岩手県畜産試験場研究報告 第1号

ページ番号1041978  更新日 令和3年4月20日

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乳用子牛育成の慣行技術調査 -主として飼養面について-

村松 緑・吉田宇八・三浦由雄・村田亀松・沼田 茂

第1部 冬季の子牛育成
 この調査は乳用子牛育成技術上の問題点を把握し今後の研究推進の資料とするため、昭和37年総合助成事業として行なわれた8道府県協定研究のうちの本県が担当した飼養面の要約である。

  1. 対象農家の概要
     岩泉は古くからの乳用子牛育成地帯で、経営内に占める比重が高かったが、飼養規模は雫石より小さく、土地の狭小から頭数増大は従来の飼養法による限り限度に来ている。雫石は新興地帯で、土地も広く、米作による収入もあることから、頭数増大の意欲は高く、子牛の売買よりは自家使用により原料乳の生産に主力を置く意図がうかがわれた。
  2. 子牛育成の概要
     岩泉は、全乳主体で3~6カ月で急激に離乱しているが、雫石は2月令以降は脱脂乳脱粉に切換え除々に移行している。エサ付も早期に行なっているが離乳は岩泉より遅い。哺乳量は全く対照的で、岩泉は多く、雫石は少なく、しかも全乳使用量に大差があった。
  3. 使用飼料
     使用飼料の種類構成は岩泉が雫石に比べて単純であった。2、5、10月令の主要飼料の組合せは、2月令で岩泉、全乳、脱脂乳の単用又は併用、雫石は脱脂乳、5月令で岩泉、乾草にワラ類配合、雫石は乾草に脱脂乳、サイレージ配合であった。次に10月令では岩泉で乾草、ワラ類、サイレージ配合、雫石は乾草サイレージ配合であった。
  4. 発育
     標準に比べると、体重、体高とも総じて5、6月令より下廻ってゆく傾向にあったが、体重は離乳期前後の遅滞が目立った。
  5. 給与養分
     NRC標準に比べると、風乾物、TDNは下廻りそれ以降はほぼ直線的に上昇して標準より上廻っている。DCPは全般に上廻っているが、月令に応じた傾向はみられない。
  6. 発育と養分
     発育と給与養分との関係を標準と比べてみると、離乳期を境に体重は下廻り、給与TDNは上廻って相反した結果になっているが、給与風乾物はTDNと同じ傾向で、しかも急激に上昇し、大巾に上廻っている点を考えれば、おそらく、給与飼料が充分摂取されていないのではないかと思われた。また給与飼料内容をみると、離乳期前後は乳類、濃原飼料の給与割合が急激に変動交替する時期であり、その後は粗飼料の給与割合が漸増する時期であることから、離乳期前後の発育遅滞はこの乳類、濃原飼料の給与の関係で、離乳後の発育は粗飼料に影響される点が大きいと考えられる。
  7. 育成技術上の問題点
    飼養面の問題点は次の2点であった。
    イ 離乳期前後の飼料の切換
     両地区とも乳類から濃原飼料、粗飼料への切換が円滑に行なわれているとは言えず、また切換飼料の質に問題があるように思われた。
    ロ 離乳後の給与粗飼料の質
     両地区とも乾草、ワラ類サイレージが主体であったが、給与乾草も良質とはいえず、かつワラ類を使用している点が可食量の範囲ではTDN要求量を満たし得ない原因であろうと思われた。

第2部 夏季の子牛育成
 昭和37年度の調査は、冬季の分であり、夏季の調査を行なうため38年の夏に冬季と同じ地区を冬季と比較し調査した。調査頭数は冬季の半数で各地区80頭であった。調査の結果は発育、給与養分ともほぼ冬季と同じ結果であった。使用飼料は、粗飼料では貯蔵飼料が生草に代り、両地区の立地条件を反映して、岩泉は野草主体に、雫石が牧草一本であり、また冬季、夏季による交通路の便、不便から、冬季より脱脂乳の使用頻度が高かったこと以外に大きな相違点は見出されなかった。
 以上のことから夏季の子牛育成の慣行飼養法は、ほとんど冬季と同じであることがわかった。

