岩手県畜産試験場研究報告 第19号

ページ番号1041725  更新日 令和3年4月16日

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汎用化水田における飼料生産・流通技術の確立 -高蛋白飼料及び良質繊維粗飼料の生産利用技術の確立-

久根崎久二・佐藤勝郎・山田和明・佐藤明子・本城英美・島 輝夫・田中喜代重・細川 清・山田 亙・小針久典

1章 マメ科混播による栄養生産性向上技術
 1節 マメ科(アルファルファ)混播牧草の半乾草変質防止技術

  1. ロールベーラとベールラップとの組み合わせ作業体系(ラップサイレージ)は集草から半乾草収穫調製までha当たり141分と省力的で、ワンマンオペレーションが可能で、天候不順にも対応し易い。
  2. ラップサイレージは梱包後早期密封されるため良好な発酵品質のサイレージがでやすく、家畜嗜好性も高い。特に、半乾草での収穫が必要なアルファルファ主体混播牧草の収穫調製には最適である。
  3. アルファルファ混播ラップサイレージの開封後の好気的変敗(二次発酵)防止のためのアンモニア添加量は1%で十分である。

2章 寒冷地における安定多収ソルガムの高品質調製技術
 1節 サイレージ用優良品種の選定

  1. 収量性は一般にソルゴー型が高収量であったが、耐倒伏性や耐湿性並びに家畜の嗜好性、栽培収穫作業幅等から考えて兼用型ソルガム「スズホ」が本県転換畑に最も適する品種と考えられた。
  2. 「スズホ」は晩播適応性があり、田植え並びに1番草の収穫作業が終了した6月下旬に播種しても10月上旬には糊熟期に達し、標準収量の確保が可能であった。
  3. 倒伏すると収穫調製に支障を来すので栽培で最も重要なのは栽植密度である。岩手県における適正栽植本数は約1,500本/アールと判断され、これは条間75cmにすると株間は8.5~9cm位に相当する。
  4. 耐湿性はとうもろこしより強く、地下水位30cmでも乾物収量100kg/アールが可能であった。
  5. 雑草防除は土壌処理、生育期処理どちらも可能なアトラジン水和剤20ml/アールの散布が適当であった。
  6. 家畜の嗜好性は良好で、とうもろこしと同等と判断された。
  7. 実証農家からは複合経営において作業が競合しないという点で評価が最も高かった。

 2節 ソルガムサイレージ・乾草調製適期

  1. ソルゴー型ソルガム(シュガーグループ)のFS304では糊熟期以降良質サイレージが調製可能であった。
  2. 兼用型ソルガム「スズホ」は乳熟期(9月上旬)以降11月中旬まで降霜にあっても水分レベルが安定していた。
  3. 「スズホ」は乳熟期から成熟期までどの時期のサイレージも発酵品質は良好であった。
  4. 原材料・サイレージの酵素分析による成分組成も乳熟期から成熟期まで変動は少なく、TDNで概ね60%であった。
  5. よって稲刈り作業の前または後、及び他の農作業の合間をぬって収穫調製を行うことが可能であると判断された。
  6. 乾草用品種についてはスーダングラスで乾草調製を試みたが、いずれの品種も水分の低下が緩慢であり本県における天日での乾草調製は困難と判断された。

3章 汎用化水田生産調整
 1節 えだまめ及びスイートコーン残渣のサイレージ調製と飼料価値

  1. えだまめ残渣の飼料価値について検討した。部位別の成分組成は、葉、莢は粗蛋白質、粗脂肪が高く、茎部は粗繊維の消化率が低かった。山羊による消化試験ではえだまめ残渣サイレージの栄養価はDCP15%、TDN53%であり、カルシウムも2%と高く、アルファルファの飼料特性に近い粗飼料であると言える。
  2. サイレージ調製法は水分が高いので予乾等水分調整することが必要であるが、一日当りの産出量が少ないため50kg入りバッグサイロを用いることが早期密封を図る上で適当と思われた。
  3. スイートコーンの残渣は10アール当り現物で2.5トン以上の収量が期待できる。サイレージ調製時期は茎の糖度、茎葉中の可溶性炭水化物含量、硝酸態窒素含量から考えて、スイートコーン収穫後約20~30日が最も適当である。
  4. スイートコーン茎葉とえだまめ残渣を混合することにより良質なサイレージ調製が可能である共に、ミネラル含量も充足し、バランスも改善されることが確認できた。
  5. 以上、転作作物の残渣を良質な飼料にすることが可能であり、特に飼料基盤の弱い水田地帯の肉用牛繁殖農家で飼料給与改善に結び付くものと考える。

