岩手県畜産試験場研究報告 第23号

ページ番号1041714  更新日 令和3年4月16日

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胚移植技術を応用した高能力牛への改良

田原誉利子・谷藤隆志・川村輝雄・熊谷光洋・岡田利之・渡辺芳明・梶田敏彦・藤代朱美・杉若輝夫・三上三千男・立花勇作

 遺伝的改良の飛躍的なスピードアップを図り高能力牛群を早急に整備するため、高能力牛3頭を導入し、胚移植技術を応用して高能力牛への変換に取り組んだ。

  1. 導入供胚牛3頭の泌乳能力は、成年換算乳量で10,000kg以上で導入時の期待どおりであった。
  2. 導入供胚牛からの採卵は延べ35回実施し、6年間で1回当たり平均2.8個の正常胚が回収された。過剰排卵の反復により正常胚数は年々減少し、有効と考えられる4年間では1回当たり平均3.4個であった。
  3. 移植成績は凍結胚移植、新鮮胚移植とも約50%の受胎率であった。
  4. 導入供胚牛の胚移植による産子は46頭で、雌産子が23頭で、雌娩出率は理論どおり約50%となった。
  5. 産子牛23頭のうち22頭が現在経産となり、集計可能となった18頭は、ほぼ10,000kgの泌乳能力を示し、受胚牛とした低能力牛の乳量と比較して飛躍的に改善された。
  6. 本研究結果をもとに、経産牛40頭規模、305日乳量7,000kgの農家へ供胚牛を利用した本技術を導入し、305日乳量10,000kg牛群へ変換(現行よりも143%の能力向上)する試算を行なった結果、回収期間は開始後7年目となり、以後増収が見込まれ、胚の購入を利用したケースによる試算でも同様に7年目となった。また、導入農家の設定を305日乳量8,200kgの水準(122%の能力向上)へ引き上げて同様に試算したところ、回収期間は1年延長して8年目となった。このことから、飛躍的な能力向上を目標とすればこの技術は有効と考えられる。

水稲ホールクロップラップサイレージ調製の機械化体系

村上勝郎・多田和幸・中村長悦・竹田政則・工藤明彦・中津源次・佐藤勝郎・山田和明・佐藤明子・新田秀雄・田中喜代重・島 輝夫

  1. 水稲を飼料として利用するため栽培を省力化するために乾田直播で実施した。収穫・調製は自走式カッティングロールベーラ(体系1)とモーア+ロールベーラ(体系2)の2体系を検討した。体系1は旋回がしやすく作業がスムーズであったが収穫ロスが多かった。収穫時の地耐力は早期落水などこまめに水管理したため、体系2の粗飼料生産大型機械が稼働できる状態になった。
  2. 岩手県の水田土壌群の違いによる粗飼料生産大型機械が稼働できる省力な水稲栽培方法を検討した。粘質土壌(褐色低地土等)では湛水直播で実施し、間断潅漑、強中干し、早期落水をすることによって、収穫時の地耐力は大型機械稼働の基準6kg/cm2以上となり機械稼働が可能となった。水稲収量も良好であった。
  3. 壌質土壌(多湿黒ボク土等)では、乾田直播で実施し、早期落水をすることにより大型機械稼働が可能となった。湛水直播同様に水稲収量は良好であった。

水稲ホールクロップラップサイレージの発酵品質改善と好気的変敗(二次発酵)防止技術

村上勝郎・多田和幸・中村長悦・竹田政則・中津源次・山田和明・佐藤勝郎・佐藤明子

  1. 予備試験として、可溶性糖類の少ない夏期の再生草(イネ科牧草主体)を用いて各種市販乳酸菌の添加効果を検討した。発酵品質は酪酸の生成が多くフリーク評点が低く、乳酸菌のみの添加では発酵品質の改善はできなかった。
  2. アンモニア、プロピオン酸、プロピオン酸アンモニウム、乳酸菌(サイプロラクト)を添加して水稲ホールクロップサイレージの発酵品質改善を図った。アンモニア添加は酪酸発酵を抑制し水稲ホールクロップサイレージの品質は良好であるが、近年の動向から取扱い上、安全性、作業性に問題があり、実用的ではないと判断された。プロピオン酸、プロピオン酸アンモニウムでは実質の改善にはならなかった。
  3. 異常気象年の水稲ホールクロップサイレージの発酵品質は無処理でも良質なサイレージが調製できた。
  4. 水稲ホールクロップラップサイレージでは、開封後の二次発酵を防止するためにはプロピオン酸、プロピオン酸アンモニウムの添加が効果的であった。よって、水稲ホールクロップラップサイレージには発酵品質改善よりも開封後の二次発酵防止法として添加剤を使用することが有効と考えられた。

