岩手県立農業試験場研究報告 第14号

ページ番号1041659  更新日 令和3年4月14日

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岩手県下の火山灰土壌の分類とその生産増強対策

黒沢順平

(摘要なし)

岩手県地方の放牧地において牛を加害するアブの種類とその寄生消長

長谷川 勉・千葉武勝

 岩手県地方で放牧牛を加害するアブの種類とその寄生消長を、1967、1968の両年、外山、沢内、滝沢の3調査地で畜体からの掬い取り法によって調査した。その結果、3調査地を通じて5属25種のアブ類発生を確認した。各調査地別にみると沢内で22種、外山で19種、滝沢で14種であった。

 各種類の発生割合をみると外山および滝沢の両地ではタイワンシロフアブ、アオコアブの2種が多く、その他の種類はいずれも少なかったが、沢内では両種に加えて大型種のアカウシアブ、アカアブ、カトウアカアブ、中型種のシロフアブなどの各種も多く、これらが優占種群を構成していた。

 各種類の畜体への寄生消長は調査地点間でほとんど差異がなく、多くの種類ではその盛期は7月中旬から8月中旬の間にしめされていた。この結果から、当地方において放牧牛を加害するアブ類の防除に成虫対策をとる場合、とくに7月から8月にかけての寄生量抑圧の方法を検討すること、あるいはこの時期放牧牛をアブの加害から回避する方法の検討が必要なことを提唱した。

岩手県に分布するネキリムシの種類と幼虫期における鑑別の要点

千葉武勝・長谷川 勉

  1. 岩手県においてネキリムシとしての被害発現種としてトビイロヤガ、ムギヤガ、タマナヤガ、カブラヤガ、センモンヤガ、オオホソアオバヤガおよびシロモンヤガの7種類が確認された。
  2. トビイロヤガ、ムギヤガおよびオオホソアオパヤガの3種の老熟幼虫の形態を記載した。
  3. センモンヤガを除いた6種類のネキリムシ類幼虫について形態学的に比較検討した結果、皮膚の表面の構造、頭部斑紋および刺毛、胴部刺毛位置および刺毛硬皮板等に種類としての特徴が見いだされたのでそれらの特徴をもとにして簡単な検索表を作成した。

