岩手県畜産試験場研究報告 第8号

ページ番号1041794  更新日 令和3年4月19日

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肉牛の肥育に関する研究(2)-日本短角種去勢牛における粗飼料の種類と仕上げ体重の違いが産肉性に及ぼす影響-

小野寺 勉・菊地 惇・斉藤精三郎・吉田宇八

 日本短角種は粗飼料の利用性に優れる特性がある。この特性を生かした肥育技術を検討するため去勢牛36頭を用い、濃厚飼料を体重比1.4%に制限し、粗飼料として、ヘイキューブ、乾草を給与する区(ヘイキューブ区)とサイレージを給与する区(サイレージ区)を設けた。
 仕上げ目標体重は、ヘイキューブ区、サイレージ区それぞれ、600kg屠殺区(600kg区)、650kg屠殺区(650kg区)、700kg屠殺区(700kg区)を設け、肥育試験を行なった。

  1. 肥育全期間の1日当り増体量は、屠殺体重間では600kg区>650kg区>700kg区、粗飼料間ではサイレージ区>ヘイキューブ区の傾向がみられたが、その差は少なく、いずれも有意差はなかった。
  2. 増体パターンは350~450kgが最高の増体を示し、それ以降、順次増体が低下した。
  3. 飼料要求率は屠殺体重間では、600kg区<650kg区<700kg区、粗飼料間ではサイレージ区<ヘイキューブ区の傾向がみられたが、その差は少なかった。
  4. 粗飼料を有効に利用することにより、濃厚飼料の摂取量は体重600kgで濃厚飼料飽食型の肥育に比べて、約800~1,000kg節減されたが粗飼料は乾草換算(水分15%)で節減した濃厚飼料量の2倍の量を必要とした。
  5. 枝肉歩留は600kg区<650kg区<700kg区であり、屠殺体重間に有意差(1%水準)がみられ、濃厚飼料飽食型の肥育に比較し若干劣る傾向がみられた。
  6. 脂肪交雑は体重を大きくするにしたがって向上する傾向がみられたが、その差は少なく枝肉格付の向上にはつながらなかった。
  7. 枝肉の脂肪色はヘイキューブ区がヘイキューブに多く含まれるカロチンの影響と推察される黄色を呈した。
  8. 肉の一般組成では、粗脂肪の増加にしたがって水分が減少する傾向がみられ、粗蛋白質には大きな変化はなかった。

 増体および飼料要求率においてヘイキューブ+乾草とサイレージの問に差はなかった。しかし、ヘイキューブは屠体の脂肪を黄色にするので、肥育におけるヘイキューブの利用は肥育前期に行うとすべきであろう。仕上げ体重を大きくすることにより、枝肉歩留、脂肪交雑等は向上する傾向がみられるが、枝肉格付の向上はあまり期待出来ず、逆に増体、飼料要求率が低下することから、粗飼料多給の肥育でも仕上げ目標体重は600kg前後であろう。

肉牛の肥育に関する研究(3)-積雪寒冷地における屋外肥育-

谷地 仁・斉藤精三郎・小野寺 勉・菊地 惇・菅原休也・吉田宇八

 積雪寒冷地における屋外肥育の可能性を検討するため、全面コンクリート舗装と半スノコ式牛床をもうけ、黒毛和種、日本短角種を供試し、冬期間における肥育効率、飼料効率、施設の簡易化、泥ねい化防止について昭和49年より昭和52年まで実施し下記の所見が得られた。