肉牛の飼育技術向上に関する試験

村松 緑・吉田宇八・三浦由雄・沼田 茂・加藤実栄・蛇沼恒夫・多田 晃・八重樫広太郎・佐藤彰芳

第1部 肉牛の肥育実態調査
 下閉伊郡山田町豊間根地方の短角牛(雄)の肥育農家40戸について飼養農家を2回にわたって調査した結果は次の通りであった。

  1. 粗飼料はハギ、豆から、稗から、稲ワラ。濃厚飼料は麸、米糠が主である。飼料配合は稲ワラ+ハギ+稗からまたは豆から)で体重比平均1.6%、濃厚飼料は1.1%の量を給与している。夏期は殆んどが野生草を利用しており、給与量は20~30kg、濃厚飼料は体重比1.3%である。給与回数は4回、3回が約半々を占めている。
  2. 250~280日間の肥育成績は1日平均増体量が0.7(±0.1)kgで1kg増体に要したD.C.Pは0.7~1.4、T.D.Nは4.6~8.5kg毎である。枝肉歩留は0.46(±0.02)%である。
  3. 収支決算は飼料及び労力を考慮しないと、1頭当りの畑収入が56,895円となり1日平均210円の粗収入である。

第2部 地帯別の自給飼料による比較試験
 昭和36年度(第1回)、昭和37年度(第2回)にわたり本県の牛の飼育に要する地帯別の自給飼料構成によって肉牛の肥育性を本場で試験した。その結果、乾草生産の不足がちの水田地帯において水田裏作によるイタリアンライグラスのサイレージ給与によって濃厚飼料をより少なくして肉牛肥育の可能性が考えられる。穀類を多く配合された畑地帯では肉質の向上が計られるので牧野の利用によって肥育期間の延長が肉牛の経済的、質的向上の可能性を生じ今後水田地帯、畑地帯の立地条件に相応した肉牛の飼養技術の向上が期待されるものと思われる。

第3部 濃厚飼料の給与差による肥育試験
 本県の若令肥育において、一般的に和牛は去勢牛を用い、短角牛は雄を用いている肥育農家の実情から濃厚飼料の「多」「少」の組合せによる試験を行った結果を要約すると、

  1. 濃厚飼料「多」、粗飼料「少」の飼料構成では和牛、短角牛ともに増体量を増し、枝肉歩留も且つまた肉の外観、質的向上をも計られるようである。濃厚飼料「少」、粗飼料「多」の飼料構成では和牛よりもむしろ短角牛を用いた方が有利と思われる。しかし肉の外観、質的向上には今後検討を要するものと思われる。
  2. 和牛の去勢、短角牛の雄両品種間の比較については一般的に飼育農家が実施している観点に立って行ったが、体重増加、体各部位の発育速度、枝肉の外観肉質等に大きな相違があると思われる。
  3. 屠殺解体成績と枝肉主要部位の測定において、濃厚飼料「多」、粗飼料「少」は概して長さと幅を増している点から肉量と骨量の増大をもたらしているものと思われるので、今後和牛と短角牛の精肉歩留の検討を要するものと思われる。

第4部 人工草地の放牧利用による肥育試験
 肉用牛の若令肥育は相当長期の飼養期間を要するため、人工草地に放牧し、より少ない濃厚飼料で肥育性を検討した。

  1. 放牧飼養において濃厚飼料を補助的に1頭当り500グラムと1.0キログラム給与差における肥育性の影響はほとんど認められなかった。
  2. 放牧飼養では和牛よりも短角牛の方が、粗飼料の利用性が高くより有利性があるものと思われる。

牧野衛生に関する研究

関 毅一・村松 緑・沼田 茂・蛇沼恒夫・及川誠一・戸田忠祐・早川博文

第1部 牧野におけるダニの発生の実態調査
 牧野におけるダニの発生状況を把握するため昭和37年9月より昭和38年9月まで毎月3回10日間隔を原則として自然草地22点、人工草地10点の調査定点(20メートル×20メートル)について調査した結果、次のとおりである。

  1. ダニの発生数は年間を通じて自然草地が人工草地より多く、その発生期間も長い。人工草地では一般にダニの発生は少ないが、ダニが全く無い点はなかった。また、ダニの発育段階別にみた発生状況は幼ダニが8月下旬~9月初旬、若ダニは5月下旬~6月初旬、成ダニは7月下旬~8月上旬にかけてそれぞれ発生のピークが見られる。
  2. 発生するダニの種類は、H.bispinoasが圧倒的に多く、異種では種山牧野で若干のI.ricinusを認めた程度である。
  3. 冬季の野兎への寄生状況は、ダニ発生の多い自然草地帯に生息する野兎に寄生する数は少なかったが、寄生していることを確めた。

