岩手県立農業試験場研究報告 第13号

ページ番号1041673  更新日 令和3年4月15日

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ダイズシストセンチュウの防除に関する研究

佐藤昭美・大森秀雄

 この報文では、ダイズ作物の生産阻害要因の中で最も重要な線虫害であるダイズシストセンチュウの防除方法を確立するために、本線虫の土壌中における発生消長、非寄主作物による線虫密度の減少の実態を明らかにするとともに、殺線虫剤による防除の実用性、また品種抵抗性について線虫の寄生行動の側面から検討を加え、得られた結果を報告した。

  1. ダイズシストセンチュウ(以下は線虫)の土壌中における密度消長を冬季から翌年、ダイズの収穫期に至るまで、1年間にわたって調査をおこなった。線虫の越冬形態はシスト内第1幼虫が最も多く、ついでシスト内でふ化した第2幼虫が多かった。土壌中に游出した第2幼虫でも越冬するようであり、12月および2月に土壌50グラム当り1~8頭ほど検出された。第2幼虫の土壌中における年間游出消長は春季地温の上昇とともに急激に増加して、ダイズの発芽期である6月中旬にピークを示し、以後減少したが、8月中旬に再びピークが認められた。いっぽう、充シスト数は春季から減少したが8月上旬から、新シストの発生によって増加する傾向にあった。季節的密度消長は土壌中に游出した第2幼虫とシスト内在虫数の合計値で現わすことが望ましいと考えられたので、充シスト数とシスト内平均虫数から時期別に総虫数を求めた。その結果は、春季ダイズの発芽時期から減少しはじめ、8月中旬に土壌中の線虫密度は最も減少した。その後、第1世代の雌成虫の産卵によって総体の密度は増加した。
  2. 非寄主作物(ヒエ、オカボ)ほ場における季節的密度消長は、春季6月下旬に第2幼虫游出数が急激に増加し、ピークがみられたが、ダイズほ場のように8月にはピークは現われなかった。充シスト数は春季から次第に減少し、秋季に約4分の1程度までに低下した。非寄主作物の連作、3年間で初期の20分の1に減少した。このことから4年輪作で実用的に線虫の被害を回避できると考えられた。非寄主作物を3年間栽培したほ場において、寄生力のある幼虫を蔵するシストは土壌50グラム当り2~3個検出された。さらに、土壌中に游出した第2幼虫が僅少ではあるが常に検出された。このことは、シスト内卵のふ化、游出は長期間にわたって緩慢に行なわれていることを示唆するように推定された。
  3. ダイズシストセンチュウの土壌中の分布は深さ20cm、株から15~20cmの距離の範囲に多く分布していた。
  4. 抵抗性ダイズ品種における線虫の発育はきわめて不良であり、第2幼虫あるいは第3幼虫期で発育を停止して、へい死する。ことに雌虫の発育が押えられる傾向にあった。品種抵抗性は寄生した線虫体頭部の細胞の褐変現象と関係があるように観察された。
  5. 抵抗性ダイズ品種ネマシラズ種の栽培跡地の線虫密度は著しく減少した。ネマシラズ種を2年間作付した後作の感受性ダイズ品種の被害は回避され、無線虫区と同等の収量をあげた。抵抗性ダイズ品種に捕獲作物的作用が認められた。
  6. ダイズ品種11種を用いて線虫ほ場における被害の発生について、線虫の生息しないほ場と比較調査した。その結果、線虫の被害の程度は品種間に著しい差異がみられた。すなわち、草丈、分枝数、成熟期、着莢数、子実着粒数および子実百粒重において品種間差が著しく、したがって収量では、コケシジロ、ムツメジロ、十勝長葉および十育114号で減収率67~81%、岩手ヤギ1号で46%、ホウライ種で26%、東北29号、トヨスズ、ライデン、ネマシラズ、およびPI84751号では3~16%の減収となった。
  7. 線虫ほ場における減収率にもとづいて抵抗性の強度を4段階に区分した。すなわち、(1)強;減収率0~20%、(2)やや強;同21~40%、(3)弱;同41~60%、(4)極弱;同61%以上である。この傾向は7~8月の期間の根に寄生している白色シスト数と関連がみられた。白色シストの寄生数は抵抗性品種のほ場選抜のうえで重要な指標になると思われた。
  8. in vitroにおける線虫の発育の指標は第4幼虫期から成虫前期の雌虫率(雌虫率=[第4幼虫、成虫の雌虫数/総検出虫数]×100)によって白色シスト寄生数よりも正確に表現されるようであり、線虫ほ場におけるダイズ品種の被害度(減収率)と密接な関係が認められた。雌虫率と線虫ほ場におけるダイズ品種の減収率との相関係数はr=0.925***、回帰式、減収率Y=-9.59×1.91X(X=雌虫率)が求められた。上に区分した抵抗性の強度とこの回帰式を利用して実験的に短期間(約30日)に品種抵抗性を検定できる。すなわち、検定品種を温室のベッド等で、地温19~21℃に調整した線虫接種土壌に栽培する。発芽20日後に根に寄生する線虫を発育段階別に染色-ミキサー法によって調査し、上の検定式で推定減収率を求め、さきに区分した抵抗性の強度の基準にしたがって判定する方法を試案した。
  9. ダイズシストセンチュウに対する殺線虫剤の防除効果はD-D油剤、EDB油剤で10アール当り32リットル、DBCP80乳剤4.3リットルで有効であり、無防除に比らべ2~3倍の増収となった。反面、薬剤処理後の線虫密度の復元は早く、秋季には春季と同じ程度までに回復しており、2年めの持続効果は不十分であった。
  10. ダイズシストセンチュウに対する殺線虫剤の持続効果が劣る原因は、ダイズシストセンチュウのシスト内幼虫は殺線虫剤に対する抵抗力が強く、殺虫効果が不十分であること、本線虫の多い地方は軽い火山灰土、砂壌土地帯が多く、このような土地での殺線虫剤の効果範囲はせまく、ことに地表面の防除が不十分であることなどによって、線虫の生残りが多いことに起因すると考えられた。
  11. 殺線虫剤の施用時期はダイズ播種前で、地温10℃以上の時期が最も望ましいが、作業の都合によっては秋季あるいは春季低温時期(10℃以下)でも施用できる。低温時の施用にあたっては薬剤は蒸気圧の高いほど効果がまさる傾向にあった。また、EDB油剤、DBCP乳剤をダイズの生育初期(播種後30日まで)に注入処理することで薬害はなく、効果があがった。
  12. DBCP20%粒剤畦1メートル当り6~9グラム(10アール当10~15kg)はダイズ播種時に肥料と同時に播溝処理で有効である。大型機械による一貫作業の中に応用できるように思われる。