  1. 肥育全期間における日増体量は、黒毛和種では年度間における有意差が認められたが、屋内区との差は見られなかった。期別増体量では冬期間の第1期において、増体の停滞が見られ、黒毛和種による冬期屋外飼養の可能性は見いだされなかった。日本短角種では屋内区との間に有意差が認められたが、黒毛和種に比べ増体量の低下が見られず各期別とも順調に推移し、屋外肥育の可能性が認められた。
  2. 濃厚飼料の摂取量を1kg増体当りでみると、黒毛和種は平均10.67kgで屋内区に比し約23%増となり、またTDN量でも約26%と多く要している。日本短角種は9.39kgで約18%、TDN量では約24%増となったが、品種間では日本短角種が優れる傾向が見られた。期別摂取量では両品種とも第1期における冬期間の摂取量が多く黒毛和種で約58%、日本短角種でも43%増となり、またTDN量ではそれぞれ、47%、44%増と1kg増体当で計算されたが降雪、寒冷時の維持エネルギーとしてつかわれたものと推察される。
  3. 屠体成績では何ら異常は認められなかった。
  4. 当地域における年平均気温、気温較差は連年大きな変化は見られなかったが、降水量、降雪量に差異を生じ、また12月~3月にかけての寒冷も厳しく、飼料効率の低下が裏付けられた。
  5. 牛床は全面コンクリート舗装および半スノコ式にすることにより泥ねい化防止、公害防止は達せられたが、冬期間における牛床および糞尿の凍結があることから、簡易な雨雪防止障壁を附設することにより肥育効率も高まるものと推察された。また小頭数規模での半スノコ式および糞尿流出方式は、糞尿くみ取りの設備がかさむので考慮が必要と思われる。
  6. 牛床面積は10~15頭群飼では1頭3m2は可能と推察されたが、小頭数規模での1頭3m2は仕上げ期に過密となる傾向が見られた。屋外肥育が適応できる県内の地域的な条件を気象要因を使って図7で整理した。この結果、冬期間の降水量が少なく、比較的温暖であることの条件をみたす地域としてD、E二つの気象的な可能地があげられた。このような地域であれば第8表に示すような簡易施設を設けることによって屋外肥育および簡易施設による肥育経営は可能と推察される。

山地における集団肉牛の繁殖方法の改善

谷藤隆志・及川稜郎・新渡戸友次・谷地 仁・帷子剛資・菅原休也・道又敬司・渕向正四郎

第1章 放牧地における発情発見の省力化
 まき牛群編成における放牧牛が発情期に示す特徴ある行動は、発情牛を中心とする牛同志の相互関係による「乗駕及び被乗駕」の交互動作が定型的(86.9%)であるが、同居子牛の乗駕許容動作の発現も著しく(73.7%)同居子牛が発情発見の手段として有効と思われる。
 チンボール利用による発情発見率は約80%、又、交配確認利用精度は90%程度で監視人法による慣行的な発見より高率で、発情牛の無着色が問題点として残るが、簡易な発情発見法として実用性は充分有るものと考えられ、又、去勢牛や、精管結乳牛に装着して人工授精のための発情発見にも応用できるものと考えられる。

第2章 まき牛繁殖の改善

  1. 種雄牛の性行動
     交配に至るまでの性行動として、初めに求愛動作(雌牛の陰部をかぐ、なめる)が見られ、その後、雌雄の相互愛撫、雌牛の庇護、追従歩行の追尾動作等を繰返し、交配に移行する傾向が見られた。
     同時発情牛の見られる場合、種雄牛は発情牛に交配序列を作り、1頭の発情牛に集中して交配を重ねた後、他の発情牛への交配に移行する傾向が見られた。
     一発情当たりの交配回数は1~11回平均3.9±2.0回(n=102)であった。
     交配開始より性行動が終息するまでは、平均3.64±2.59時間要し、交配終了後より性行動の終息までの平均時間は1.26±1.66時間であり、比較的短時間で交配が行われ、交配終了後は急速に性行動が終息する傾向が見られた。
  2. 精液性状の消長
     精液性状は一過性に低下するが、その後回復傾向を見せた。特に精液量、精子数については、まき牛開始後より3~4週にかけて、著しい低下傾向を示した。
  3. まき牛繁殖と受胎成績
     平均受胎成績はN種90.1%(95~101頭編成)B種77.4%(60~74頭編成)H種80.4%(40~75頭編成)であり、この結果から、日本短角種雌牛100頑規模に対し、種雄牛1頭のまき牛繁殖についての実用効果が充分認められた。
     まき牛開始後4週めまでに約60%が受胎を完了している。
     まき牛初経験種雄牛、又は放牧初経験種雄牛は、まき牛途中で供用不能となったことから慣し放牧が必要と思われる。