黒毛和種繁殖牛における水稲ホールクロップラップサイレージの飼料価値

多田和幸・佐々木祐一郎・村上勝郎・中村長悦・竹田政則・中津源次・佐藤明子・山田和明・集治善博

(摘要なし)

水稲ホールクロップラップサイレージを主体とした地域飼料の混合飼料調製技術

村上勝郎・多田和幸・中村長悦・竹田政則・中津源次・佐藤勝郎・佐藤明子・山田和明

  1. 冬期に調製した豆腐粕サイレージは、無添加でも発酵品質は良好であった。稲ワラ+フスマ添加では総酸量も多く、豆腐粕に添加するには有望と考えられた。栄養価からすると稲ワラ添加はCP含有量が低くなるので目的であるCP補給飼料としては不適と考えられた。
  2. 夏期に調製した豆腐粕サイレージは、輸送の間に腐敗するなどの問題点があったが、無添加では発酵品質は良くなかった。フスマ添加が酪酸の生成がなく良好であった。
  3. 今後の課題として、製造工場での流通体系を含めた調製貯蔵システムの開発が必要と考えられた。

黒毛和種繁殖牛に対する水稲ホールクロップラップサイレージを主体とした地域飼料の経営・経済的評価

中津源次・佐藤勝郎・渡邊康一・村上勝郎・新田秀雄・多田和幸

(摘要なし)

黒毛和種個別一貫経営の特徴と移行上の課題

堀米昭男・岡田利之・遠藤明人

 本研究は、黒毛和種一貫経営の特性を明らかにすることと移行のための営農条件を探ることが中心テーマである。このため、本県における若干の事例を対象にそれらに共通する経営基盤や技術的特徴を引き出すということを意識しつつ、(1)経営事例調査(2)農家意向調査(3)経営モデル試算を行った。そして、その調査等結果の範囲内で導き出されたいくつかのポイントを農家が一貫経営移行を考える時の判断基準として取りあえず整理した。

 経営事例調査では、県内黒毛和種一貫経営のおよそ半数にあたる48戸を対象に飼養頭数や飼料生産面積等の経営基盤及び技術面の留意点などを概括的に取りまとめた。また、自家生産牛と外部導入牛の出荷成績比較(5経営体-出荷頭数120頭)を行うとともに4事例の精査で一貫経営の低コスト性とその主な要因及び取り組みの特徴を明らかにした。

 農家意向調査では、県内でも技術レベルが高い繁殖牛15頭以上の多頭飼養農家(11戸)の一貫経営に対する考え方や今後の経営方針を把握した。そのうえでこれらの調査結果から明らかとなった経営基盤や生産技術及び経営管理面の特性、優位点を参考に一貫経営モデルを策定し、経営収支見通しと投資限界額を試算した。

 以上の結果を総合的に考察すると、本研究の結論部分になるが、一貫経営移行の営農条件と留意すべき事項は以下のように整理できる。

1. 労働力について
 新たに肥育牛の管理作業が加わること、粗飼料生産基盤の追加的確保とそれに伴う管理作業が必要になってくることで労働力の増加が求められる。また、実際のところ肥育技術の修習や草地管理、繁殖管理、肥育管理等の作業分担や協力が避けられないので、経営事例等からみて家族労働力は1.5人~2人程度(最低でも1.5人)は必要と考えられる。(飼養頭数規模や飼料生産面積等によって必要な労働力は変わるが、今回の経営モデル試算では繁殖牛15頭、肥育牛30頭飼養として家族労働2人で年間1,817時間(繁殖牛管理911時間、肥育牛管理695時間、飼料生産211時間)の労働時間をみている)。

2. 粗飼料生産基盤について
 経営の主部門として一貫経常を導入する場合や繁殖牛の多頭飼養の場合、それに見合う大量の粗飼料が必要になってくる。精査した4事例の粗飼料生産基盤は成雌牛1頭当たり約16アールとなっており、増頭に対応して転作飼料作物の作付け拡大や共同利用草地の有効活用等徐々にその基盤を拡大してきている。また、牧草地(水田転作及び牧草柵)の単収は4~4.6トン/10アールと県平均の3.5トンより2割程多く、機械の共同利用や共同作業で生産コストの低減に取り組んでいる。

 一方、県内48戸の状況調査結果をみると、1戸平均の繁殖牛16頭、肥育牛22頭に対し、飼料基盤としてデントコーン等の飼料畑68アール、牧草地189アール、計257アールであり、繁殖牛1頭当たりの飼料生産面積は16アールとなっている。なお、このほか野草地や共同利用草地、さらには公共放牧地の利用をしているケースも見られる。こうした実態からすれば、飼料作物の収量水準によって一概に言えないが繁殖牛1頭当たり16アール程の粗飼料生産面積が必要と考えられる。なお、今回の経営モデル試算では周年舎飼いで繁殖牛の飼料自給率88%を目標に繁殖牛1頭当たり24アール(牧草単収5.5トン/10アール、デントコーン6.5トン/10アール)必要として試算している。

