岩手県蚕業試験場要報 第4号(昭和54年3月発行)

ページ番号2004935  更新日 令和4年10月14日

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寒枯れ発生地帯における桑葉安定生産技術

都築 誠・川村東平・橋元 進・田口恒雄・高木武人

1 寒枯防止の栽桑技術
 桑枝条の寒枯れは、晩秋蚕期の収穫が早いほど、着葉日数が長いほど、着葉数が多いほど寒枯れが少ない。
 また春肥の多施は寒枯れがやや多かったが、秋施肥では差が認められなかった。
 1~3月、桑園から桑枝条を採取し、挿穂を調整発芽させ、その寒枯れ程度から当該桑園の寒枯れ程度を予測できることがわかった。また桑株内の優勢枝摘梢、初霜期における散水氷結法は寒枯れを少なくする傾向がみられた。
 夏秋主用桑園の収穫型式(夏切、春切、株上春切、株下春切)の組合せによって目標生産量が得られ、寒枯れ発生地帯における収穫体系の確立が可能になった。

2 寒枯れ回避桑技術
 春蚕の飼育を行わないで夏秋蚕のみの養蚕経営形態における桑の収量は、施肥量の増加、干害時の水補給、桑園のポリマルチ等は桑の生育を大きく促進し、またポリマルチは寒枯れ防止効果も認められた。
 収穫法を異にした夏秋蚕期の収量は、全伐形式は少なく、収穫回数の多い形式が多かった。仕立と施肥量を組合せた増収試験では幹・拳数の多いもの、施肥量を多くしたものが多収であった。また桑園の稲ワラマルチは桑の生育が促進され収量が多かった。
 夏秋蚕専用桑園の収穫時期と収穫法について検討した結果、収穫時期の改善によって目標の生産量を得ることができた。

春蚕用蚕品種の夏蚕期における適応性について 2. 採種時期別の蚕種を供用した場合

大塚照巳

 最近多回育養蚕の普及にともない、夏蚕飼育が増加する傾向とともに春蚕用品種を用いる事例がみられるので、主として春蚕用品種を夏蚕期に飼育する場合の適応性について検討した。

  1. 夏蚕期に春蚕用品種を用いて飼育しても夏秋蚕用品種と比較して計量形質に大差なかった。
  2. 接種時期間の比較では春採越年種、秋採越年種、春採即浸種の間で実用形質に大きな差異は認められなかった。
  3. 飼育要領は岩手県飼育標準表(初秋蚕期)によるが、とくに屋外飼育環境下での飼育取扱い蔟中管理は蚕児の生理を害することのないように留意することが必要である。

蚕の人工飼料育の実用化に関する研究(第2報)

大塚照巳・河端常信

 採葉法の異なる桑葉を供用して家畜用の固形乾草(へイキューブ)調製法と同様の方法で処理し粉末としたものを飼料に添加して蚕児飼育を実施するとともに紅藻類を供用し、原藻で造型した人工飼料についてその造型効果を検討し次の事項を明らかにした。

  1. 桑葉成形物粉末添加飼料による蚕児飼育成績は、従来からの熱風乾燥桑葉粉末添加飼料での飼育成績に比べて大きな差は認められなかった。また二期摘梢法による桑葉と先端伐採桑葉とを成形処理した場合の飼育成績を比較すると、前者の成績がやや良好であった。
  2. 春蚕期の残桑を新梢収穫して、成形処理した粉末添加飼料の飼育成績は、熱風乾操桑葉粉末添加飼料育成績に比べて大差ない成績が得られた。成形物粉末を粒度別に添加した結果、粒度0.5mm前後のやや粗い粉末でも飼育には差しつかえなかった。また桑葉成形物粉末はセルロース粉末の代用として利用できる見通しがえられた。
  3. 紅藻類で造型した飼料の造型結果についてみると、切削型給餌をする場合には選定した原藻の中で、寒天原藻(マクサ)混入飼料の造型性、飼育成績が良好であった。