 2節 麦稈のサイレージ調製とアンモニア処理

  1. コンバイン麦稈の推定栄養価は乾物当たりTDN50%、CP3.8%程度であるが、放置すると栄養価の低下が著しいので、速やかに調製加工が必要である。
  2. 麦稈のみのサイレージは発酵品質が劣悪で、家畜も殆ど採食しなかったが、生草50%混合すると、品質も改善され、家畜嗜好性も向上した。
  3. コンバイン麦稈の10アール当たりロールベーラーの処理能力は直径90cmの牽引式で50分、直径45cmの自走式で1時間40分であり、整備田では前者が適当と考えられる。
  4. 1ロールの現物重量(水分30~20%)は直径90cmが平均55kg、45cmが10kg程度で10アール当たり550kgの麦稈が収集可能であった。
  5. アンモニアの適正添加は推定TDN、CP、家畜の噂好性、添加コストから考えると、3%程度と推定される。
  6. アンモニア水添加も液化アンモニアと同等の効果が認められるが、取扱や安全な添加方法から見て、実用性がないと推察される。
  7. 麦稈のミネラルは家畜飼養上著しく欠乏しているし、また、アンバランスであるので給与に当たっては十分留意する必要がある。

胚移植技術の簡易安定化と双子生産

熊谷光洋・吉川恵郷・菅原好秋・佐藤利博・川村祥正・菊池誉利子・沼尻洋一・谷地 仁・千葉健市・吉田吉明

1 多排卵誘起法の検討
 黒毛和種に対する多排卵誘起法を検討した。

  1. 多排卵誘起処理はFSH 24A.U.の1日2回減量投与が正常胚回収のために効率が良いと思われた。1日1回投与では発情の発現率が低く不安定であった。
  2. 反応不良牛に対して初回の人工授精時にLH-RHを投与することで胚の回収成績が改善する場合があった。
  3. 多排卵誘起処置開始時の卵巣内に黄体細胞の充実した黄体があり、直径10mmを越すような大卵胞が黄体と共存せず、小卵胞が多数存在する場合に良質胚が多数回収される傾向にあった。

2 胚の凍結と融解方法の解明
 胚の凍結保存方法の簡易化のために3段階希釈法・1段階希釈法・ダイレクト法について比較検討した。

  1. 3段階希釈法では融解後の胚の生存性は70~80%であった。
  2. 凍結融解法の比較試験に置いて1段階希釈法では3段階希釈法と同等の生存性・受胎率を得たが、野外での移植には液層の混和と胚の確認に確実性を欠く恐れがあった。
  3. 生存性が高く、3段階希釈法と同等の受胎率を得ているダイレクト法が野外での移植に適している可能性があるが、例数が少ないため、さらに検討を要する。

3 凍結胚移植による受胎率の向上
 野外での凍結融解胚移植の受胎率向上のための要因解明を行った。

  1. 凍結胚の受胎率の現状は約50%である。
  2. 移植時間が10分を越える場合に受胎率が低い傾向があった。
  3. 移植時の受胚牛の直腸検査による黄体所見で3段階に分類した場合に+では受胎率が低い傾向にあった。++と+++は受胎率に差はなかった。
  4. 誘起発情の受胚牛では受胎率がやや低い傾向があった。
  5. 未経産牛と経産牛との間に受胎率に差は認められなかった。

4 2胚移植法の検討
 受精卵を両側子宮角に移植する手法は、最も安定した双子生産技術であるが、従来の移植方法では、充分な移植成績が得られていない。そこで経産牛を受卵年として活用したときの技術的問題、および凍結胚の現地融解・直接移植が可能な直接法が開発されたことから、これに対応できる簡易移植器具を試作し、有効性について検討して次の成績を得た。