テンサイ根腐病の防除法に関する研究

小澤龍生

 本県に発生したテンサイ根腐病について、1962年から1965年までの間に、主としてその防除法を検討し、次のような結果が明らかになった。

  1. 本病を耕種的に回避する方法として、作付様式における前作物の影響を調べた結果、前作物の種類により発病は異なり、マメ科作物跡地ほ根腐病の発生が多くなり、イネ科作物跡地は発生が軽かった。したがってテンサイ栽培ほ場はマメ科作物跡地を避け、イネ科作物跡地を利用することが望まれる。
  2. また堆肥の多量施用は立枯病、根腐病の発生を軽減し、根部収量の増加をみた。
  3. 畑地を深耕することにより本病の発生を回避できるか否かを検討した結果、20cm程度の耕起深度では発病軽減に役立たず、30cm深耕が有効であった。
  4. 紙筒移植栽培法を適用することにより、本病の発生は普通栽培(直播栽培)の5分の3程度に抑制され、発病軽減に役立つとみた。
  5. 農薬肥料の施用効果について検討した結果、PCP・石灰窒素・クリンの本病菌に対する土壌中での殺菌効果は顕著であった。本剤または石灰窒素を肥料的に元肥として窒素成分で10アール当り10~12kgを播種前(およそ2週間前)に全面処理することで、立枯病、根腐病の防除が可能であり、同時に除草効果も期待できる。
  6. 本病に有効なPCNB粉剤についてその施用方法を検討した結果、処理時期はクラウン・ロット発生初期にあたる6月中旬頃の株ぎわ周辺への処理が有効であった。処理薬量では20%粉剤の5kg/10アール施用と、5%粉剤の20kg/10アール施用とを比較すると、後者の方が高い効果を示した。したがって実用的には低濃度の5%粉剤を20kg/10アール以上株元に施用することが有効であろう。また処理方法では土壌とよく混合すると有効であった。

牧草導入を伴う田畑輪換に関する総合研究

佐々木信夫・佐々木武虎・千葉満男・伊藤吉郎・鈴木泰輔・小原昇夫・高橋一男・佐々木昭四郎・石母田清水・高野正平・増戸靖久・尾田昭一

 多目的ダムからの農業用水の高度活用を目途とし、農地の開発拡大をはかる方式として、牧草導入を伴う主穀酪農型田畑輪換がとりあげられ、和賀中部地区において基準圃農家を入植させて6ケ年間に亘り詳細検討した結果、新規開発地区の営農方式として実用性があることが実証された。

 すなわち、作物の生産性においては、土壌改造の技術の導入により開発当初より水稲及び牧草類の高収を確保することができ、転換によっては水田では地力窒素の発現を考慮することにより安全に多収をあげ得、畑化では肥沃度の向上により旺盛な草生の確保ができる。また、転換牧草畑の造成については牧草の生産性から稲間中播の方式を確立し、酪農経営における自給飼料の確保をはかった。

