岩手県園芸試験場研究報告 第6号

ページ番号1041694  更新日 令和3年4月15日

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岩手県のリンゴ園におけるモモシンクイガ、Carposina niponesis WALSINGHAMの発生消長

千葉武勝・小林森己

 岩手県のリンゴ園におけるモモシンクイガの発生消長を明らかにする目的で、1980年から1982年まで県内各地のリンゴ園で合成性フェロモンを利用した誘引トラップを用いて雄成虫の発生消長を調査するとともに、一部の園地では産卵消長、被害果の発現消長および被害果の採集による飼育調査も実施した。その結果は次のとおりに要約される。

  1. 1981年および1982年に北上市のリンゴ園で産卵消長および被害果からの老熟幼虫脱出消長を調査したところ、1981年は7月上旬に産卵されたものが8月1半旬頃に、また1982年では6月下旬に産卵されたものが8月1半旬頃に老熟幼虫となって脱出した。発育下限温度を10℃と仮定した場合、卵から老熟幼虫および卵から羽化までに要する有効積算温度はそれぞれ、430日度および610日度と見積られた。
  2. 1981年に被害果を採集し、室温条件下で飼育した結果、
    1)老熟幼虫の脱出は8月1半旬から始まり8月中旬に最大のピークを形成し、以後10月中旬まで継続した。
    2)成虫の羽化は8月3半旬に始まり8月5半旬にピークとなり9月2半旬で終息した。
    3)休眠虫は8月3半旬に脱出したものから認められ始め8月4半旬で50%、8月6半旬で100%に達した。
    4)50%の休眠率が示された8月4半旬脱出の老熟幼虫は有効積算温度によって推定したところ7月15日前後の産卵に由来すると判断された。
  3. 1980年から1982年まで、県下各地のリンゴ園において合成性フェロモントラップを用いて雄成虫の発生消長を調査した結果、
    1)県北部、沿岸部および遠野市などの地域では6月中の早い時期に誘殺される個体は少なく7月中旬から8月上旬にかけて第1回め、8月下旬から9月上旬にかけて第2回めの誘殺ピークが生ずる例が多かった。
    2)滝沢村以南の県中部以南内陸地帯では、年に3回(1981年)ないし4回(1980年、1982年)の誘殺ピークが生ずる例が多かった。誘殺ピークは第1回めが6月中旬~7月上旬、第2回めが7月中旬~8月上旬、第3回めは8月中旬~下旬、第4回めは8月末~9月上旬であった。
    3)有効積算温度および休眠虫の出現時期等から誘殺消長を解析し、県北部から沿岸部の地域では年1化型の生活環をとるものが優占しているのに対し、県中部以南内陸地帯では年2化のものと1化のものが混じって発生していることを明らかにした。
    4)岩手県における発生型による地帯区分を隣接地域におけるそれと比較検討した。
  4. 薬剤による重点防除時期を発生消長に基づいて地帯ごとに明示した。

リンゴわい化栽培における薬剤の散布法と病害虫防除効果

藤根勝栄・小野田和夫・佐々木 仁・平良木 武・神 昭三

 わい性樹に対する病害虫防除薬剤の散布量と散布方法の病害虫防除効果について検討した。

  1. わい化栽培園における通年防除では600m3/min、350リットル/10アールの毎列走行散布で防除効果が認められ実用性が期待できる。
  2. 250リットル/10アールの散布では防除効果が劣り、実用性が認められなかった。
  3. 1,000m3/min、500リットル/10アールの隔列走行散布の実用性は期待できる。

ニンニクの二次成長に関する研究

阿部 隆・吉池貞蔵・高橋慶一

 寒地系ニンニクの普通栽培における二次生長の発生原因について、1980年から1982年までの3カ年にわたって検討し次の結果を得た。

  1. 二次生長発生の品種間差としては「福地」よりも「八幡平」で明らかに多かった。これは「八幡平」が球形成のため長日要求度が高いことと、栄養生長の旺盛な品種であることに起因するものと思われる。
  2. 二次生長が誘発されやすいニンニクの生育段階は、側球分化期を中心に前後1カ月程度である。
  3. 二次生長の発生は側球分化期頃を中心に生育が促進されるような保温、多肥、適湿条件下で多発する。従って二次生長の発生原因として栄養生長が強く影響しているものと推察された。

