岩手県蚕業試験場要報 第7号(昭和57年4月発行)

ページ番号2004932  更新日 令和4年10月14日

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冷夏年における夏季中間伐採枝の再発芽が翌年蚕期の収量に及ぼす影響

壽 正夫・高木武人・境田謙一郎

 桑品種の発育特性を知る一環として、冷夏年の夏秋期に中間伐採して発生した再発枝が翌春蚕期の収穫量におよぼす影響について検討した。

  1. 桑品種の株当たり新梢量は、再発枝の発生の少なかった市平、あつばみどり、大島桑が無再発枝条の新梢量で多く、他の品種は再発枝条の新梢量が多かった。1枝条当たり新梢量では、各品議とも再発枝条の新梢量が多かった。
  2. 再発母条、無再発枝条の平均条径では、条径が太い程再発芽力が強く、条径が細い程再発芽が劣ったが、かんまさり、あつばみどりでは一定の傾向は認められなかった。又、再発母条からの平均再発枝条数は、改良鼠返1.9本、ゆきしのぎ1.4本、ゆきしらず1.3本の発生がみられ、他の品撞は1枝条に平均1本の発生であった。
  3. 枝条別の先枯長は、無再発枝条>再発枝>再発母条であり、無再発枝条では、改良鼠返、ゆきしらずの先枯れが大きく、再発枝では、あつばみどり、しんいちのせの先枯れが大きかったが、再発母条では、各品種とも先枯れは軽微であった。発芽割合では、再発枝>無再発枝>再発母条であり、再発枝の発芽割合が高い傾向を示した。

 以上の結果、夏季に中間した枝条では、条径が太いほど再発芽力が高く、再発枝の発生によって、枝条の先枯れも少なく、再発条の新梢長は長く、発芽割合も高い傾向が認められ、再発枝の発生によって翌春蚕期の収量は増収が期待できるものと推察した。

一戸地方における桑の発芽予想

境田謙一郎・高木武人・壽 正夫

 岩手県一戸地方における1946年から1981年までの18年間における市平および改良鼠返の発芽日と気象との関係から発芽予想について検討した結果は次のとおりである。

  1. 桑の発芽日と気象との関係は市平、改良鼠返ともに最高気温との相関が最も高かった。
  2. 4月下旬の最高気温の観測値を用いて、市平: Y=58.36-1.344X、改良鼠返: Y=64.36-1.482X の予想式が得られ、2日程度の偏差で予想が可能であった。

蚕の人工飼料育の実用化に関する研究(第4報)-既存施設を利用した場合の清浄度および稚蚕人工飼料育における掃立方法の改善について-

橋元 進・河端常信

 簡易な防疫対策を講じた既存の稚蚕飼育施設における清浄度を調査するとともに、稚蚕人工飼料育の掃立方法として、糊付催青台紙の利用について検討し、次の結果を得た。

  1. 稚蚕人工飼料育施設の清浄度調査の結果、飼育前室、飼育室ともに床面からは掃立当日より多数の菌が検出された。
  2. エアークリーナーを設置した飼育室での落下菌は少なく、飼育期間を通じ検出された菌集落の数も安定していた。
  3. 糊付催青台紙を利用して掃立を行った場合、慣行の掃立方法と比較して、毛ふるい率、飼育経過日数、繭質とも大差なかった。

岩手県における繭質の実態解析

河端常信

 繭重と生糸量歩合を座標とする繭質診断図を作製し、東北地域および岩手県の市町村ごとの成績をプロットして繭質の実態解析を試みた。

  1. 繭質診断図は8領域に分類し、各々の領域に評点を与えてその平均値で比較できるようにした。この評点と繭重×生糸量で表わした生糸収率の数値とはよく一致するところから、生糸収率を算出すれば傾向が把握できることを明らかにした。
  2. 東北各県の市町村別の繭重・生糸量歩合成績を診断図に表示して分類し、評点の平均値を求めて各県における蚕期ごとの繭質の傾向を指摘した。また診断図の領域ごとに色分けして地図化し繭質の不良地帯を探った。
  3. 岩手県における市町村ごとの繭質を診断し、その特徴と不良地域について指摘した。
  4. 岩手県における過去23年間の繭質診断を行い、蚕期ごとに繭質の傾向を把握した。
  5. 繭質診断図によって地域別、蚕品種別などの繭質良否の判定に応用が可能であった。また地図化することによって地域における繭質の傾向把握に役立つものと考えもれるが、解じょ率についての地図化と併用すれば実態把握は更に明確になると思わせる。今後は環境要因および技術要因との関係を追求する必要があろう。

飼育温度を異にした場合の給桑経済と繭質

河端常信・橋元 進・大津満朗

  1. 4・5齢給桑量を標準量より節減して給与すると、繭重はやや軽くなるものの食下率が向上するので、節減した給桑量割合より繭重の減少割合は少ない。この給桑経済育では、給桑量節減分だけ飼育頭数を増やすことができ、単位給桑量当たりの収繭量・生糸量が多くなり、10アール当たり収繭量ではむしろ増加し効率的である。
  2. 飼育温度別では25℃恒温区の給桑経済で効果が高く、無保温育では飼育経過の延長で目標給桑量に抑えることが難かしく効果も低くなった。
  3. 東北5場所の比較でみると、岩手のように北に位置する程、繭1kg当たりに要する用桑量は多くなるところから桑葉質も関与すると推定された。
  4. 異常低温などにより桑収量の減収が予想される場合は、標準給桑量を10%減じ、その分に見合う蚕児頭数を増やして飼育することにより、桑園10アール当たりの収繭量、粗収入は標準量区より7%程度増大すると試算された。なお、給桑経済での実際上の留意事項について言及した。

養蚕用薬剤(防錆剤メタレックス、消毒剤ピオチノンエース)の効果と蚕への影響

鈴木繁実・及川英雄

 養蚕用防錆剤メタレックス及びピオチノンエースの効果と蚕に対する影響等について検討し、次の結果を得た。

  1. 防錆剤メタレックスの防錆効果は湿室条件下でも約10日間は有効であり、消毒液に添加してもその効果iこ悪影響はみられなかった。
  2. 消毒剤ピオチノンエースの効果
    1)浸漬による分生胞子殺菌試験では、こうじかび病菌には200倍液15分、黄きょう病菌には400倍液15分で殺菌効果が認められた。
    2)現地稚蚕共同飼育所でホルマリン2%+ピオチノンエース200倍の混用液を散布したところ、こうじかび病菌の汚染度が減少し、ホルマリン2%+アリバンド200倍液よりすぐれた効果を示した。
    3)NPV、CPVにはピオチノンエース50倍液の60分処理でも不活化効果は認められなかった。IFVには50倍液30分処理でやや効果が認められたがホルマリンより劣った。
    4)ピオチノンエースとホルマリン及び消石灰との混用効果について検討した。

[資料]桑の発芽・発育調査、交雑種比較試験成績(付・1981年気象調査表)

境田謙一郎・亀卦川恒穂・大津満朗・及川 論

(摘要なし)

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