稚蚕人工飼料育における飼育環境の検討 -稚蚕光線条件が人工飼料育蚕の成育に及ぼす影響-

河端常信・壽 正夫

 稚蚕人工飼料育における飼育環境のうち、特に光線が主として稚蚕人工飼料育蚕の発育経過、蚕体重、発育の斉否に及ぼす影響について、1977年~1978年の2ヵ年間において検討した。

  1. 高温育(30℃)では1~3齢の飼育経過が早く、眠蚕体重は重くなるが、収繭量、繭質においては劣る傾向が認められた。
  2. 飼育経過では、明時間が長い程遅延する傾向が認められた。
  3. 毛振るい率では、光線条件、温度による影響は認められなかった。
  4. 4齢起蚕率では、明時間が長い程発育が不斉となり4齢起蚕率が劣る傾向が認められた。
  5. 眠蚕体重では、明時間の長い程重くなる傾向が認められた。
  6. 減蚕歩合および熟蚕出現状況では、光線条件による一定の傾向は認められなかった。
  7. 収繭量・繭質については、明時間が長い程繭重、繭層重ともに重く、収繭量も多い傾向が認められた。

 以上、本試験の結果から、明時間の長い光線条件では、3眠蚕体重が重くなり、繭重、繭層重とも重く収繭量も多くなるが、蚕児の発育経過が不斉となり、特に4齢起蚕率が劣ることから、稚蚕人工飼料育における稚蚕の発育斉一の観点から全暗もしくは1日の明時間は短い方が望ましいと推察されたが、稚蚕人工飼料育における光線条件については更に検討が必要である。

隔日給桑の育蚕技術

河端常信

 複合養蚕経営農家のための合理的育蚕法の一方法として、2日に1回給桑する隔日給桑法について検討した。
 隔日給桑育の飼育装置としては、1段の移動飼育台を利用し側幕・底面には黒色化繊寒冷紗を張り、蚕座中央線に2メートル間隔でヌカ焼器の煙突を蚕座下面から突き出させ、この部分に暖房機のビニールダクトの空気孔がくるように配置する換気筒をたてるようにした。
 本装置で隔日に給桑し、被覆材としては黒色寒冷紗を用いた。その結果、飼育蚕座内温度は若干高くなる蚕期もみられたが、座むれ現象はみられず虫・繭質とも1日1回給桑に比べ大差なかった。しかし繭重が軽目で箱当たり収繭量が少な目になる事例もみられたので、5齢桑付け48時間目に合成幼若ホルモン剤を経皮散布することによって改善されることが確認できた。
 本試験結果を基礎にして隔日給桑の技術内容および実施上の留意事項を示した。

壮蚕立体条桑育装置利用による育蚕技術

壽 正夫

 蚕児の壮蚕期における育蚕労力は飼育期間中最も重労働である。これを解消するため、簡易な飼育装置(壮蚕用立体条桑育装置)の利用により、5齢2回給桑、隔日給桑技術を取り入れ検討を行った。

  1. 5齢期から立体条桑育装置を使用すると5齢飼育経過が短縮するが、4齢期からの使用では蚕座が低位置にあるため環境温度が低く4眠期が延長する。
  2. 立体条桑育装置内の温度は、ハウス内温度と比較し高くなるが、無補温育では飼育経過が遅延し、特に減蚕歩合が高くなるので補温を必要とする。
  3. 給桑量については、給桑量が少ないと繭質が劣るので実情に合わせた適量にすることが肝要である。又、初秋蚕期のようにわい小枝が多く混入すると蚕児のはい上りを悪くする。
  4. 立体条桑育装置は1メートル四方と狭いので条桑の切断回数が多くなり、給桑労力がかかるので5齢期の給桑回数は2~3回と極力少なくする。又、給桑方法が井型給桑のため、条払い、選沙後片付け等上蔟作業に労力を要するので、上蔟作業方法について更に検討したい。