第3章 省力安全集団分娩管理

  1. 分娩事故
     分娩頭数755頭中、分娩事故頭数31頭、分晩事故率は4.1%であった。
     分娩事故内容は、死産(67.7%)が最も多く、次いで生後直死(22.6%)、奇形(9.7%)である。また、死産では特に難産と関係しており、初産牛に多発傾向が見られた。
  2. 分娩予知法(初産牛)
     分娩に先行して起こる外部徴候から見た分娩発来時期と関連の深い部位は乳房、外陰部仙坐靭帯の順に観察された。又、乳房及び外陰部の徴候変化により求められる分娩推定日の適用にあたっては、誤差の範囲に慮意した観察が必要である。

牧草地の電照効果に関する研究

落合昭吾・小針久典・久根崎久二・佐藤勝郎・伊藤陸郎・小原繁男

 オーチャードグラス草地を主体に、秋期収量を高めるための電照方法について検討するとともに、高圧ナトリウムランプの広域照明の実用性についても検討した。

  1. 秋期の照明開始には適期が存在し、当地では9月10日前後であった。
  2. 照明方法は、真夜中の1回照明で、照明時間は3~4時間で増収し、照明期間は平均気温8℃までの45日間が適当と思われた。
  3. 照明草地は夏期の多肥を避け、照明開始10日前頃刈取り照明にそなえる。施肥は多肥ほど増収し、特に窒素の効果が高い。
  4. 増収性を5ケ年の平均でみると10ルクス以上で35%生草増で、10ルクス以下5ルクスでは7%増を示した。市販高圧ナトリウムランプの照度分布面積はそれぞれほぼ10アールであった。
  5. 照明草地は、牧草の生育停止後利用がよく、それ以前の利用又は多回利用は翌年の再生を著しく悪化させた。
  6. 電照草地の年間生産量は、秋期の電照による増収分を加えても数量的には減少した。

 以上電照栽培は、草地での利用のみを目的とした場合、施設費がかかり、多肥を要する割には、当地方では秋冷が早く増収範囲が狭ばめられるため、牧草の生産費は高くつく。又電源が必要なため利用場所も限定される。実用上は、防災、保安等の他の目的も兼ねた多目的利用が望ましいものと考える。

オーチャードグラスの生育に及ぼす肥料形態と施肥比率の影響に関する研究

落合昭吾・佐藤勝郎・久根崎久二・小針久典・伊藤陸郎・小原繁男

 岩手火山灰土壌において、オーチャードグラス草地を用いて緩効性肥料による施肥回数の省略の可能性とともに、肥料形態と施肥比率が牧草収量、草質、土壌に及ぼす影響について検討した。

