岩手県蚕業試験場要報 第1号

ページ番号1042353  更新日 令和3年4月26日

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岩手県における桑の栽培限界とその制限要因について

菊池宏司・田口恒雄・及川直人

 岩手県における桑の栽培限界を知る資料を得ようとして試験した。桑品種は剣持、かんまさり、あさゆき、ふかゆきを供試し、岩手県でも特に寒冷地帯や積雪の多い地帯の3ヶ所で試験した。
 その結果、2試験地は供試桑品種での慣行的な栽培では不適当であり、1試験地は栽培方法や経営の方法などさらに検討しなければならない問題点を残しているが、一応その限界ではなかろうかと思われる。
 これらの試験地では、主として9月下旬から10月上旬の低温が故障株の多発に影響したと考えられる。他に標高、5月上旬の気温、年極低温など桑の栽培の限界点を示す要因となりうるであろう条件も上げられるが、これらの点についてはさらに検討しなければならないと思われる。

耕転機用条桑刈取機の使用法と能率

石亀英徳・及川直人

  1. 本県のような積雪寒冷地において5~6回の多回育を行う場合、春蚕1期、春蚕2期の2蚕期は前年の春切枝条を伐採するので枝条が太いためピアノ線を駆動する羽根棒の抵抗が大きすぎると止めピンが飛ぶことがあり、また枝条の切断面に割目を生じることがあるので、切歯の切味を改善する必要があるものと思われる。
  2. 本機と収量との関係でとくに夏蚕期の矮小枝、横臥枝は刈残され、そのまま収量に影響があるので仕立、桑品種の選定とともに本機の案内棒の一部改善することにより矮小枝、横臥枝を起しながら刈取を可能にするか或は他機種の開発が必要ではないかと思われる。
  3. 仕立については本機の性能よりみてできるだけ低幹が望ましいが、本県のような積雪寒冷地では、胴枯病予防、結束を考えた仕立の検討が必要ではないかと思われる。
  4. 本機の費用については、平坦においてもクローラを装着することにより直進性、安定性が一段と優るので作業が容易になり、疲労度が軽減されるのでクローラの常備が必要ではないかと思われる。

粗砕苦土石灰石、石灰石による酸性土壌改良試験

引地栄一・石亀英徳

 強酸性の腐植質火山灰土壌について粗砕苦土石灰石、石灰石による酸性土壌の改良試験を実施し、改良資材の種類と量について下層土の土壌の塩基状態および桑の収葉量を調べたほか施用後における土壌中の留存量を明らかにし効果の持続年数を類推した。

  1. 試験地は典型的な強酸性、リン酸固定力の強い腐植質火山灰土壌であったが桑収量および土壌の塩基状態からみて改良資材施用の効果を認めた。
  2. 苦土石灰石と石灰石の種類別に比べると、それぞれの粒度、硬軟および成分の相違により差がある。本試験の場合、苦土石灰石は石灰石に比べて成分上苦土分が多かったこと、粒度が大で溶解が緩やかであったことなどにより土壌塩基が適正に維持された結果、桑の収量が増加したものと思われる。したがって、石灰石施用の場合は粒度の決定と施用量および苦土分の補給について考慮する必要がある。
  3. 下層土の塩基状態は年を追う毎に僅かであるが改善されたが腐植層の厚い土壌は下層土への滲透が認められた。
  4. 苦土石灰石の粒度別では5mm以下、3mm以下とも桑収量および土壌の塩基状態は施用後5ヶ年間では殆んど差がなかった。
  5. 効果の持続年数については今後の検討をまつほかないが粗砕苦土石灰石(5mm以下、3mm以下)の場合施用後5年でおよそ27.4%の消費なので少なくとも16年以上は持続出来るものとおもわれる。
  6. 粗砕石灰石類は造成時に相当量必要となるので輸送コストの低下について共同購入や近距離の産地開拓など検討する必要がある。