 蛇足ながら、2、3の文献から繁殖牛1頭当たりの必要面積をみると最低10アールとしている例や14~15アール必要だとしている例など差がある。結局のところ、必要面積は単収水準に大きく左右されるものであり、このような数値の範囲内が妥当だとしても良質な粗飼料を低コストでいかに安定的に生産するかがそれを規定する重要なポイントと言えるだろう。

3. 生産技術について
 まず分娩間隔や事故率等繁殖管理技術が高いことが必須の要件である。連産による高い繁殖率(1雌牛7産・1年1産)を実現して行くことが極めて重要であり、4戸の精査事例でみても分娩間隔が短く死廃率も極めて低いこと、母牛の産次数も平均7産と多いことなどによって素牛の安定確保と素畜費の大幅な節減が図られている。この点が一貫経営の最大のメリットであり、これを最大限に生かしてこそ子牛価格等の変動を克服できる一貫経営が成立するのであり、維持・成長できる。

 肥育技術については、少頭数の試験的肥育と技術習得・研修を同時併行的に取り組んでいる例が多い。こうした訓練期間を経て肥育技術に自信を持つようである。その後の対応は出荷データ等に基づく飼料給与の工夫や先進事例の研修等で幅広い技術を身につけて行く例が多いようである。要すれば、繁殖管理技術が高く創意工夫に熱心な農家が一貫経営の対象になりうると考えられる。

 なお、草地管理や経営管理技術等については、先に述べた4事例の取り組みと特徴にもあるとおり生産コストの低減に大きな影響を及ぼしている。従って、そうした技術水準向上の取り組みも移行する場合及びその後の経営展開の場面で重要であることを附け加えておく。

4. 施設等の投資と資金確保について
 移行時点において肥育牛舎など必要最小限の投資で済むことが必須要件と考えられる。これは繁殖牛舎や飼料作関係の機械及び各種施設・構築物が既に整備されている繁殖農家、特にも経営基盤が大きく生産技術の高い中核的繁殖農家が一貫経営に移行していること及び経営モデル試算による投資限界額の考察結果から導き出される結論である。なお、その後の追加的投資(増改築や新築)は、経営実績の推移を基本に例えば現金余剰等を尺度として段階的な施設整備と増頭を行うパターンが多いようである。

 次に、資金関係である。大きく(1)施設投資の資本調達と(2)一貫経営が安定するまでの資金繰り(特に運転資金)が重要な課題である。(1)については、48戸の事例調査結果で自己資金の充当で借入金なしがおよそ半数の22戸、また、4戸の精査事例でも牛舎の棟数でおよそ3分の2が自己資金で建てている。こうした実態からすると全面的な資金借入れによって施設投資を行うケースは極めて少ないようである。

 今回の経常試算では、(1)及び(2)についてそれぞれ一定額の資金借入れをみているが、経営が軌道に乗るまでの7~8年間、確実な収益確保と償還財源の確保が特に重要である。表20(省略)の試算結果からも明らかなとおり、収益が当初設定したとおりに確保できなければ赤字補填のための運転資金の借入れ増加とその利子・元金償還で苦しい経営状態に追い込まれることが想定される。

 以上のように、初期の施設投資とその後の運転資金の確保・調達が経営収支に大きな影響を及ぼすことから、資金的体力があるか否かが移行するうえで極めて重要な要件になると考えられる。

 最後に敢えて結論として要約すれば、一貫経営移行の必須条件として「労力」「繁殖管理技術」「資金的体力」の3点が、そして次のやや緩かな条件として「飼料基盤」「各種の生産技術の創意工夫」の2点に集約されるのではないだろうか。こうした点を事前に十分チェックして取り組んで行く必要がある。

微生物利用による寒冷地対応型糞尿処理技術

田中喜代重

 カラマツ林の土壌には、汚水処理に有効な土壌菌群が存在していると認められる。

 処理の進んだ汚水を汚水の流入槽である第1槽に返送することは、汚水処理を促進し、処理時の悪臭防止にも極めて有効であると認められる。

 簡易な汚水プラントであるが、SS、BOD、pH、大腸菌などについて放流時の水質基準を達成することが可能である。

 汚水処理プラントに温水ボイラーを取り付けることにより、処理コストが若干高くなるものの、低温期においてもプラントの処理機能を十分に維持できる。

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