合成幼若ホルモンの育蚕への利用技術

河端常信・壽 正夫・大塚照巳・菊池次男

 条桑育および機械飼育(切断条桑育)で合成幼若ホルモン剤を利用した場合の増繭、増糸効果と経済性について検討した。

  1. 幼若ホルモン剤の使用濃度は高濃度ほど増繭効果は高いが、安全性、経済的視点からみて2.5ppm液が適当であった。
  2. 幼若ホルモン剤2.5ppm液を5齢餉食48~60時間目の蚕体に経皮投与することによって繭重、収繭量を増加させる効果が高いが、飼育日数を延長させる環境下での散布時期は60~72時間の方が増繭効果が高かった。
  3. 機械飼育で幼若ホルモン剤を使用すると経過日数が1日程度延長し、繭重・収繭量も増大した。また熟化促進剤と組合せ利用することによって上蔟作業労働の分散に効果的であった。
  4. 幼若ホルモン剤の増繭効果を高めるには薄飼いにすることであり、その目安は機械育では0.1平米当たり110~140頭の飼育密度であった。
  5. 幼若ホルモン剤と熟化促進剤を組合せ利用する機械飼育の改善体系は、繭質向上と作業平準化が図られ経済的部にも有利であることが現地実証試験でも確認された。
  6. 現地農家で幼若ホルモン剤を利用した結果でも、箱当たり収繭量を増大し、生糸量歩合も向上することが明らかにされた。
  7. 上記の試験結果を基礎にして合成幼若ホルモンの育蚕への利用技術内容を確定し、実施上の留意事項を付記した。

岩手県における繭質の実態分析

河端常信

1 蚕品種別にみた生糸量歩合、解じょ率

  1. 春蚕期において検定荷口件数の多い品種は太平×長安、陽光×麗玉であり、次いで千春×万花、春月×宝鐘であった。品種別の生糸量歩合をみると陽光×麗玉が劣ったが、その他品種では差がなかった。品種別の解じょ率では陽光×麗玉、春月×宝鐘が劣った。なお解じょ率は各品種とも荷口間の変異が大きかった。次いで蚕品種(出荷荷口)の平均成績と交雑種比較試験(蚕試)の成績と比較した結果、とくに解じょ率で両者の差が大きく、現地出荷々口の成績は不良であった。
  2. 初秋蚕期の生糸量歩合をみると秋光×竜白、昭華×新生が劣り、解じょ率では昭華×新生、錦秋×鐘和が劣った。交比成績と比較した結果、現地出荷々口との間に差がなかった。
  3. 晩秋蚕期では錦秋×鐘和の生糸量歩合が劣る傾向がみられたが、解じょ率では春・初秋蚕期に比べると各蚕品種とも良好であった。交比成績と比べても各品種とも差が少なかった。
  4. 各品種について生糸量歩合と解じょ率の相関をみると、春では密接な関連があり生糸量歩合の低い荷口では解じょ率も不良であった。初・晩秋蚕期は両者間に関連はみられず、また初秋では生糸量歩合の荷口間の変異が大きい傾向がみられた。晩秋でも荷口件数の多い昭華×新生、錦秋×鐘和では解じょ率の変異が大きかった。

2 地域別にみた生糸量歩合、解じょ率

  1. 春蚕繭の生糸量歩合および解じょ率が低位および上位成績を示した地域は次のとおりである。
    生糸量歩合:低位 北上、遠野、胆江、西磐井
          上位 盛岡、久慈、東磐井
    解じょ率: 低位 北上、胆江、遠野
          上位 東磐井、下閉伊、盛岡、久慈
     なお解じょ率の変異係数は大きいが、とくに平均解じょ率が劣る地域でその傾向が顕著である。又生糸量歩合と解じょ率の相関はどの地域でも密接に関連し、解じょ率の低い荷口は生糸量歩合が高いことを示している。
  2. 初秋蚕繭の地域平均生糸量歩合が17%台を示したのは北上、遠野、二戸、盛岡、東磐井、下閉伊であり、解じょ率が50%台を示したのは西磐井、北上であった。生糸量歩合で変異係数の大きい地域は二戸、北上であり解じょ率では盛岡、久慈の変異が大きかった。
  3. 晩秋蚕繭の生糸量歩合が17%台を示したのは盛岡、二戸、北上、西磐井、胆江であり、解じょ率は一般に良好であったが60%台は気仙、西磐井、胆江地域であった。

3 過去19年間の交比成績(春)と気象要因との関係について分析した。その結果、上蔟時期にあたる6月下旬の日照時間と解じょ率では正の相関が認められ、気温および相対湿度とは負の相関が認められた。

