岩手県蚕業試験場要報 第5号

ページ番号1042293  更新日 令和3年4月26日

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桑樹の樹勢更新 -桑の株下樹勢更新におけるポリマルチとその後の生育-

都築 誠・高木武人・佐々木敬治・川村東平

 桑の樹勢更新をはかるため、株下樹勢更新におけるポリマルチの効果、株下の時期と労力、株下げ後の年次別収量の推移について検討した。

  1. 桑樹の主幹を地際部で切断し株下げを行い、そのままとしたものに比べ、直ちに株元をポリマルチしたもの、新梢が30cm位生育したとき土寄せをしたもの、土寄せ後にポリマルチしたものはいずれもその後の生育が優れ、特に土寄せ後ポリマルチしたものは、枝条長が長く、1~2年目の収葉量が多く、寒枯れ発生程度も少なかった。
  2. 株下げ時期について、春発芽前と夏切り後の実施を比較した。春発芽前に行うと発芽生育した枝条が長く、条径も太かったが条数には差がなかった。株の早期形成には春発芽前の株下げが望ましい。
  3. 株下げの主幹切断を剪定鋸で行うと、10アール当り25.5時間を要した。改植作業は10アール当り126.2時間かかるのに対して、株下樹勢更新は土寄せポリマルチを含めて35.8時間で改植の28.4%でよい。
  4. 株下樹勢更新後の年次別収量の推移は、10アール当り葉量でみると株下げ当年489kg、2年目715kg、3年目は2,252kgと順調に増加し、株下げ3年間で改植5年目とほぼ同等の収量が得られた。

稚蚕人工飼料育に対する現行蚕品種の適合性について

壽 正夫

 稚蚕人工飼料育では、蚕品種によって飼料に対する適合性が異なることが指摘されていることから、現段階において稚蚕共同飼育所への人工飼料育導入に際し考慮しなければならない一つの要因と考えられる。そこで、県内で掃立てられている主な夏秋蚕用品種について飼料に対する適合性を検討したが、人工飼料適合性品種として認められていない蚕品種では、稚蚕期における蚕児の生育が不斉となり、減蚕歩合も高くなり単位当たり収繭量も少なくなる。
 しかし、人工飼料適合性品種として認められている蚕品種であっても品種によって適合性が異なることから、更に人工飼料適合性品種の育成ならびに人工飼料組成の強化等が望まれる。又、現段階での稚蚕共同飼育所への人工飼料導入に際しては蚕品種の選定には注意を要するものと推察されることから、蚕品種の適合性について更に検討したい。

箱当たり収繭量増収に関する現地実証

河端常信・中村勇雄

 養蚕農家を対象に箱当たり収繭量の増収技術を総合化して飼育し慣行法と比較した。

  1. 増収技術としては給桑量の適正給与、5齢初期よりの薄飼い、幼若ホルモンの利用、条払い自然上蔟法の導入等を体系化して農家に示し慣行法と比較した結果、増収区の経過日数は延長し、給桑量も7%多かったが繭重は8%重く、箱当たり収繭量は11%程度増収した。箱当たり繭価額では15%向上し、金額では慣行に比べ8,200円程度高かった。
  2. 箱当たり収繭量の農家間較差は大きく最高低較差をみると慣行区で春27%、晩秋12%、増収区では春17%、晩秋18%であった。又地区内農家の蚕期別箱当たり収繭量の変異係数は春16%、初秋9%、晩秋10%と大きかった。したがって改善技術導入には農家間較差を少なくするような指導が必要と推察した。
  3. 箱当たり収繭量と繭重との間には正の相関がみられた。しかし蚕期を重ねるごとに屑繭、死繭歩合が多くなり蚕作の及ぼす影響が大きかった。試験対象農家ではとくに黄きょう病に起因する繭中斃蚕が多発しているところから、これの防除が今後の課題であった。
  4. 催青から稚蚕共同飼育の掃下し時までの卵数および蚕児頭数を追跡調査した結果、管理状況は良好で孵化歩合もよく、遺失蚕歩合は5%程度であった。
  5. 上記の試験結果を基礎にして箱当たり収繭量の増収技術内容を確定し、実施上の留意事項を付記した。

合成幼若ホルモン剤(R-20458)の投与効果

河端常信

 新しく開発された合成幼若ホルモン剤(R-20458)を蚕に利用した場合の効果についてマンタRの場合と比較検討した。

  1. R-20458剤の使用濃度は高濃度ほど増繭効果は高かったが、10ppm液の蚕体塗布では2~3%の半化踊蚕がみられて健蛹歩合を低下させること、5ppmと2.5ppm液の増繭効果では大差ないところから実用的には2.5ppm液が適当であると推察した。
  2. R-20458剤の蚕体への経皮散布時期を5齢餉食後48~72時間目にすることによって飼育経過を約1日延長し、繭重・収繭量は平均で7~11%増大させるが、給桑量は10%程度多く要した。増収効果をマンタRと比較すると差は少ないが、散布時期の幅はやや広いのではないかと推察された。
  3. 幼若ホルモン剤(R-20458およびマンタR)の利用によって生糸量歩合の向上を図ることはむずかしかったが、収繭量が増収するので箱当たり繭価額は無散布区に比べて4~8%向上した。
  4. 機械飼育でR-20458剤を利用しても条桑育同様に繭重重く、収繭量増収に効果があった。この場合の散布時期は48時間目前後で効果が高かった。
  5. 上記の成績からみてR-20458剤は現在普及しているマンタRにほぼ匹敵する効果が認められ、使用上の留意事項はマンタRの場合に準ずると考察された。