第2部 ダニの防除に関する試験
 人工草地と自然草地に生息するダニを防除するため薬剤及び肥料撒布による効果を試みた結果、次のようであった。

  1. BHCr-3%は人工草地のダニ防除には最も効果的であったが、自然草地においては撒布回数によって防除効果を認めることができる。
  2. BHCr-1.5%は人工草地、自然草地とも撒布回数によってかなりの成果を上げることができそうである。
  3. 肥料撒布による殺ダニ効果でほ石灰Nが最も顕著であるが、牧草の枯死が認められるため、これが使用に当っては刈取後または退牧時に使用すれば良いのではないかと思われる。

鉄剤の応用による新生子豚の発育に関する試験

伊藤 菁・村田亀松

 デキストラン鉄100mgを含有する注射剤を生後4日目の子豚の腎筋内に注射して鉄欠乏による貧血防止並びに貧血による発育障害に対する応用の効果を実験した。一部不満な点もあるがその結果を要約すると次のとおりである。

  1. 発育、増体量において顕著な差はみられなかったが、生後50日日の値がF検定により5%水準で有意な差を示し、発育増体量ともほぼ対照区より良い成績を得たことは、その応用の効果を期待できるものと推察される。
  2. とくに生時体重の標準に達しない子豚に良好な発育、増体量が期待できた。
  3. デキストラン鉄剤の腎筋内注射による副作用は全く認められなかった。

 このことから、冬季積雪によって土壌に接する機会の少ない岩手県で、さらにコンクリート床上での繁殖豚による子豚生産に対してデキストラン鉄剤の生後4日目の筋注応用は、貧血を予防し、よりよい発育を期待できるものと思われる。
 なお、今後は補強注射の必要性とその注射の時期的な検討、さらに天然鉄として含有しているものとの比較等を行い、経済性をも検討し、さらに血液とくにヘモグロビン量の消長等の諸調査も進める考えである。

ひなの育成様式に関する研究 -ケージ収容以前における育成様式の相違が産卵等に及ぼす影響に関する試験-

小林 正・中谷地広二・曲谷地好己

 昭和39年4月1日当場ふ化、単冠白色レグホーン種70羽、ロードホーン(RIR×WL)54羽を用い昭和39年4月1日から翌年8月31日までの518日間にわたって、ケージ収容以前における育成様式の相違が産卵等に如何なる影響を及ぼすかについて、バタリー、ケージ区と70日令より130日令まで平飼い以後ケージ区の2通りの育成様式について、白色レグホーン、ロードホーンをそれぞれ2分して調査を行ない、次の結果を得た。

  1. 育成期間中の発育は、平飼い区が地下し後一時遅延の傾向を示したが、以後次第に追上げ、結果において育成様式の相違による影響は少なかった。
  2. 育成率は総じて良好であり、バタリー区と平飼い区との差は認められなかった。
  3. 初産日令は、平飼い育成がバタリー育成よりもやや遅れる傾向がみられた。
  4. 初産体重に及ぼす育成様式の影響は、ほとんど認められなかった。
  5. 産卵率は、バタリー区と平飼い区との差は極めて少なかった。
  6. 産卵指数は、白色レグホーンでは平飼い区がケージ区よりも明らかに良好であった。また、ロードホーンでも平飼い区がケージ区よりも良い成績を示し、平飼い育成がバタリー育成よりも良い結果が得られた。
  7. 卵重は、バタリー区と平飼い区との差はほとんど認められなかった。
  8. 飼料要求率についても、育成様式の相違による差はほとんどみられなかった。
  9. 生存率は、平飼い区がバタリー区よりもよい傾向が認められた。
  10. 経済性を試算した結果は平飼い育成したものの収益が高かったが、特に白色レグホーン・平飼い区が良好であった。