4 繭検定所の調査からみて春蚕期の生糸量歩合17%以下の低荷口件数は総体の14%を占め、'76年の206%と多かった。その原因を指導所で調ベた結果、桑不足25%、未熟桑給与20%、蟻蚕冷蔵15%、厚飼11%の順であった。解じょ率では57%以下の低荷口は全体の51%を占め、'76年の333%を示した。その主原因としては保温、換気不良31%、多湿環境30%、こもぬき遅延9%、異常高温9%をあげている。初・晩秋蚕繭では、生糸量歩合の低位荷口は2~5%と少なかったが、解じょ不良荷口は15~30%と多かった。その原因としては換気不良、異常高温、上蔟施設(土間)をあげるものが多かった。

5 今後の改善方法
 本調査結果からみて次の事項が指摘できる。

  1. 生糸量歩合をみると蚕試成績と比べて、春・晩秋蚕期は7%劣り、とくに県中央部の成績が劣った。本年の気象条件をみると、春先の異常低温により桑の発芽が2~9日遅れ、掃立を2日程度平年よりおくらせているが桑不足気味の条件下で飼育が行なわれたことが影響したものと思われる。しかし例えば二戸地域でみられるように各蚕期を通じても最高・最低開差が極めて大きく、飼育環境条件、桑葉質等に問題が存在していることを示している。一方、経営規模が比較的大きい例えば西磐井地域では、大型化に伴なう省力養蚕がともすれば粗放化の方向にながれているのではないかと反省すべき点があるように思われる。とくにこの地域では一般に厚飼いであり、条払い体系のため上蔟直前の給桑量不足等が生糸量歩合に影響しているものと思われる。協業養蚕がこれら地域に集中しているのも象徴的である。
  2. 解じょ率については20%程度は蚕品種に、80%程度は上蔟条件等に影響されるという考えが支配的である。解じょ率を向上させる技術としては、上蔟環境の適正保持とくに換気をはかること、上蔟室の面積を広目にとること、排尿処理を適切に行うこと、等が指摘されている。本調査結果からみると、品種別でも地域別でみてもその変異が極めて大きいことに驚く。最近の蚕品種は適正な飼育管理、上蔟環境の設定が必要であり、異常気象下の飼育・上蔟では繭質の変異が大きいようである。この視点から品種選定ならびに上蔟中における総合的な保護・取り扱いについて再検討する必要があると考えられる。なお、上蔟改良に努力しても生糸量歩合を重視する現在の繭価算定法では農家側で納得できない面があることも指摘できよう。
  3. 試験場としては次の事項について調査をすすめる必要がある。
    ア. 飼育上蔟条件と繭質の実態把握
    イ. 気象要因と繭質予測
    ウ. 現行蚕品種における飼育・上蔟不良条件累積限界と繭質
    エ. 寒冷地桑栽培特性と繭質

酸性土壌の改良に関する試験 -鉱滓の施用が桑の生育に及ぼす影響-

八重樫誠次・菊池宏司

 鉱滓(てんろ石灰)の施用が桑の生育に及ぼす影響について、酸性がやや強く、珪酸苦土などが不足している土壌を用いて試験したところ、鉱滓の施用は、炭カル、珪カルと比較して、枝条の伸長および、乾物生産量がまさり、とくに地下部の発育が顕著であった。

