岩手県立農業試験場研究報告 第19号

ページ番号1041651  更新日 令和3年4月14日

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水田利用の近代化に関する研究

佐々木信夫・千葉満男・平野 裕・米沢 確・高野文夫・清原悦朗・大川 晶・佐々木武虎・岡島正昭・佐々木忠勝・伊藤吉郎・小沢栄二・黒沢順平

 透排水性不良で低温・寡照な東北地方南部太平洋岸の沖積平坦地水田において、基盤改善を軸とする透水性附与とそれによってもたらされる高登熱性・省力高生産性稲作について研究した。得られた結果について要約すれば次のとおりである。

  1. 基盤としての沖積平坦地水田は低湿環境にあり地下水位が高く稲作期間には-25cmぐらいまで上昇し、土性が細粒質かつ粘質で膨凋性の2対1型粘度鉱物よりなり耕盤層以下に10-6~10-7の透水係数の小さい層位があり難滲透性をなしていた。
  2. この基盤を明渠を施工し、強制排水によって地下水位をさげ、作土の代かき分散を逓減させることによって透水性を附与させることができ、経年の構造亀裂の発達と相侯って相当の重粘な土壌領域にまで透水性を附与することが可能であった(暗渠等との関連)。その際の降下滲透は負圧滲透を示し経年により連動が速やかとなってきた。
  3. 代かき分散逓減による日減水深の傾向は代かき3回(ロータリー)7~15mm、代かき1回(ロータリー)10~35mm、代かき1回(ハロー)30~70mm、無代かき100~250mmであった。なお無代かきでは経年で増大してきた。
  4. 水管理の方法、とくに中干し又は中干+間断潅漑によっても透水性を増大させることができ、その透水量は常時湛水10~15mm、更新潅漑15~25mm、間断潅漑20~30mm、中干し20~40mmであった。
  5. 透水性附与に伴なう高生産稲作のための栽培期間中の好適な土壌動態の領域を明らかにした。とくに中干し期pF水分を2.0~2.4で10~15日とし、その後の水管理をpF1.8以下の間断潅漑とすることが根圏の活力向上と高登熟性および落水後の地耐力獲得に有利であることが明らかになった。
  6. 落水後の地耐力はコーン指数で1週で3.0、2週で4.0、3週で5.0kg/m2と緩徐に高めてゆくことが重要であることが知られた。急激な過乾は登熱性阻害をひき起すためである。
  7. 透水性の附与により経年の土壌の理化学性には夫々特徴的な変移が認められた。とくに無代かきにおいて耕盤および下層土の透水系数が10-5から10-4オーダーと大きくなり、塩基類も10~50mmの透水量の範囲ではあまり明らかな変化は認められないが50~100mmないしそれ以上の透水量になると作土から塩基類やFe2O3、Mn2O3の下層への溶脱傾向が認められた(5年後跡地)。
  8. 水管理でも透排水操作のきびしい処理区ほど土壌腐植の減耗の方向をとりFe2O3、Mn2O3が鋤き床層下に移動する傾向が示された。MgOもやや低減する傾向が認められた。
  9. 透水性附与に伴なう地力増強方策として燐酸、加里、珪カル、堆肥等の増施によりそれぞれの養分が蓄積富化する傾向が明らかに認められ、土壌窒素発現能も明らかに増進してくるので透水性を附与した際の地力維持増強の方策が実用性があることが実証された。
  10. 透水性附与は、代かき逓減による苗の支持力低下には稚苗機械移植で対応でき、その後は根圏の活力が向上し、珪酸吸収が増大し、Mn/Fe比が大となり収量水準が高まり、産米の品質が向上し、施肥の好適領域が拡大され、稲作の安定化に大きく寄与する結果がえられた。およそ106%以上の増収がえられた。
  11. 寡照条件下での登熱性には品種の遺伝的特性と環境条件の改善が支配することが知られた。供用品種のうちではふ系72、トヨニシキが好適し、今後の品種選抜の方向性が示され、環境条件では根圏の活力に関与する水管理が効果が大きいことが明らかとなった。
  12. さらに寡照を人為的な遮光により出穂前および出穂後等に各段階を設定して水稲の登熟性をみたところ、出穂前40日間の遮光は乾物生産が抑制されその程度は葉鞘>茎>穂>藁の順でNAR、CGRが低下した。また出穂後20日間の遮光は同化産物の生産が低下し、穂への同化産物の配分が抑制され顕著に減収することが知られ、登熟後半の遮光はあまり影響が認められなかった。このように寡照の発現する時期が水稲生育のどの段階時期に当るかによってそのマイナスの影響度が異なることが知られた。
  13. このような寡照は水稲の光合成能の低下を来たし低収となるので、水稲体および根圏の活力を向上させ光合成能のレベルアップを図る必要があり地下水位低下、中干しとその後の間断潅漑などの水管理、および透水性附与によって水稲の根圏の活力が向上し生葉の老化指数が低減して葉の同化能が高まり、かつ同化産物としての炭水化物の転流能が大となり穂部への澱粉集積量が増大し、増収してくることが確証された。そして産米の品質も向上してきた。
  14. これらの成果を省力機械化稲作へと発展させ、稚苗機械化高生産稲作技術体系を30アール水田にて実用化組立て試験を行なった。その結果10アール当り延作業時間は、37.71時間で玄米収量は630kg前後であった。さらに機械・防除・除草方法の改善により延作業時間を30~3時間程度にさげることが可能である。
  15. なお乾田直播機械化栽培体系についても検討したが作業時間は32.7時間と省力的で30時間を割ることが可能であるが、気象限界地帯での乾直は低収性・不安定性・物財費高・透水調節等の問題もあり今後更に検討を要する。
  16. 実施した稚苗機械化技術体系の生産費は40ヘクタール規模において玄米60kgあたり1次生産費は2,588円(昭和47年物価指数)で、県平均の50%以下でその10a当り投下労働時間は81.25時間となり、すこぶる効率的な生産が可能であることが認められた。
  17. 以上、透水不良・寡照な沖積平坦地水田では基盤改善を軸とする透水性附与とそれにともなう地力増強、肥培改善、地耐力増大による機械力導入により省力高生産稲作技術が確立された。

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