寒冷地におけるイチゴの半促成栽培に関する研究 第1報 ハウスビニール早期被覆による草姿制御作型開発

金野義雄・吉池貞蔵

 従来の早熟型半促成栽培では過繁茂のへい害が大きく、加えて沿岸部では冬枯れの被害が多い。そこで草姿制御を主目的に、外部被覆を早期化することによる効果および、この方法による草姿制御作型の開発について検討した。

  1. 「外部被覆を早期に行い、内部保温開始に至るまでの期間、昼間5℃~15℃、最高温度15℃をあまり越えない範囲に換気し夕方日のあるうちにハウスを閉じる」という方法により過繁茂と冬枯れが解消された。
  2. 収量、品質と草高との関連がみられ、収量、品質ともに良いところは草高20~26cmの範囲で平均果重2~3グラム上昇し、大果率、収量の向上が顕著であった。
  3. 草高は外部被覆時の5℃以下低温遭遇時間と内部保温開始時の5℃以下低温遭遇時間の両要素に高い相関が認められ、草高は両要素の組み合せによるものと判明した。また収穫時期は主として内部保温開始時期によって決まることが認められた。
  4. 好適草姿は、外部被覆を早い時期に行う場合は、内部保温開始時期は遅い方で得られ、これが遅い作型となること、外部被覆時期が遅い場合は、内部保温開始時期が早い方で好適草姿が得られ、これが早い作型となることが判明し、寒冷地における草姿制御がなされた半促成作型として、5月どり、4~5月どり、3~4月どりの3型に大別した。
  5. 草高に対する外部被覆時期および内部保温開始時期の5℃以下低温遭遇時間との相関が高いことから、目標草高(20cm、22cm、24cm、26cm)各段階毎に、外部被覆時期の5℃以下低温遭遇時間「x」とし、内部保温開始時期の5℃以下低温遭遇時間を「Y」として、1次式 Y=b-x が得られた。bは目標草高20cmで1,000、22cmでは1,100、24cmでは1,200、26cmでは1,300であった。
  6. 目標草高毎の関係式を中心に草姿、作型、冬枯れ等の関係を模式図化した。数式化、模式図化により地域適応性が拡大され、気象の年次変動に対応できると考えられる。

モミジガサの栽培法 第1報 挿木繁殖法

金野義雄・吉池貞蔵

 モミジガサの繁殖は従来株の山掘りによるものが多く、繁殖に苦労している現状にあるので、本研究では挿木繁殖法について検討した。

  1. モミジガサの挿木で、土中に挿込まれた腋芽が発育、発根し新個体となった。挿木方法として従来の天挿に対し、横伏3~4節挿しが増殖率で優れ、子苗重も良好で最も良い方法と考えられた。しかし増殖主体の場合は葉芽挿しや横伏多節挿(5節以上)が良いと思われる。
  2. 挿木用土では壌土が最も子苗の生育に優れ、次いで砂壌土が優れることが判明した。川砂、鹿沼土は増殖率は前者と差はないが着生子苗重が劣り、大差がみられた。
  3. 挿木後の遮光は黒寒冷紗2枚(遮光率60%)~黒寒冷紗3枚(遮光率80%)が日焼けの発生もなく、着生子苗の生育が良好であった。
  4. 挿穂の太さは、太い方が、着生子苗重で優った。挿穂の先に残す葉は4枚は必要と認められた。挿木時期は5月挿しと6月挿し比較で5月挿しが着生子苗重が大きく優れ、挿木時期は挿込節数と挿穂の先に残す葉数が確保できたら、できるだけ早い方が有利である。

