返と比較し、伐採部位における葉面積は小さかったが葉重は重かった。特に、あおばねずみ、しんけんもちの春切枝条では、他の品種に比べ枝条基部から80~100cm部位より上部葉で葉重が重く、晩秋期における中間伐採収穫によって多収性が発揮されるものと考察した。

2年生古条伏込みによる密植桑園の簡易造成

壽 正夫・高木武人・境田謙一郎

 密植速成桑園は、桑苗が普通桑園の3倍以上必要とするので、造成経費をできる限り節約するために桑苗を使用しない造成方法として、1年生古条を用いた古条伏込みの造成方法が行われている。しかし、1年生古条では桑品種によって活着率が劣る等問題点がある。そこで株上春切桑樹の2年生古条を利用して密植促成桑園の造成法について検討した。

  1. 古条別の活着率では、2年生古条が約40%も高い活着率を示した。
  2. 解体調査による生育状況では、2年生古条は、古条の枯死長が短かく、平均発条数が多く、平均枝条長も長かった。また、古条別根量・枝条量・葉量等も全て高い値を示した。
  3. 古条別発条部位および発条割合では、両古条とも先端10cm部位の発条割合が高く、特に、2年生古条では先端部の前年再発分岐部の発条が旺盛であった。
  4. 古条期発条部位および平均枝条長では、両古条とも発条割合の高い先端部ではやや短かかったが、2年生古条の枝条長は、各部位とも1年生古条より長かった。

 以上の結果から、2年生古条を利用した密植速成桑園の造成法としては、2年生古条の先端再発分岐部の発条割合が高ことから、この部位を千鳥型に組合せた2本並べ伏込み方法によってより効率化が図られるものと思われる。また、活着率の劣る桑品種では、2年生古条を利用することによって活着率の向上が期待できるものと推察した。

山系地域における夏秋蚕を主とする栽桑技術

小田喜代治・亀卦川恒穂・大津満朗・都築 誠・佐々木敬治・橋元 進

  1. 山系向桑品種の栽培
     山系向桑品種の仕立と収穫法を検討するため、ゆきしのぎと剣持を用いて主幹の高さ別(30・50・70cm)の生育および収量を検討した結果、枝条長の差は認められなかった。
     枝条数および、収量は主幹の高い方が多い傾向を示した。夏切桑の収量は、剣持に比べゆきしのぎが多く、春切桑では剣持がやや多い傾向を示した。
     蚕期および収穫時期を検討するため、ゆきしのぎを用いて時期別収量を検討した結果、春蚕期の時期別(6月20日、6月30日、7月10日)収量は10日遅くなるにしたがい約20%の収量増となるが、晩秋蚕期に再発枝の収量を加えると、いずれの時期に収穫しても同程度の収量となった。
     夏蚕、秋蚕の時期別(7月20日~9月10日)基部20cm残し収穫では10日遅くなるにしたがい約2%の増収となり、また晩秋蚕に再発枝を収穫できる時期は8月10日が限度であったが、両者を加えると8月20日の収量とほぼ同程度であった。
     晩秋蚕期に基部1.0メートル残し収穫(8月20日、8月30日、9月10日)では10日遅くなるにしたがい約10%増収となった。
  2. 収穫体系の確立
     標高の異なる現地3ヵ所と蚕試一戸桑園を供試して、標高別(230・340・420・460メートル)生育と収量を検討した結果、標高が高くなるにしたがい生育が劣り、収量も少なくなる傾向であった。
     植付1~2年目のポリマルチの効果は高標高地の方が大きかった。
     ゆきしのぎの晩秋蚕期中間伐採程度別(60、80、100、120cm残)の収量は残枝条長の短い程多いが、翌春蚕期の収量をそれぞれ加えるとほぼ同程度の収量であった。
     標高別の収穫体系として、中標高地向二春一夏輪収法と、高標高地向一春一夏輪収法の2体系を組立て、蚕期別収量を検討した結果、両体系とも期待値の収量が得られた。
  3. 養蚕技術体系の確立
     標高別の夏秋蚕を主とする養蚕技術体系を確立するため、二春一夏輪収法の桑園、および一春一夏輪収法の桑園を用いて飼育試験を行なった結果、中標高向の年3回飼育および高標高向の年2回飼育とも、各蚕期の4~5齢経過日数・蚕作とも期待値と大差なく、また繭糸質も良好で、飼育・上蔟の時期的環境において特に問題はなかった。

除草剤グリホサートのササ防除効果と桑に対する影響

境田謙一郎・壽 正夫・高木武人

 桑園のササ防除草剤として、グリホサート剤の処理方法および桑に対する影響等について検討を行ない、次のことが明らかになった。

  1. ササを刈払って再生したものは茎長も低く薬剤処理が容易で枯殺効果も高まった。
  2. ササを刈払い当日薬剤処理では、無刈払処理に比べて薬液の接触面の少ない地際刈払処理効果が劣ることから、この刈払処理は30cm程度が上限と思われた。
  3. 桑に対する影響は、着葉時散布では殆んどの桑株が枯死し、無葉時の散布でも枯死枝や異常発芽枝条を多くすることから桑樹に飛散しないよう注意して散布する必要がある。
  4. 本剤の着葉時の散布による枯死株は、1年経過後の抜根抵抗が60kg程度で人力による抜根も容易なことから、密植桑園の改植に利用が可能と思われる。
  5. 現地で実証したササ刈払い再生後の秋冬期処理で、高い効果が認められたことから、桑株への影響が少ない秋冬期処理は実用的な方法と思われた。

傾斜地桑園における土壌改良法(第1報)-有機物マルチによる下層土改良効果-

八重樫誠次

 無耕うん桑園における土壌管理技術として、鉱質土壌の傾斜地桑園において、石灰施用と有機物マルチの組合せによる土壌改良効果を検討したところ、根系の発達や下層土養分状態の改善効果がみられ、桑の増収が得られた。マルチ資材としては、イナワラ牛厩肥、オガクズ・モミガラ牛厩肥が効果的で、とくにオガクズ・モミガラ牛厩肥マルチでは、残留が多いため毎年施用の必要がなく、雑草発生が少なく、下層土改善効果および桑の増収効果ともに大きかった。

クワ胴枯病菌柄胞子の雨水による飛散とマルチによる飛散防止

鈴木繁実・及川英雄

 クワ胴枯病菌柄胞子の伝搬経路および本病の圃場衛生的予防法の可能性を検討するため、柄胞子の雨水による飛散消長とマルチによる飛散防止効果について調査し次の結果を得た。

  1. 柄胞子の飛散は、6月上旬から認められそのピークは降水量に左右されたが、春切桑園では5月下旬から7月下旬、夏切桑園では夏切直後の6月下旬から7月下旬であった。その後漸減し9月以降はほとんど飛散が認められなかった。
  2. 柄胞子が雨水により跳ねあがる高さは10cmまでが多く、それ以上の高さでは少なかった。
  3. 柄胞子の飛散は桑葉の繁茂と密接な関係が認められた。
  4. 稲わらおよびポリフィルムでクワ株をマルチすると柄胞子の飛散防止効果が大きく、翌春の胴枯病被害率を軽減できた。

[資料]交雑種比較試験成績、桑の発芽・発育調査(付・1982~1983年気象調査表)

阿部信治・及川論・境田謙一郎・大津満朗

(摘要なし)

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