  1. 緩効性窒素肥料として、IB態窒素を用いた1回施肥が、速効性肥料の3回分施に匹敵した収量分布、収量性を示し、施肥回数を省略した年1回施肥による草地管理が可能なことが知られた。その場合のIB態窒素比率は60%あたりが適量と思われた。牧草生育の平準化を目的とした1回施肥は、硝酸態窒素の蓄積、夏枯れ等からみて9月施肥が適する。緩効性肥料では牧草中の硝酸態窒素の蓄積が少なかった。
  2. 窒素肥料の種類で硝安の収量が高く、次いで硫安が高く、尿素、塩安の順であった。しかし、硫安、塩安では、硝安、尿素に比べ土壌中の石灰、苦土が減少が著しく、又牧草中の含量も低下し、無機成分バランスが悪化した。すなわち、草地用肥料としては硝安系、尿素系の肥料が適する。尿素は熔燐との併用で肥効を減する事が多く注意を要する。
  3. 燐酸肥料は、イネ科牧草の定着には過石燐安の酸性肥料がよいが、マメ科牧草の定着には熔燐、苦土重焼燐等がまさった。土壌改良と苦土補給効果は熔燐で大きいが、追肥に尿素を用いると肥効を減じた。苦土重焼燐は苦土の補給とともに収量性が高く、過石は収量性があるとともに牧草中の石灰を高めた。無機成分上からは、燐酸施肥は全量1回施用よりも窒素、加里との併用分施が望ましかった。
  4. イネ科牧草の収量は、窒素の影響が大きく、次いで加里で、燐酸の影響は小さかった。施肥比率は窒素対燐酸は2対1での収量が高く窒素対加里は1対1で収量の伸びは鈍化した。すなわち、収量からみた施肥比率は2対1対2比率が良好であることを確認した。窒素増施による増収性は窒素対加里(=燐酸)2対1で頭打ちとなった。時期別施肥適量は窒素成分でa当り、春2kg以下、夏と秋は1kg以下で年間で3kg/アール以内にあると思われる。施肥窒素と加里の比と、土壌中の加里含量は、高い相関関係が認められ、これらから施肥の適否が判定できるものと考えられる。無機成分含量とバランスからは、加里に対して窒素が高い施肥比率が望ましいものと思われる。

苦土と加里の施肥量がオーチャードグラスのミネラル含量に及ぼす影響

佐藤勝郎・久根崎久二・落合昭吾・小針久典・小原繁男

  1. 加里の施肥反応は採草地と放牧地では著しく異なる。すなわち、採草地は加里要施用4年目で標準施肥(N 20 -P2O5 10 -K2O 20kg/10アール)に対して約50%減収したのに対し、放牧地では3年目で92%の収量を維持した。しかし、採草地でも加里10kg施用することにより、4年目でも93%の収量であった。したがって、放牧地で窒素に対する加里比率を2対1にしても収量が減収することはないと考えられる。
  2. K含有率と収量の関係を二次回帰式で求めると有意の相関が認められ、最高の収量を得るためのK含有率は採草地4.36%、放牧地4.93%であったが、直線的に増収しているのは3.0~3.5%であった。
  3. 加里の施肥量と牧草のK含有率の間には正の相関、Ca及びMg含有率の間には負の相関が認められた。
  4. 苦土の施用と牧草のMg含有率との間には正の相関が認められるが、加里の多肥により苦土の吸収が著しく抑制される。また、苦土の施用とCa含有率の間には負の相関があり、苦土の施用によりK/Ca+Mg当量比の低下は認められなかった。
  5. 1番草において、Mg含有率0.2%以上K/Ca+Mg当量比を2.2以下にするには窒素10kg/10アールの施用に対して、採草地では加里5kg/10アール、苦土はMgとして10kg/10アールの施用が必要であったが、放牧地では加里無施用、Mg20kg/10アール施用でもK/Ca+Mg当量比を2.2以下にすることが出来なかった。また、水溶性苦土は一時に多量施用すると流亡が大きいので、造成時に十分熔燐等で施用すれば、毎年5~6kgの施用が望ましい。
  6. 土壌の置換性加里と牧草のK/Ca+Mg当量比の間には有意の相関があり、K/Ca+Mg当量比を2.2以下にするには土壌の置換性加里を18.4mg/100g以下にする必要がある。
  7. 土壌の置換性MgO/K2Omg比と牧草のMg含有率の間には高い相関があり、Mg含有率を1番草で0.2%以上にするには、この比を1.42以上に保つ必要がある。
  8. したがって、1番草においてK/Ca+Mg当量比を2.2以下、Mg含有率を0.2%以上にするには、土壌の置換性加里を18.4mg/100g以下、置換性苦土を26.13mg/100g以上に保つことが必要である。

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