モミジガサの栽培法 第2報 種子繁殖と株養成

金野義雄・吉池貞蔵

 種子繁殖のための、種子の休眠打破および種子繁殖株の生育に影響すると考えられる諸要素について検討した。

  1. モミジガサの種子に休眠のあることが確認された。種子の休眠打破には、冬の自然の低温遭遇や0℃前後30日~40日の冷蔵処理が有効である。
  2. 実生株の生育には、栽植距離の影響が大きく、15×10cmから20×20cmの栽植距離で、定植1年目で35~50グラムの根株重を示し、挿木苗に優る生育が得られた。
  3. 実生当年の遮光は黒寒冷紗2枚、遮光率60%程度が適当である。
  4. 実生子苗の苗質では、徒長しない健全苗が定植後の生育が優れ、また定植時の植付けの深さは、深植でなく発根部のかくれる程度の深さが良い。
  5. 以上種子繁植法で根株の生育が確保でき、大量増殖の面で挿木繁殖法より有利と考えられる。

モミジガサの栽培法 第3報 半促成栽培の保温開始時期及び促成栽培のための株冷蔵による休眠打破

金野義雄・吉池貞蔵・長根 強

 モミジガサの早出し技術として、半促成栽培の保温開始時期及び収穫期を更に早めるための株冷蔵による休眠打破法について検討した。

  1. モミジガサには休眠があり、岩手県沿岸南部では11月末頃までは深い休眠状態にあると見られ、この時期の保温開始では萌芽、生育が甚々しく不良であった。しかし1月10日頃の保温開始で、萌芽、生育が順調となることから、この時期が休眠の破れる時期と考えられ、半促成栽培での保温開始時期の早限となることが判明した。収穫は3月上旬からとなり露地より約2ヵ月前進した。
  2. 半促成栽培以上の早出しをするための、人工的休眠打破法として、11月上旬に根株を掘り上げ、0℃±1℃の温度で30~40日間の冷蔵処理後、植付けし保温開始する方法が有効であった。この方法で半促成栽培より20日ほど早出しとなった。
  3. 休眠打破には低温遭遇が有効であり、5℃以下の低温遭遇時間が目安として、適当と思われる。休眠は5℃以下低温遭遇時間800~900時間で破れるものと思われる。

[速報]パーソナルコンピューターを利用した土壌診断システムの開発

武藤和夫

 施設栽培の増加に伴って、土壌養分は富化する傾向にあり、適切な肥培管理が必要となっているが、このために土壌診断は欠かせないものとなっている。この土壌診断をスムーズに実施するために、土壌改良を中心とした診断システムを開発した。その機能は次のとおりである。

  1. 中和石灰量の算出
  2. 燐酸改良資材量の算出
  3. 総合診断
  4. 施肥基準一覧

 本システムの利用によって土壌診断の効率化が期待される。

[ノート]リンゴわい性台木M9とM9Aの生育差について

佐々木 仁・藤根勝栄・小野田和夫・伊藤明治・神 昭三

 主要ウイルス無毒のわい性台木、M9Aとふじ、ジョナゴールドを組合せて生育、収量等を検討した結果、従来のM9より穂品種の生育が良く、果実の収量も2~2.5倍の多収となった。一方、果実品質においては、台木による差は認められなかった。

[ノート]土壌塩基置換容量の簡易測定法

武藤和夫・櫻井一男・伊藤明治

 桐山ろ過装置を使ったピーチ法について、CEC測定の簡易化を検討したところ、実用性が高いと考えられた。その方法の概略は以下のとおりである。

 土壌1グラムを20ml試験管に採取し、1N酢酸アンモニウム溶液を10ml加えて、30秒間振とうし、30分間静置後、桐山ろ過装置を用いてろ過する。土壌を80%アルコール溶液(10ml、2回)で洗い、最後に10%塩化加里溶液(10ml、2回)で置換浸出する。置換浸出したNH4-Nはホルモール法により定量する。

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