岩手県蚕業試験場要報 第16号(平成5年3月発行)

ページ番号2004923  更新日 令和4年10月14日

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県北部沿岸地帯における夏秋蚕主体の複合養蚕経営の実証試験 -農業体質強化地域拠点試験地設置事業成績-

阿部末男・伊藤眞二・土佐明夫・菊池次男

 夏秋蚕主体の複合養蚕経営について現地実証により検討し次の結果を得た。
1 夏秋蚕主体の桑収穫技術
 北部沿岸地帯の「やませ」や晩霜害等のため春蚕が不安定な地域において、夏蚕以降年間5回飼育により繭の安定生産が確保できた。
2 パイプハウスの周年利用法

  1. 養蚕利用
     専用蚕室の補助飼育施設として、ダイオシートやシルバーシート等で防暑及び保温対策を講じ、技術改善に伴う飼育量の増加分に利用する(専用蚕室の1段飼育改善に伴うはみ出し分の飼育、生産性向上に伴う増加分の飼育、複合蚕期の飼育等)。
  2. 野菜栽培
     春蚕飼育休止に伴う期間を含めた夏蚕までの蚕期前(3月中旬~6月下旬)に「ほうれんそう」を2回、また、養蚕終了後(10月中旬以降)には、「ほうれんそう」又は「さんとうな」1回の栽培が可能である。

畦間走行式条桑刈取機に対応する普通桑園の寄畦多植化改造法

土佐明夫・阿部末男・伊藤眞二・ 菊池次男

 畦間走行式条桑刈取機の導入を前提とした普通桑園の株下げ樹勢更新と苗木の寄畦補植による多植化改造桑園について検討を加えた。

  1. 寄畦多植化改造桑園は造成当年から収葉量が多く、単に株下げ樹勢更新した桑園に比べて3年目では40~60%の増収となった。
  2. 寄畦多植化改造によって広畦を必要とする畦間走行式条桑刈取機(H型、TZ型等)の導入が可能となる。

密植桑園における土壌無機態窒素の消長と桑の生育

宍戸 貢

 桑品種あおばねずみを横伏造成した密植桑園で土壌無機態窒素濃度と桑生育の関係を調査した。

  1. I層(0~10cm)の窒素濃度と枝条伸長速度とは相関が高い。
  2. I層の窒素濃度を10~30mg/100グラムの範囲で維持すると枝条伸長が最も良く、条桑収穫量が多い。
  3. I層の窒素濃度が30mg/100グラム以上では、枝条伸長が遅い時期には伸長が抑えられる。特に、伸長初期はこの傾向が大きく、根群形成などに悪影響があると思われる。
  4. I層の窒素濃度が10mg/100グラム以下では枝条伸長が劣る。特に、5mg/100グラム以下になると伸長が劣り、生膏が旺盛な時期ほど、極端に伸長が悪くなる。
  5. 以上のことから、窒素濃度を枝条伸長初期に10~20mg/100グラム、生育の旺盛な時期に20~30mg/100グラム程度に維持できれば、多収がねらえると考えられる。

桑園における茎葉処理除草剤の秋末処理効果

及川直人・菅原洋一・境田謙一郎・作山 勉

 夏切桑園の春期雑草の防除を目的に、茎葉処理剤(ジクワット・パラコート剤、ビアラホス剤、ビアラホス・DCMU剤、グリホサート剤)を秋末期に散布し、春期の処理効果と桑樹へ及ぼす影響等を考慮した。得られた結果の概要は次のとおりである。
1 処理効果

  1. 早春期は各供試剤とも高い処理効果(雑草発生量:無処理比0~2%)が認められた。
  2. 春蚕掃立時期では、区間差がみられたが処理効果(同25~52%)は認められた。
  3. 少量散布剤(10アール当たり25リットル)の処理は農家技術としても可能であり、高い処理効果が得られた。

2 桑樹に及ぼす影響
 春期の発芽・開葉状況を観察したところ、いずれの薬剤とも桑樹への薬害は認められなかった。

昆虫変態阻害剤「フェノキシカルブ」の蚕に及ぼす影響

鈴木繁実

 昆虫変態阻害剤フェノキシカルブの蚕に及ぼす影響を検討した。得られた結果の概要は次のとおりである。

  1. 濃度別汚染桑を4~5齢蚕児に連続給与したところ、希釈倍率10-10倍までの濃度で中毒症状や化蛹歩合の抵下をひき起こしたが、それより低い濃度では影響がみられなかった。発現した主な中毒症状は5齢起蚕から体色の黄褐色化、食桑不良、不揃い、環節間膜の弛緩、吐液、下痢、5齢飼育経過日数の異常な延長および不吐糸蚕の発生等であった。
  2. 度別汚染桑を5齢蚕児に連続給与したところ、希釈倍数10-10までの濃度で中毒症状や化蛹歩合の低下をひき起こしたが、それより低い濃度では影響がみられなかった。発現した中毒症状は食桑不良、不揃い、環節間膜の弛緩、吐液、下痢、飼育経過日数の異常な延長および不吐糸蚕の発生等であった。体色の黄褐色化は認められなかった。
  3. 10-6希釈液に汚染された桑葉を4~5齢の蚕児に所定期間給与した。4齢期の給与では4・5齢の発育経過および化蛹歩合に及ぼす影響が小さかった。5齢期の給与では発育経過および化蛹歩合に及ぼす影響が大きく、特に、4日間給与および全期間給与では経過遅延が著しく、不吐糸のまま死亡した。

天蚕繭の安定生産技術 第6報 岩手県における天蚕の微粒子病病原感染状況

橋元 進・鈴木繁実・高橋 司・大津満朗

 岩手県内の天蚕への微粒子病病原感染状況と検出された病原の性状を調査し、次の結果を得た。

  1. 岩手県内3ヶ所で飼育された採卵期天蚕の徴粒子病病原感染状況を母蛾検査法で検査したところ、感染率は3.0~20.9%で、飼育場所によって大きな差があった。
  2. 検出された病原は1種で、その胞子は直径3.7μm、短径1.8μm程度の楕円形で、家蚕の微粒子病病原Nosema bombycis の胞子に比べ細長い形態であった。
  3. 本病原は母蛾への感染程度により異なるが経卵感染が認められた。
  4. 本病原に感染した卵から孵化した幼虫は4齢に到達せず死亡し、罹病幼虫の体表面には明瞭な黒斑が認められた。
  5. 微粒子病母蛾検査の能率向上について考察した。

[資料]桑の発芽・発育調査、交雑種比較試験成績(付・1992年気象調査表)

澤口拓哉・伊藤眞二・高橋 司

(摘要なし)

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