アメリカ鶏の性能比較試験

小林 正・曲谷地好己・中谷地広二

 試験区(アメリカ鶏)は、対照区(場産白色レグホン)に比較し次のことが認められた。

  1. 育成成績及び生存率はいずれも良好で差は少なかった。
  2. 平均初産日令は、ほとんど差は認められなかった。
  3. 体重は、初産時も終了時も品種間に大きな特徴を認めなかった。
  4. 産卵成績は、持続性がやや劣っていたが産卵率は大差がなかった。
  5. 卵重量は、初産卵重以来全期を通じて大きかった。
  6. 卵質については、内容検査はしなかったが、外形質は斉一で且つ優れていた。
  7. 飼料消費量及び要求率は、いずれも差はなく良好であった。

 以上の結果から、「アメリカ」鶏と国産鶏を比較するに一般的にいえることは「アメリカ」鶏は卵重量に富み早熟で強健性のあることは認められる。ただし、国産鶏は全面的に「アメリカ」鶏に劣るとは考えられない。産卵強度や産卵持続性については「アメリカ」鶏以上の性能をもっていると思われるので、今後は早熟性、卵重及び斉一性の改良に重点を置くべきであると思う。

自然草地に対する牧草導入試験

関 毅一・前田 敏・蛇沼恒夫・小針久典・久根崎久二

第1部 除草剤利用による追播
 野草地(傾斜約20°-長草型)に対する牧草追播を殺草剤使用による野草処理で試みた。結果の概要は次のとおりである。

  1. 野草地への単なる牧草追播は、全くその効果を期待し得ない。
  2. 追播に施肥が伴えば、年次の経過と共に(刈取利用-迫肥の繰返し)良好な草地となる。
  3. 殺草剤撒布の効果は、秋期処理ではその差は判然としなかったが、概してクロレートソーダ1.2kg、A.T.A 0.025kgが良い結果を示した。
  4. しかし、いずれの薬剤撒布量でも年次を経るにしたがって野草は減少し、牧草は増大する傾向を示した。

第2部 播種期に関する試験
 傾斜野草地への牧草導入を追播時期(春、夏、秋播き)の面から検討した。その結果、

  1. 牧草の初期生育、刈取後の再生力の強さ、野草処理時期等の違いから追播時期により牧草化の過程が異なった。
  2. 即ち、春播きは刈取と追肥の繰返しにより年内にはほぼ完全に牧草化した。夏播きは次年の春に、秋播きは野草と牧草の競合は最も少なく、越年した翌春の1番刈時にはそれぞれ牧草地となった。
  3. また、マメ科草混入の程度も多少異なり、夏播きはマメ科草の混入は最も良好で年内に既にかなりの定着を示し、次いで秋播きに多く、野草との競合の激しかった春播きでは翌年から、はじめてマメ料草が目立って認められた。
  4. 2ケ年間の収量は、刈取利用回数の違いにより追播時期の間に多少の差はみられたが、肥料効率の点よりみればいずれの時期の牧草追播も変わりなかった。
  5. 以上要するに、野草地への牧草追播は野草と牧草の競合があり牧草化に至る速さに遅速はあるが、いずれの時期の追播も、その後の刈取利用と追肥の繰返しにより変りなく可能であった。

野草地への簡易牧草導入試験

前田 敏・戸田忠祐・蛇沼恒夫・小針久典・久根崎久二

  1. 雑木伐採跡地(下草は主としてササ型野草地)への不耕起による簡易牧草化に対する施肥及び家畜(牛)の導入効果を検討した。
  2. その結果、施肥、播種前後の家畜導入の有無は生草収量には余り顕著な影響を及ぼさなかったが、牧草定着の過程に大きく作用し、牧草と野草の競合を早く有利にすることを認めた。
  3. 施肥は生草収量に大きな効果を示すと共に、野草と牧草の競合を有利に導く上に最も大きい要因と考えられた。
  4. したがって、ササ野型野草地への牧草導入を有利に導くためには、施肥、播種後の家畜の導入もかなり有意な効果を示すことは明らかであるが、肥料に対する感応性の高い牧草の特性を生かし、多施肥による牧草の再生力を助長し、競合を有利に導いて野草を抑圧することが更に大きな効果を示すものであることが認められた。

刈取利用草地における刈取適期決定試験

前田敏・久根崎久二

 夏の高温乾燥期における刈取管理の適、不適は特に草地の生産性、維持年限に顕著な影響を及ぼすようである。
 本試験の結果、オーチャードグラスの刈取は、この時期には10~15cm程度の高刈を必要とし、これを前提としてこの適正な刈取間隔は約40日前後と推定される。