水稲直播栽培技術の確立に関する研究

米沢 確・菊池忠雄・渡部 茂

 水稲直播栽培技術の確立を指向し、湛水直播乾田直播それぞれの問題点を解明しながら、その解決の方法について検討したが、その結果を要約すると、次のとおりである。

  1. 直播栽培様式
    1)湛水切りかえ前における乾田直播田の地温は、気温の影響を直接受けて放熱が大きく、湛水直播田にくらべ、夜間はかなり低く経過し、また日の出後の地温上昇は、湛水直播より早いが、午後の下降も早く、最高地温も湛水直播田なみであり、総体的に地温は低く経過する。
    2)幼芽伸長期における地温の差異によって、乾田直播稲の初期生育は、湛水直播よりおくれ、出穂期も遅延するので、気象的条件からすれば、乾田直播より湛水直播は有利であり、気象条件からみた適応範囲も広い。
    3)乾田直播および折衷直播田の透水量は、湛水20日ぐらいの間は、湛水直播田の4~5倍量、30~40日後で3倍量、50~60日後は2倍量で、湛水後時日の経過とともに減少はするが、湛水直播田にくらべかなり多い。
    4)出芽苗立ち歩合は、湛水直播にくらべ、乾田直播は低く、折衷直播は、両者の中間であるが、乾田直播は覆土播種するので、覆土の厚さおよび土粒の大きさが出芽苗立ちに影響する。覆土1cmと3cmでは、1cmは3cmより出芽が早く、出芽歩合も高くなるが、その後の生育は3cm覆土が良好であった。また、土粒は細かい方が出芽が早く、苗立歩合も高くなる。
    5)乾田直播栽培の出芽苗立ちは、土性によっても異なり、砂壌土が最も早く、壌土、埴壌土、埴土と、粘性の高い土壌ほど出芽はおくれる。とくに埴土では、乾燥防止のため灌水するときは、土壌の固結によって、荒土より細土の出芽が遅れることがある。
    6)直播稲の主稈葉数は、移植稲にくらべて減少し、湛水直播、折衷直播では0.8葉程度少なく、乾田直播では1.2葉減であった。
    7)湛水直播および折衷直播稲は倒伏しやすいが、乾田直播稲は、移植稲に近い耐倒伏性を示し、湛水直播および折衷直播では、点播様式より条播様式が倒伏に弱く、条播様式より散播様式は倒伏しやすかった。また播種量アール当り1kgと1.5kgでは1.5kgは倒伏に弱かった。
    8)乾田直播栽培は、土壌中窒素の硝酸化成作用が早くすすみ、湛水時の窒素流亡が多く、施肥1カ月後には施肥窒素のほとんどが消失することがあきらかになった。また、CaO、MgO、K2Oなどの置換性塩基の流亡もみられる。
    9)生育量は同一肥料条件のもとでは、肥料流亡の多い乾田直播および折衷直播は、湛水直播に劣るが、乾田直播は倒伏につよいので、湛水直播および折衷直播よりは、施肥量を増加することができ、生育収量は、湛水直播をしのぎ、移植栽培にくらべても多収を示す。
  2. 湛水直播栽培法
    1)県中部平坦地帯での湛水直播栽培の播種適期は、5月5日前後とみられるが、4月20日頃の播種でも、苗腐病の防除ができれば5月10日以降の播種にくらべ、生育量は増大し、生育の促進もなされ、気象的安全度は高まる。
    2)湛水直播の播種様式としては、倒伏に比較的つよく、収量の安定性も高い点播様式が望ましい。
    3)湛水直播の窒素施用量は、移植栽培と同程度か、1割増程度が適当とみられ、また燐酸増施の効果がみられる。
    4)5~6葉期に1.5cm前後の簡易培土で倒伏防止の効果があるといわれているが、収量向上のため、窒素を増施するときは.培土により窒素が有効化し、逆に倒伏を助長させ、簡易培土による倒伏防止効果は得られなかった。
    5)湛水直播栽培では、苗腐病の発生が問題であるが、発生実態を調査した結果では、5~20%程度の発病率を示した。播種期を5月4日からほぼ10日ごとに6月14日までとし、これと発病との関係をみたが、早播きした場合ほど発生が多い傾向を示した。
    6)水銀粒剤を播種前に3グラム、5グラム/m2施用し、土壌とかるく混合して、そのあと播種したところ、発病が少なく有効とみられた。施用区は根長がやや短い傾向を示した。
    7)同様に3グラム、5グラム/m2と表層、深層に混入させたあと播種してみたが、表層混合で有効で、深層混合ではこれより劣った。ただし、5グラム/m2施用では根長が短い傾向を示した。農家ほ場を使用し、10アールの直播ほ場に3kgを施用して実用効果をみたところ、有効であることが判明した。
  3. 乾田直播栽培
    1)盛岡での乾田直播の早播限界は5月1日頃であり、播種晩限はフジミノリ程度の品種では5月5日頃で、播種期の巾は小さく、気象立地的にみて危険度は高い。したがって、乾田直播栽培の安全地帯は、花巻以南の平坦地帯とみるべきであろう。
    2)播種期の平均気温が8℃前後の早播きでは出芽日数を多く要し、出芽苗立ち歩合が低下するが、穂重型品種フジミノリでは、穂数減を穂重の増加によって収量を確保した。偏穂数型品種シモキタでは、穂重の増加がみられず減収した。
    3)乾田直播の出芽苗立ちは、砕土の土粒の大きさに影響されるが、14mm以上 40%、14~10mm 40%、10~5mm 10%、5mm以下 10%の荒土でも70~80%の出芽で、実際上支障はなく、この程度の砕土は、秋耕、翌春砕土で得られる。
    4)湛水切りかえは、出芽揃い前でも、透水が多いために出芽はするが、透水の少ない土壌を考慮すれば、出芽揃後すみやかにおこない保温に留意する必要がある。
    5)乾田直播では、硝酸化成抑制剤入り肥料でも、元肥重点施肥では、窒素の流亡が多いので、追肥重点施肥にたよらざるを得ないが、とくに湛水切りかえ時の追肥が重要であり、その後の追肥も必要とする。
    6)透水とともに微量成分の溶脱もみとめられたので、ようりん、珪カルの施用を試みたが、その効果はみとめられた。しかし、珪カルは初期生育を抑制するので、施用にあたっては、気象条件に合わせた施用量を考慮すべきである。