 地力維持では牧草草種と後作水稲の収量性との関連を明かにし、転換水田の肥培技術を確立した。また土壌の物理性が改善され、肥沃度が増大してくることを確めた。

 用水量は開田工法により大きくかわることが知られ、また火山灰性の新規開田でも工法によっては用水量の過大な消費は、来さなくても済むことがわかった。

 田畑輪換による酪農経営では酪農部門の収益が如何に早く水稲部門に追いつくかが最大の課題であるが、乳牛の増殖をはかりながらゆくと大凡5年ぐらいで水稲部門の粗収益に近接してくるようになることが知られた。即ち、田畑輪換による酪農経営が軌道に乗るのは5年ぐらいかかるということになる。

 更に酪農経営を行ないながら田畑輪換をやるには順次に輪換してゆく方式が常道であるが、用水計画の要請からくる水田1対畑1方式の輪換を行なう場合には、転換年の自給飼料の確保及び転換牧草畑の造成を稲間中播法等をとり入れて合理的に実施することが肝要である。

岩手県における牧野土壌調査および牧草に対する施肥法に関する研究

内田修吉・中野信夫・関沢憲夫・高橋良治

 岩手県下の牧野土壌について調査を行なった結果、ならびに草地に対する施肥試験の結果について、要約すれば次のとおりである。

  1. 全般的に、放牧地の方が高い標高に位置し、600m以上の高地に分布する。これに対し、採草地は大部分600m~400m以下の地帯に分布する。
  2. 傾斜は、放牧地が大部分20°以下に分布するのに対して、採草地は20°以上の分布頻度が高く認められる。
  3. 表土の厚さは、20cm以上の厚さを有する地帯が多く、10cm以内の地帯はきわめて少ない。
  4. 土壌の化学性については、全般的にきわめて酸性が強くなっており、燐酸吸収係数が大きく、しかも腐植含量も高い。
  5. 土壌反応と気象条件、特に降水量との関係については、概して降水量の多い地帯では一般的に酸性が強い傾向にある。
  6. 植生と土壌との関連については、おおよその傾向として放牧地においてY1が6以下では樹林型が多い傾向が認められた。
  7. シバ型野草地に施肥することにより植生は著しく変遷し、50~100%の増収率を示した。その中でも窒素、燐酸、加里の三要素に消石灰を加えた区が最多収であった。
  8. 同一施肥量での野草と牧草に対する施肥試験の結果では、草の絶対生産量からみても、施肥効率は牧草の方がはるかに高く認められ、牧草の集約栽培が有利であり、その必要性が確認された。
  9. 牧草は草種ごとに三要素の感応が異なり、オーチャードグラスは窒素に敏感であり、ラジノクローバー、レッドクローバーなどのマメ科草では燐酸さらには加里に敏感であった。
  10. 草地造成の段階(基肥)と以後の生産維持の段階(追肥)では、肥料要素に対する牧草の感応には顕著な差異のあることが認められた。
  11. 基肥効果としては窒素、燐酸の効果が大きく、追肥段階では加里欠除の影響が大きく現われ、また燐酸追肥の効果も認められた。
  12. 基肥に施用した燐酸の持続効果は、刈取り5年目を経過しても顕著に認められ、基肥に多施したほど増収の傾向となった。
  13. 燐酸追肥の効果も明らかに認められ、施肥燐酸もよく牧草に吸収利用された。しかし、基肥として一定量施用した以後の追肥量の差ほ、収量的にほとんど認められなかった。
  14. 燐酸施肥についての施用配分の収量比は、低水準では配分区がまさるが、高水準の施用では両者の差は判然としない。すなわち、燐酸基肥量の多少によりそれ以後の追肥効果の現われかたも異なる。
  15. トリポリ燐酸は過石、熔燐に比しやや良好であり、熔燐は追肥当初は過石に劣るが、やがて過石にまさった。
  16. 燐酸肥効の季節的変化は、基肥追肥ともに早春にもっとも大きく、ついで秋にも現われる。
  17. 土壌分析の結果、燐酸肥料の施用量ともっとも相関が高く認められたのはAl態燐酸であった。
  18. 増収率および経済性から見て10アール当り30~50kgの基肥と毎年5~10kgの燐酸を早春に追肥することにより良好な草生を維持することができる。
  19. 加里肥料施用の意義は大きいが、その過剰は牧草体の加里濃度が不必要に上昇し易く、加里肥料の無駄のみでなく飼料価値上からも成分の不均衡を生じ不利になると考えられる。
  20. 加里体内濃度の適当な範囲は、一応2.5~4%程度とみなされ、2%以下は加里不足、4%以上は不必要な濃度と云えそうである。
  21. 銅施用の効果は、ラジノクローバーでは判然としなかったが、オーチャードグラスに対しては明らかにその効果が認められた。
  22. 牧草中の銅含有率は、オーチャードグラスでは各刈取り時とも変動がなく一定しているが、ラジノクローバーでは季節的にかなり変動のあることが特徴的であった。
  23. 土壌改良の効果も明瞭であり、かつ持続効果も認められた。

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