消石灰による多核体ウイルス不活化ならびに蚕室土面消毒効果

鈴木繁実・及川英雄

 消石灰乳による多角体病ウイルス不活性効果と消石灰と水による土中CPVの消毒効果を検討し、次の結果を得た。

  1. NPVは消石灰乳の200倍・30分間の浸漬処理により不活性化された。CPVは200~400倍・120分~20時間の浸漬処理により不活化された。
  2. 消石灰1kg/3.3m2を土壌と混合後水を7.5リットル/3.3m2以上散布することにより地表下2mmの深さのCPVを不活化したが、5mm以深では効来が認められなかった。
  3. 消石灰による蚕室土面の消毒技術について考察した。

岩手県における黄きょう病の発生とその防除に関する試験

及川英雄・鈴木繁実

 蚕の黄きょう病について、岩手県における発生実態、カイコへの感染時期、蚕体蚕座の消毒による防除効果、ベッコウハゴロモの薬剤による防除効果を検討した。

  1. 1976年の晩秋期に県南部の数戸に黄きょう病の発生が確認され、以後被害が漸増の傾向にある。
  2. 現地における黄きょう病の発生状況は共通的であり、上蔟後不結繭蚕の形で発症し、蔟中から繭中で斃死した。
  3. 本病の発生地帯には、桑園にベッコウハゴロモの黄きょう病罹病死体が確認され、一部にはクワノメイガ幼虫の罹病死体も採集された。これら罹病死体から分離した黄きょう病菌は、何れもカイコに対して強い病原性を示した。
  4. 黄きょう病菌による汚染桑を、カイコの齢期別に給与した結果、1齢期と5齢初期の給与区が発病率高く、2~4齢期は低かった。
  5. 黄きょう病菌による汚染桑は、ほ場において汚染後10日目まで高い病原力を示し、20日後でも若干の病原性を示した。
  6. 黄きょう病菌による汚染桑を、カイコに連続給与しながら、キヌボン、カビノラン、消石灰等による蚕体蚕座の消毒を試みたが、毎給桑前の消毒でも充分な消毒効果が得られなかった。
  7. 桑園のベッコウハゴロモに対して、ダイアジノン、ジブロム、PAPの各乳剤1,000倍液散布が高い殺虫効果を示した。

粒剤(FUIN-II粒剤)による紋羽病防除試験

及川英雄・鈴木繁実

 FUIN-II粒剤について桑の紫紋羽病および白紋羽病跡地消毒効果および桑に対する薬害を検討した。

  1. 紫紋羽病および白紋羽病の罹病株を抜き取った跡地へ、FUIN-II粒剤を4m2当り400または600グラム処理した結果、顕著な消毒効果を示した。
  2. 消毒後1ヶ月目に桑苗を植付けた場合1回のみのガス抜きでは桑に対して強い薬害を示したが、2回以上のガス抜きでは影響がみられなかった。なお秋処理、春植では1回のガス抜きで桑への薬害は全く無かった。

冬期間におけるクワ生枝圧搾汁液の屈折率の変化と品種との関係

鈴木繁実・八重樫誠次・及川英雄

 クワ生枝圧搾汁液の屈折率の冬期間における変化をゆきしのぎ、剣持、改良鼠返の3品種を用いて検討し、次の結果が得られた。

  1. ゆきしのぎ、剣持の屈折率は2月から4月にかけて低下したりのに対し、改良鼠返では1月から3月と前者より早い時期に低下した。
  2. 屈折率は2月と3月において品種間差異が認められた。

苦土欠乏症状の桑品種間差異

八重樫誠次

 桑の苦土欠乏について、症状発現の品種間差、改良資材利用による症状の回復程度を調査し、次の結果を得た。

  1. 置換性苦土が少なく、苦土・カリ比の低い土壌において、苦土欠乏症状の発現に桑品種間差が認められ、ゆきしのぎ、かんまさり、しんいちのせ等は症状を発現しやすく、あさゆき、剣持、新桑2号等は症状を発現しにくいように思われた。
  2. 上記の桑園に土壌改良資材を施用したが、通常の苦土施用量では、症状発生率の高かったしんいちのせ、一ノ瀬、かんまさり等は症状回復に2ヶ年を要した。

[資料]桑の発芽・発育調査、交雑種比較試験成績(付・1978~1979年気象調査表)

境田謙一郎・佐々木敬治・壽 正夫

(摘要なし)

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