桑胴枯病の発生実態

及川英雄・鈴木繁実・川村東平

 桑の主支幹に発生する胴枯病を重点に桑品種、樹齢、収穫型式、立地条件等と被害との関係を検討した。

  1. 桑品種別の発生実態では、従来から植栽されている改良鼠返、剣持の被害が大きく、とくに以前から積雪寒冷地向け品種として導入されていた剣持は、高根刈仕立において改長鼠返と大差のない被害率であった。しかし最近導入されたゆきしのぎ、新桑2号は、剣持に比べて胴枯病の被害が少なく、安定した抵抗性を示した。なお、胴枯病菌の接種による桑品種間の発病の差異では、新桑2号、ゆきしのぎ、五郎治早生、かんまさり等の胴枯病抵抗性品種は病斑が小さく、一ノ瀬、改良鼠返、しんいちのせ等の罹病性品種は病斑が大きく発現した。
  2. 剣持について樹齢期に胴枯病の被害実態をみた場合、枝条の被害率では樹齢による差異は少ないが、主・支幹では3年目から4年目に被害が大きく発現し、5年目以降は樹齢の進むにしたがって被害率が低下した。とくに4年目以降は、旧病斑の周囲に新しく病斑が拡大進展した新旧病斑が増加し、前年の被害に上積みされる累積的な被害が目立った。
  3. 年5回の多回育に対応するためにつくられた6型式の桑の収穫型について胴枯病の被害実態を調べた結果、春切および株上げ春切りに被害が多く、夏切および株下げ春切りは被害が少なかった。
  4. 小さな段丘地の桑園における胴枯病の発生状態は、低地に被害が多く、丘陵地では被害が少なかった。
  5. 密植桑園では胴枯病が発生しやすい傾向がみられた。

予察燈による桑園害虫の発生消長

鈴木繁実・及川英雄

 1971年から1977年まで桑園害虫の成虫誘殺調査を行い、次の結果を得た。

  1. 誘殺数の多かった種類はクワヒメハマキ、クワゴマダラヒトリ、キハラゴマダラヒトリ、アカハラヒトリ、モンシロドクガ、シロモンヤガ、クワコ、ヒシモンヨコバイおよびヒシモンモドキであった。
  2. 誘殺数の少なかった種類はアメリカシロヒトリ、クワノメイガ、スカシノメイガ、クワエダシャク、ヨモギエダシャク、ツマトビキエダシャクであった。
  3. これら8科15種の誘殺数は年次による変動が大きくあらわれた。
  4. クワヒメハマキ成虫の50%誘殺日は、その年の4月と5月の10時平均気温との間に r=-0.922の高い相関があった。Y=-2.737X+134.505の予察式が得られた。
  5. クワゴマダラヒトリ成虫の50%誘殺日は、その年の6月の10時平均気温との間に r=-0.788の高い相関があった。Y=-2.77X+128.192の予察式が得られた。

蚕室蚕具消毒剤としてのV-118の効果ならびに蚕への影響

鈴木繁実・及川英雄

 ジクロール酢酸を主成分とするV-118剤の蚕室蚕具消毒剤としての効果および蚕に対する影響等について検討し、次の結果を得た。
 
1 糸状菌に対する効果

  1. 浸漬による分生胞子殺菌試験では、こうじかび病菌には20倍液10分、B.bassiana菌、緑きょう病菌、および黒きょう病菌には40倍液10分で殺菌効果が認められた。
  2. 材内侵入こうじかび病菌の浸漬殺菌試験では、20倍液の30分処理でも効果が認められなかった。
  3. 散布消毒試験では、10倍液の坪当たり2リットル散布で、こうじかび病菌に対する消毒効果が認められた。

2 ウイルスに対する効果

  1. NPVおよびFVは、30倍液10分間の浸漬処理により不活化された。
  2. 散布消毒試験では、10倍液の坪当たり2リットル散布でNPVに対してはホルマリンとほぼ同等の効が認められた。

3 蚕への影響
 浸漬消毒した催青容器を供用し、催青による蚕卵への影響を調べたところ、死卵が多発し、悪影響がみられたが、消毒蚕室内での飼育では、虫質・繭質に全く影響が認められなかった。
 
4 各種用材への影響
 鉄、トタン、ブリキ、シンチュウ、アルミニウムに対して腐食あるいは変色をひきおこしたが、木綿、化繊には影響がなかった。

春蚕用蚕品種の夏蚕期におけるウイルス感受性

鈴木繁実・及川英雄

 夏蚕期に適応する蚕品種および採種時期を選択する1つの指標としてCPV、FVに対する抵抗性・感受性という観点から比較した。

  1. 春蚕用品種は夏秋蚕用品種よりCPV、FVに対する感受性が大きい傾向にあった。
  2. 越年種を夏蚕時まで保護した場合、即浸種と比較してCPVに対する感受性には大差がなかった。