  1. 経産牛の膣深部からの細菌分離率は高く、移植器鞘の膣内破孔法では器具の汚染が避けられない。
  2. そこで子宮頸管外口部とその周囲の消毒を行い、加えて鞘を頸管内で破孔する方法に改善した。
  3. 両側子宮角移植を容易にするために二重鞘を試作し、前述方法で凍結胚を経産牛に移植した結果、受胎率(76.9%)と双子率(40.0%)が向上した。
  4. しかし、移植操作に助手を必要とすることが欠点である。
  5. 今後普及すると考えられる凍結胚の現地融解法に対応でき、両側子宮角移植が可能な二連式移植器を試作し、前述の手順で凍結胚を移植して71.4%の受胎率を得た。

地域飼料資源をベースとした混合飼料(TMR)による高泌乳牛の飼料給与基準に関する試験

渡辺 亨・住川隆行・渡辺芳明・山口純二・帷子剛資・本城英美・田中喜代重・上野昭成・茂木善治

1章 地域飼料をベースとするTMRの調製と品質保持技術の確立
1. 地域資源の調査
 当県における地域飼料の種類及び量について調査した。その結果、牧草は、北上川上・下流で多く、とうもろこしは、酪農地帯である北上川上流で多かった。また、本試験で取り上げたアルファルファの栽培はわずかに、36ヘクタールで今後推進しなければならない課題と思われた。

2. TMRの実態調査
 当県におけるTMR実施農家についての実態調査を行った。その結果、34戸の酪農家で実施されていることがわかった。TMRによって、飼料給与の面での省力化や乳量、乳成分向上の効果があるが、1群管理が多く、繋養方式や牛舎構造による様々な問題点も明らかとなった。

3. プロピオン酸添加の効果
 TMR調製後の変敗防止対策としてプロピオン酸添加について検討した。気温が15℃程度の時は、TMRの混合材料であるとうもろこしサイレージへのプロピオン酸1%添加で変敗を抑制できるが、より気温が高いときにはTMRに1%のプロピオン酸の添加が必要であることが示唆された。また、プロピオン酸1%添加TMRを泌乳牛に給与したが、乳量および乳成分等に対する影響は見られなかった。

2章 TMRの給与効果
1. TMR給与と第一胃性状及び緩衝材添加の効果
 TMRに重曹を1日1頭当り150g添加し、泌乳牛に給与した場合の乳量および乳成分に対する影響を明らかにするため、泌乳中期牛に対する給与試験を実施した。その結果、乳量、乳成分に対する重曹添加の効果がみられなかった。

2. TMRの泌乳及び繁殖に及ぼす効果
 TMRの給与で乳量の向上が可能であった。しかし、本試験の結果では、SNFの向上が見られなかったため、単に混合すれば良いというものではなく、乳量アップに見合う飼料成分の向上も伴わなければならないものと推察された。行動調査の結果から、とくに、2群、3群および分離給与区で座位で反芻している時間が長いことが観察され、この原因や意味について、さらなる検討が必要と思われた。

ロード種の効率的選抜法の確立

菊池 仁・山舘忠徳・青木章夫・村田亀松・下 弘明・和田一雄

 ロードアイランドレッド種について産卵性に悪影響を及ぼさないで大卵化、小躯化を図るため改良目標に基づく選抜指数式による選抜を行った。選抜結果より遺伝的パラメータの推定を行った。

  1. G0世代の選抜状況からパラメータの見直しを行った。指数式係数も変更し、その結果、改良に要する世代数は1区が12.4ないし8.5世代、2区が9.0世代ないし5.1世代と当初より短縮された。
  2. 指数式変更後の各世代の選抜状況を選抜差でみると、初産日齢を除いてほぼ意図した方向に行われた。
  3. 産卵形質の世代別成績は、1区と2区の相対的な大小関係は期待通りであったが、世代による推移は両区の体重および卵体比、1区の卵重を除いて意図した結果が得られなかった。実現遺伝改良量で有意に改良された形質は両区の270日齢体重だけであった。
  4. 2段階選抜では後期産卵率の改良効果が大きかった。
  5. 各県、各世代のデータよりパラメータの推定をおこなった。選抜に使用したパラメータと比較して、遺伝率では初産日齢、270日齢卵重、卵体比で高くなり、270日齢体重で低く推定された。遺伝相関では270日齢卵重と体重の相関が低く、270日齢卵重と産卵率の負の相関が高く推定された。

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