果樹請負耕作の成立条件に関する研究 -りんご作を中心として-

八重樫 瑞郎

  1. 本県におけるりんご作経営は、一般的に小規模で(40次農林統計では30アール以上は24.5%)複合経営の一部門として成立してきたが、最近の農業労働力の減少とりんご作の相対的収益性の低下からりんご作の粗放化、共防離脱の事例がみられ、共防組織運営上問題となっている。
  2. この研究は、上記の社会的経済的条件を背景に発生したりんご園全面請負耕作についてその事例分析をおこない、個別経営発展にどのような役割を果たしているか、その経済性及び将来の展望、成立条件を中心に考察を加えようとしたものである。
  3. 本稿での請負耕作の定義は、「他人の所有に属する耕作の一部あるいは全部を一定の契約にもとづいて耕作して収益をうること」と理解する。
  4. 請負耕作に関する本県の実態は、いわゆるヤミ小作として水稲部門に多いが(岩手農林水産統計年報昭和41-42年:全面請負200件64ヘクタール、農作業請負、4.4万件、2.5万ヘクタール)りんご作については永年性作物である特殊性、りんご価格の低迷から数事例しかみられない。しかし、そのりんご園委託の動きは底流しているとみられる。
  5. 本稿では3事例を実態分析したが、その発生動機には一貫性がみられないが、委託者は他に所得源があり、土地財産管理に性格づけし請負者は共防規模の現状維持と労賃型兼業代替として性格づけている。
  6. 請負耕作の形態は分析3事例のうち、(万)共同果樹園は集団請負で、対象園地1.4ヘクタールを4農家で共同請負している。またT農家、O農家の事例は個別相対請負である。
  7. その契約条件はりんご作の性格上全面請負で、耕作、経営権は請負者に委託され、自由裁量が認められているが、品種更新、間伐などのように園地の状態を一変させるような園地改造には両者の協議が必要とされている。また、契約の年限は1~7年までみられたが、その理由をみると、より土地価格上昇を待期する委託者ほど短期契約をのぞんでいる。ヤミ小作料(あるいは要求地代)は1事例を除いて5,000円~6,000円である。この水準は対象地区の普通畑評価額の年6分の資本利子に相当している。以上、契約項目としては(1)請負期間、(2)小作料、(3)園地取扱いの3項目が中心であり、契約書によるもの2、口頭1、農協仲介2となっている。
  8. 一方経済効果をみると、(万)共同果樹園では昭和43年1.4ヘクタール当収益は(粗収入-直接現金支出)388,808円(10アール当27,772円)出役労働1日当1,300円で、1戸当平均52,325円、T農家では30アール当69,558円(10アール当23,186円)自家労働1日当927円、O農家では23アール当97,329円(10アール当42,316円)自家労働1日当1,144円で、これらは地区一般労賃水準の下限にあたる。
  9. 以上の限りで請負者側から成立見通しをすると、5年前後の契約期間と品種構成の適正(本稿での適正とは紅玉、国光で50%程度で他にデリ系、その他の構成)及び園地の自由裁量が認められるのであれば普通畑水準の小作料でも成立しうるが、各事例の契約小作料は普通畑水準で、果樹作本来のものでない。
  10. すなわち果樹作の理論的小作料は、普通畑としての地代+成園費+育成費利子が加算されたものと理解され、その受・委託者配分関係はIV-2(省略)に示したとおり、また小作料は生産量を中心とした理論標準値と受託園地の価値評価との関係から決定されるべきである。
  11. したがって今後りんご請負耕作が適正小作料のもとで規模拡大の方式として定着するためには、一般的には現行技術体系では収益力が微弱でほぼその限界に近い。そこで、O農家をモデルに実用化されつつある部分的新技術を体系化し、水稲作及びりんご作両部門に適用して試算すると、規模は水田110アールとりんご園126アール(自作地65アール、請負地61アール)に拡大可能となりかつ請負者の労働報酬に管理報酬を加算した1時間当150円段階まではこの品種構成との関係から算定された小作料17,349円を支払う能力があり、これが経済性の限界点である。
  12. 以上の経済性の見通しの上に次のような要因と成立条件が必要である。
     委託者は基幹的労働力が減少し、技術水準が低下するが、兼業収入低位で不安定で、土地を手ばなさず、財産として所有している。請負者は小~中規模経営で、かつ農外兼業に依存しうる技術及び身体的条件をもっていなく、土地購入も不可能である。委託者は(1)りんご園を土地財産所有型が多く、短期契約をのぞみ、さらに(2)委託することが自作経営よりも経済的に有利であることである。(3)請負者は基幹労働力を保有し、(4)請負耕作によって利益をうることが成立の条件となるが、そのため、(5)りんご園の生産力が高く(分散、地力、品種、樹令)、(6)契約期間が長期であること(最低5~6年、これは請負者の能力が発揮される最小限度と考える)、(7)園地に関しては自由裁量であること、(樹型、間伐、品種更新)、(8)受託園地の価値評価に見合った適正小作料であること。

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