県内養蚕農家における蚕病ウイルスの分布と軟化病の発生実態

鈴木繁実・及川英雄

 岩手県の養蚕農家における蚕病ウイルスの分布と軟化病の発生実態を調査し、次の結果を得た。

  1. 養蚕農家のじんあいおよび床面土壌357点を採集し、その中に含まれている蚕病ウイルスを分離したところ、144点が検出された。NPVが最も多く、次いでCPVが検出されたが、FVは少なく6点のみが検出された。小型軟化病ウイルスは検出されなかった。
  2. 蚕病ウイルスの地域的分布をみると、NPVとCPVは県内全域にわたって分布が認められたが、FVは県南部の千厩町、大東町、藤沢町、室根村、住田町、一関市と県北部の一戸町に分布が認められた。
  3. 県南部においてウイルス性軟化病の発生による違作が確認された。

蚕室蚕具類消毒剤としてのホルマリン・アリバンド混合濃度の再検討

及川英雄・鈴木繁実

 こうじかび病菌を対象として、ホルマリン・アリバンドの混合濃度と消毒効果の関係を検討した。

  1. 県内の稚蚕共同飼育所から分離したこうじかび病菌株について、ホルマリンとアリバンドの混合濃度別に薬効を検討した結果、これまで常用されていた3%・500倍の混合液に対して耐性を示す菌株がみられ、とくに20℃以下の低温では著しく薬効が低下した。
  2. 材質内(竹材)のこうじかび病菌に対しては、ホルマリン3%・アリバンド50倍の混合液30分処理でも効果が不充分であった。
  3. 1978年に県内の全稚蚕共同飼育所から採集分離したこうじかび病菌について、ホルマリンまたはアリバンド混入培地での発育状況をみた結果、ホルマリンでは0.1%混入培地で34/45菌株が発育し、アリバンドは200倍混入培地で43/45菌株が発育した。
  4. ホルマリン・アリバンドの実用的な混合濃度は、前記の結果から2%・200倍が適当と考え1978年から県内に普及し、その効果(実態)を調べた。その結果は必ずしも充分な消毒効果ではなかったが、問題点として消毒の際の保温、散布量等に不備があることを指摘した。

7月における桑の凍霜害と被害後の発育状況

都築 誠・高木武人・川村東平

 1976年7月1日に岩手県北部および北上山地、中北部に降霜があり、山間高冷地帯の桑園にも被害がみられたのでその桑園の一部で被害状況とその後の発育状況を調査した結果は次のとおりである。

  1. 降霜時における調査桑園の桑の発育状況は36.0~59.7cm、着葉数は12.0~14.5枚であった。
  2. 被害葉数割合は総着葉数の47.0~72.5%で、被害の重みは重被害葉数27.8~55.8%、軽被害葉数15.4~24.1%で重被害葉の割合が高かった。
  3. 同一圃場では傾斜の低地や窪地、仕立では低い仕立の被害が多かった。
  4. 被害桑園の収量は、褐変葉の下で処理したものが多く、次いで無処理、縦線芽の上で処理したものの順であった。

傾斜地桑園におけるモノラックの運搬能率

都築 誠・高木武人・川村東平

 傾斜地桑園の物資運搬労力を大きく省力する目的で、モノレール型式運搬機モノラックについて傾斜5°~26°の条件下でモノラック軌条距離104メートル、入力運搬距離184メートルで、その性能と運搬能率について検討した。

  1. 本機の性能について傾斜軌条における走行速度は、上り走行および下り走行や積載荷重の多少などによって大差がなく、荷重200kg積載して秒速0.9~1.0メートル台の速度で円滑に走行する。
  2. 物資の運搬能率においては、本試験の範囲では、モノラック運搬は入力運搬に比べ肥料の運び上げでは11倍、条桑の運び下げでは4.4倍の能率をあげた。

 以上のことから、モノラックは傾斜地桑園用運搬機として性能の極めて高いことが認められた。

[資料]桑の発芽・発育調査、交雑種比較試験成績(付・1976~1977年気象調査表)

及川直人・川村東平・壽 正夫

(摘要なし)

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