寒冷地における壮蚕露天育の技術と経済性(1)ユニコンテナ飼育装置利用による露天育について

大塚照巳・河端常信

 壮蚕の露天育は、資材と施設が少なく、投下労働も少ない特徴をもっている。しかし、低温時と連続降雨時の取り扱いが問題点として指適されている。そこで養蚕用資材も新しいものが開発されてきたので、ユニコンテナ飼育装置を用いて露天育を実施した場合、気象条件に対応した飼育技術・経済性について検討した

  1. ユニコンテナ飼育装置を用いて、1日1回、2回給桑および無除沙体系として試験を実施した。
  2. ユニコンテナ飼育装置は200cm×70cmの耐水ダンボール板で、これを連結・固定する鉄ピン・鉄輪だけの簡単な装置であり、各6ケで1セットになっており、0.5箱飼育できる。
  3. 飼育要領は原則として県飼育標準表に準じた。
  4. 各蚕期とも飼育中の降雨日数が多く、晩秋蚕期は飼育日数の60%近くが雨降りであった。また、春・晩秋蚕期では10℃以下になる日もみられた。
  5. 経過日数は、各蚕期ともユニコンテナ区と対照区とは差がなかったが、春・晩秋蚕期の慣行区は対照区より約1~2日延長した。減蚕歩合は初秋蚕期のユニコンテナ区がやや多く、繭質については各区間に大きな差はなかった。
  6. 萎凋率は各蚕期とも露天育区は屋外ハウス区よりも高い傾向を示した。
  7. 蚕体重増加率はユニコンテナ区は各蚕期とも対照区より小さかった。
  8. 飼育蚕座内外の温度の推移によると、夜間、ユニコンテナ区>外温、ユニコンテナ下部>上部>中部でありとくにユニコンテナ区は外温より6~10℃高かった。
  9. 飼育労働時間では、初秋蚕期は対照区に比ベユニコンテナ区が10~30%節約されたが、晩秋蚕期は露天育区はいずれも作業時間が多くかかった。
  10. 経営収支試算によると、露天育区の粗収入は対照区の85~90%であり、差引収益では対照区に比ベユニコンテナ1日1回給桑区は-13%、2回給桑区が-27%であった。1日当り労働報酬についてはユニコンテナ1日1回給桑区と対照区と大きな差はなかった。

土室育における給桑回数節減に関する試験

菊池次男・都築 誠

 土室育における1~3齢期の給桑回数を、従来の1日3回給桑から1日2回給桑に減じた場合の蚕児に及ぼす影響について試験した。

  1. 土室育において1~3齢期に1日2回給桑した場合、1日3回給桑に比べ3眠の蚕体重がやや軽くなる傾向を示したが、蚕児の経過、減蚕歩合、3齢起蚕絶食生命時数および収繭、繭質には差異がみられず蚕児に及ぼす影響は認められない。
  2. 土室育においての1日2回給桑は作柄に影響なく飼育が可能であることを報告したが、3齢期の1日2回給桑は1回に与える桑の量が多く、蚕箔からあふれるばかりでなく、蚕箔の出し入れの際には給与桑がかき寄せられて蚕座むらが生ずる場合があるので給桑および蚕箔の出し入れには注意する必要がある。

無電気式温度調節器付LPガスバーナーによる養蚕用簡易ハウスの暖房法と経済性

河端常信・大塚照巳・高木武人

 無電気式温度調節器を試作し、これを従来市販されているLPガス・バーナー(KO2型)にとりつけ壮蚕用簡易ハウスの暖房用として利用できるか否かについて実用的視点から検討し次の事項を明らかにした。