牧草の輪作に関する試験

前田 敏・小針久典

  1. 牧草跡地の有機物による障害を除去するため、石灰窒素施用と天地返し耕起の影響を検討した。
  2. 試験区は、石灰窒素を窒素成分でアール当り0kg、1.5kg、3.0kg施用する3処理と、耕深10cm、20cm、30cmの3処理の組合せによる9処理とした。
  3. 造成10年目のオーチャードグラス優占草地に、昭和38年9月石灰窒素散布後、天地返しの耕起を行い、施肥後イタリアンライグラス、オーチャードグラス、ラジノクローバを播種した。
  4. 耕起深度の影響
    1)1番刈時では、浅耕区ほど草丈伸長が劣り、多少の障害がみられた。
    2)1番刈収量も浅耕地区ほど減収し、障害があったと思われる。4番刈では逆に深耕区の方が収量が少なくなった。
    3)年合計のイネ科収量全収量は、浅耕区ほど低収であった。
    4)年合計のマメ科収量は、浅耕区ほど多収を示した。
  5. 石灰窒素施用の影響
    1)草丈伸長の面では、石灰窒素を施用した方が草丈が高かった。
    2)1、2番刈では、石灰窒素の施用量の多い方が多収を示し、3、4番刈では石灰窒素の無施用の方が多収を示した。
    3)草種別にみると、イネ科収量は石灰窒素無施用の場合更新による障害があるためか減収し、マメ科収量は石灰窒素を施用した方が収量が少ない。
  6. 耕深と石灰窒素との組合せの影響
    1)イネ科収量は30cm耕起の3.0kg施用区が最も多収であるが、石灰窒素1.5kg施用の場合は20cm耕起が、また3.0kg施用の場合は10cm耕起が収量に障害を与えない限度とみられた。
    2)マメ科収量はイネ科収量と逆の順序であり、浅耕、石灰窒素無施用の方が収量上有利である。
    3)マメ科率は浅耕、石灰窒素無施用の方が高く出た。
    4)年間全収量では、石灰窒素を3.0kg施用する場合は浅耕でもよく、1.5kg施用する場合には深耕の方がよく、20cm耕起の場合には1.5kgないし3.0kgの石灰窒素を施用するのが適当と思われる。

牧草跡地の肥料四要素試験

関 毅一・前田 敏・蛇沼恒夫・小針久典

 ラジノクローバ跡地における肥料四要素に対する牧草の感応について検討した。その結果、

  1. ラジノクローバ跡地のラジノクローバの収量はCaO、P2O5に、オーチャードグラス及び混播牧草はNに支配された。
  2. 対照区の収量は、ラジノクローバは主としてP2O5、オーチャードグラスはN、混播はP2O5及びNの欠如において劣った。
  3. 以上から、本試験地の土壌条件下ではラジノクローバ跡地と対照地との差は確然としなかったが、いずれもラジノクローバの場合P2O5の効果が、またオーチャードグラスではNの効果が大きかった。

青刈作物類の施肥量に関する研究 -まき時別レープの施肥量試験-

関 毅一・前田 敏・蛇沼恒夫・小針久典

 青刈レープ栽培における合理的な施肥量の目安を得ようとした。試験の結果は、概ね次のとおりである。

  1. 青刈レープの施肥量に対する生育反応は春まき、夏まき、秋まきの場合で必ずしも同一でない。
  2. 即ち施肥効率は春まきが最も高く、次いで夏まきであり、秋まきは最も低い。
  3. 春まき-夏利用栽培では、Nの効果が大きく、夏まき-初冬利用ではP2O5、また秋まき-春利用では概してK2Oが、それぞれ標準肥に対する増肥効果がみられた。
  4. 各まき時とも標肥の2倍量即ち硫安3.0kg、過石6.0kg、塩加1.0kgが施肥の一応の目安と考えられた。
  5. 青刈レープにおける施肥適量は、季節により三要素間に違いがある故に青刈レープにおける施肥は、季節により標準肥に対し春はN、夏はP2O5、秋播ではK2Oをそれぞれ増量すべきであると考えられる。

