岩手県蚕業試験場要報 第20号(平成9年3月発行)
県北部における年8回育対応の桑収穫法
宍戸 貢・伊藤眞二・土佐明夫
- 桑品種「ゆきしのぎ」を用いた、年8回育均等掃立対応の桑園分割と収穫法を組み立て試算したところ、10アール当たり80kg以上の収繭量が得られた。
- 基部伐採後の再発枝の収葉量は収穫時期を問わず刈取枝条長(60~120cmの範囲)と相関が高い。したがって、各収穫時期の枝条長を予想できれば収葉量の推定が可能である。
多椹性桑品種の特性と栽培技術
宍戸 貢・澤口拓哉・佐々木敬治
- ジャム等の加工原料としての桑椹は糖度に加えてある程度の酸味のあることが求められる。剣持・利八・五郎治早生・荒木野桑は完熟となっても酸味が残るものである。
- 椹の大きさはフィカス>岩手1号>剣持であった。
- 仕立・鞍枝法については、3年2回収穫するため、1年目春切、2年目60cm残し剪定・椹収穫、3年目2年古条弱小技残し剪定・椹収穫の整枝法としたところ、3年目の椹収穫量が多かった。椹収量を3年目/2年目でみると、品種によって1.3~17.4の開きがあった。
クワシントメタマバエ幼虫の発生消長調査に基づく適期防除の実証
鈴木繁実・阿部哲哉
浸透移行性が高く、残効性に優れるジュンゾールV乳剤は頂芽内で吸汁加害しているクワシントメタマパエ幼虫に卓効を示すが、現在、桑に農薬登録があるものの殆ど流通していないので、ジュンゾールV乳剤1,000倍液と同じ濃度の薬液をジメトエート43%乳剤とDDVP50%乳剤を混用して調製する必要がある。ジュンゾールV乳剤1,000倍液の有効成分はジメトエート300ppm、DDVP200ppmであることから、ジメトエート43%乳剤で300pm(最終濃度1,433倍液)、DDVP50%乳剤で200ppm(最終濃度2,500倍)に調製するとよい。
蔟中環境の改善による解じょ率向上技術
伊藤眞二・宍戸 貢・澤口拓哉
室内湿度の低下、気流循環、室内空気の入れ替え等蔟中環境の改善方法について検討し、次の結果を得た。
- 営繭中の繭から水分が供給される条件下で、外気と室内の温度差を発生させた場合の上蔟室の相対湿度の変化は3%/℃と回帰された。
- 夜間の外気湿度が90%以上の時でも、外気を導入し暖めて室内温度を2℃以上高くすれば室内湿度を80%以下にすることができる。ただし、外気導入とともに室内空気を排気することが前提条件となる。
- 自然上蔟の場合は蚕児の発育経過を揃えることが重要であり、振込上蔟の場合は装置の作動を1日程度多くする。
- 循環扇は羽根を斜め上方に向けて設置すると天井に沿って流れた風が壁に当たって下降し、床面に沿って循環扇の方に戻る循環気流が得られる。
蚕室・蚕具類の無人消毒に対応した簡易な消毒効果判定法 -ホルムアルデヒドガス濃度の簡易判定と消毒効果判定-
阿部哲哉・鈴木繁実
超微粒子噴霧機を用いて原液ホルマリンを噴霧する蚕室・蚕具類の無人消毒において、消毒効果は吸光光度法によるホルムアルデヒドガス濃度値と関係が高いことが明らかになった。
これを基に、呈色液の色調と濃度値を表示したカラープリントの標準比色板を作成し、現場で利用できる簡易で迅速な消毒効果判定法を確立した。
コウリュウを用いた天蚕の野外放飼育法
澤口拓哉・宍戸 貢・土佐明夫
- コウリュウは、クヌギと比較して耐寒性や再発芽能力に優れ、密植も可能なことから、本県のような気候においても、毎年安定した葉量を確保できることが示唆された。
- コウリュウを用いた同一樹による年間2回飼養試験の結果、1株当たりの飼養頭数は1回目飼養では5頭、2回目飼養では2頭の年間計7頭が限度と思われた。
- 以上の結果から、本県でコウリュウを用いて天蚕の野外放飼育を行う場合、年間2回飼養よりも、卵の出庫時期を6月中旬とし、1株当たりの飼養頭数を増やして年間1回飼養にした方が、繭の生産性の面で有利と推測された。
[資料]桑の発芽・発育調査(付・1996年気象調査表)
瀬川 昭・伊藤眞二・遠藤征彦
(摘要なし)
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