  1. 無電バーナーにとりつけた調節器はダイヤフラムの作動でパッキング・ピンが弁を押しガス量を調節しており、弁が閉じた場合でも少量のガスを流すバイパス回路を設けてあり15℃~50℃の範囲で温度調節が可能である。
  2. 簡易ハウス(100m2)の通路上にバーナー3個を配置して補温効果を調べた結果、室内と外温との温度較差は平均+4℃であり、目的飼育温度保持は容易で、温度調節器も有効に作動した。
  3. 温風暖房機補温に比べて虫繭質には差はなく、飼育経過は短縮した。LPガス暖房ではハウス内濃度は高い傾向があり、蚕児食桑には(+)の方向に作用するが、上蔟中保護には(-)の方向に働くものと考察した。
  4. 無電バーナー暖房は直熱方式のため温風の水平拡散は速く温度の水平分布は均一であるが、熱は上方に拡散し蚕座の上下段差の温度較差は2℃と大きい。このため中天弁の設置や空気攪拌の処置が必要であろう。
  5. 暖房経済についてみると単位時間当りの消費燃料は灯油暖房に比べLPガス使用ではやや割高である。しかし現地協業における煉炭利用に比べるとLPガス暖房では10%程度経済的であった。
  6. 春・晩秋蚕期に外気温が10~15℃と極端に低下する高冷地の協業養蚕ハウスに無電バーナーを導入した場合外気量が15℃以上であれば室内を20℃以上に保つことは容易であった。しかし3齢桑付から上蔟4日目までに使用したガス量は平坦地の2.9倍を要した。したがって単価の高いLPガスを使用する遠隔地では、施設の補温性を厳重にしないと経済的にみて問題があることを指摘した。
  7. 無電バーナーについては更に安全器のとりつけなど改善を要する点も見られるが、使用が簡便で耐久性があること、移動が容易であることなどから十分実用に耐えるものと判断した。

養蚕用簡易ハウス土面の簡易舗装法

河端常信・大塚照巳

 養蚕用簡易ハウス内の床面は大部分が土面であるため、経費も安く、施工も簡易な簡易舗装法について検討した結果次の点を明らかにした。

  1. セメント袋の大きさで固形として市販されている甲-ブローン・アスファルトを使用し、下敷材としてピロシートと化繊寒冷紗(又はピロシートと金網)を用いて舗装すれば、小規模ハウス土面の簡易舗装法として適当である。ブローン・アスファルトは蚕児に対しては無害である。
  2. 大規模ハウス床面の簡易舗装法としては家庭用アスファルトとして市販されているレミファルトが有望であると判断した。

クワヒメゾウムシの薬剤防除試験

及川英雄・鈴木繁実

 クワヒメゾウムシ成虫に対してペスタンD粉剤、DEP粉剤、ペスタン乳剤およびエルサン乳剤を用いて防除効果の検討を行い、次の結果が得られた。

  1. 直接虫体に薬剤を接触させた虫体散布および虫体に直接薬剤を散布しない桑枝散布において、ペスタンD粉剤、ペスタン乳剤1,000倍およびエルサン乳剤1,000倍がすぐれた防除効果を示した。
  2. 桑枝条の樹皮下に潜伏している成虫に対して、いずれの薬剤も効果が認められなかった。
  3. 春期発芽期および夏切後の圃場試験において、粉剤ではペスタンP粉剤が有効であり、液剤ではエルサン乳剤1,000倍がすぐれた防除効果を示した。

蚕ぷん・蚕沙・廃条からの蚕病病原体飛散

及川英雄・鈴木繁実・高木武人

 蚕のこうじかび病菌および細胞質型多角体ウイルスについて、蚕ぷん・蚕沙・廃条からの飛散状況を検討した。

  1. 蚕ぷん・蚕沙からのこうじかび病菌飛散距離は25メートルまで濃厚に認められ、50~100メートルまでキャッチされた例があった。また経時的には蚕ぷん・蚕沙放置後30~50日後まで飛散がみられた。
  2. 作業従事者の衣服に付着したこうじかび病菌は、30日から50日間脱落しないことを確かめたが、衣服の洗濯によって菌が洗い落され、あるいは菌量が減少した。
  3. TCPの飛散範囲は比較的小さく、蚕ぷん・蚕沙・廃条から5メートル以上離れた桑葉には罹病性が認められなかった。
  4. TCPによって汚染された桑葉の起病力は、屋外(夏期)において20日で消失した。

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