人工草地の実態調査

関 毅一・前田 敏・小原繁男・蛇沼恒夫・小針久典・久根崎久二

 放牧利用を行っている人工草地を4ケ所選び、主として草地の利用、管理の面よりその実態を調査した。調査の結果、

  1. 放牧の形態は、集約的なストリップ放牧から全放牧に近い粗放な輪換放牧まで種々見受けられた。
  2. 従って草地の利用率は82%から45.5%までの開きがあり、また1頭当り草地面積も27アールから36アールと、かなり相違ある結果を示した。
  3. マメ科率は、草地の利用度が高いと一般に多い傾向であった。
  4. 産草量は、2,200kg~3,900kg/10アールと差があり、施肥量もほぼそれに比例したが家畜の排泄糞尿による肥料成分を考慮しても追肥量は少なく、特にK2Oが不足と思われた。
  5. 入牧時の草丈は概して高く、それに応じた残草が観察され、不食過繁地の掃除刈も年1回程度であった。
  6. 放牧は、わが国では比較的新しい技術であり、今後放牧草地の利用、管理、保護管理など検討すべき問題点が多い。

問題点

  1. 放牧期間の延長
  2. 草生維持の観点より放牧強度の検討-1牧区の放牧日数、頭数
  3. 利用集約度に応じた牧区の大きさ、数
  4. 放牧に適する草丈-輪換回帰日数
  5. 春の牧草生産の季節的偏り
  6. 糞尿還元効果の検討、放牧地への施肥
  7. 放牧草地用草種の選択、組合せの検討
  8. 輪換放牧技術の体系化

 などである。

サイレージの調製に関する研究

関 毅一・前田 敏・蛇沼恒夫・小針久典・久根崎久二

 本県乳肉牛飼養において、一年の約半分は冬季貯蔵飼料に依存しなければならない。したがって、サイレージは乾草と並んで重要な冬季の飼料の主体であり、質の良否は直接家畜の経済性に関与する。そこでいかにして良質のサイレージを、しかも安易に調製するかが畜産経営上最も重要な事柄と考えられる。

第1部 サイレージの漏汁に関する試験

  1. 高水分材料より浸出する汁液をそのまま放置したサイレージでは、いずれも良品を期待し得ない。
  2. 汁液の排出により良好なサイレージを得るが、漏汁による栄責分の損失は免れない。
  3. 漏汁による養分損失と排汁による製品への効果の二点についての取捨は、漏汁量により決定されるものと考えられる。
  4. 漏汁量は材料の種類、処理の条件その他により当然異なるものと思われる。
  5. 本試験では、れんげ草においては材料粗蚕自質の約10%が失われ大きかったが、ラジノクローバでは1.6%、磨砕馬鈴薯では3.53%と意外に少なかった。
  6. 予乾、添加物の効果も確認できた。

第2部 無切断無踏圧サイレージに及ぼす添加物試験

  1. サイレージの詰込みにおける材料の切断、踏圧の省略は明らかにサイレージ品質の低下をもたらすことを確認した。
  2. PHでは大差なかったが、傾向として添加物区に低いものが得られ、添加物の効果の一端がうかがえた。
  3. 乳酸含量では明らかに添加物区が無切断・無踏圧区において無添加に勝り、添加の効果を示した。
  4. 腐敗歩合、肉眼観察等の結果においても詰込処理の省略を添加物は補っていることを知った。
  5. 以上、切断・踏圧の省略という荒っぽい詰込みにおいて、その品質の向上に米糠、糖蜜飼料の添加は意義があり、特に踏圧の省略による品質の低下に対しその効果は概ね認められるものと考えられる。

第3部 簡易サイロにおけるサイレージ調製試験

  1. トレンチ・スタックともA.I.V液の添加が効果を示し、PH廃棄部、有機酸含量、品質の面で対照に比べ優れたサイレージが得られた。
  2. 廃棄部は、トレンチサイロよりもスタックサイロに多く認められたが、スタックサイロの規模が大きくなればさして問題にはならないと思われる。

乾草調製に関する試験

関 毅一・前田 敏・蛇沼恒夫・小針久典

 本試験は、オーチャードグラスとラジノクローバの混合比率を種々に変えて圃場乾燥を行ない、乾草調製中における水分含量の変化、脱落歩合ならびに多湿条件下における貯蔵中のカビの発生状況を比較検討した。
 その結果は概ね試験目的に予想したとおりで、乾草調製用の採草地は飼養面で許されるなら、イネ科牧草の単播草地が好ましく思われる。

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