岩手県蚕業試験場報告 第7号(昭和40年6月発行)

ページ番号2004912  更新日 令和4年10月12日

印刷大きな文字で印刷

桑園における土壌微生物層に関する研究

原田 武

 桑園における土壌微生物の分布と人力が土壌微生物相に及ぼす影響について調査し、これらの桑園における肥培管理上の指針となり得るものであるかを検討したものである。

  1. 土壌深度・土性と微生物の関係は洪積層、沖積層ともに層位15cm附近に微生物の分布が最高で、次いで30cm附近、表土となり、50cm以下になると急激に減少している。また洪積層に比べて沖積層における減少の度合は緩慢であることが認められた。
  2. 季節的変化は、4・7・10月3回の調査においては7月に多い傾向が認められた。これは、気象的にも7月が微生物の繁殖活動に好適地温であるためと推定される。
  3. 土壌中の腐植含量が高くなれば、微生物数もそれに比例して増加している。これは有機物添加試験によっても明らかなように、有機物は他給栄養微生物に必要なものであり、有機物の添加→腐植含量の増加→微生物の増加になったものと推論した。
  4. 土壌の酸性反応と同時に活性化したAlが細菌、糸状菌の劣性の原因になっているが、糸状菌の活動には抑制効果が認められない。
  5. 桑園の畦間に草生栽培(Clover)することにより、上層部における微生物の繁殖活動を旺盛にした。これは、上層部において日光による殺菌作用や乾燥を抑制する効果があったものと考え、桑園に土壌養水分の競合の小さい草生を栽培することにより、土壌水分の保持と同時に微生物の活動をも盛んにすると考えられる。
  6. 耕転することにより、空気の流通がよくなり酸素が供給されて微生物の活動が旺盛になるが、過度の耕転は却って徴生物活動を抑制する結果になるようである。微生物を考慮した管理からすれば耕転は年1回、とくに冬耕1回行うのが効果的のようである。
  7. 肥料添加による微生物の変動は蚕沙、堆肥、尿素、硫安の添加によって細菌、糸状菌が急激な増殖をみたが、他の肥料は変動がみられなかった。とくに蚕沙などの新鮮な有機物は施用されてから微生物の作用をうけるので増殖が著しかったと考えられる。
  8. 桑園の畦間に敷わらすることにより表層において微生物の増殖をみた。また稲わらを土中堆肥として施用した場合、層位0~30cmにおいて糸状菌の増殖が認められた。このことは5. 、7. の草生と肥料添加のところで記述したような原因と推定できる。
  9. 雑草、害虫、病原菌の駆除に用いられている薬剤、肥料の中には微生物の活動を抑制するものと旺盛にするものがあり、石灰窒素の細菌、糸状菌およびクロルピクリンの細菌ではいずれも増殖したが、PCP尿素、ネマナックスの細菌、糸状菌およびクロルピクリンの糸状菌では繁殖活動が阻害された。
  10. 各種除草剤は、CATを除いて土壌中の微生物数をかなり減少させた。このことば除草剤中に殺菌性または微生物の生長抑制物質が含まれていると推定される。なおCATは除草効果も大きく、桑に対する薬害も認められなかった。
  11. 敷条により層位0~15cmの範囲における細菌、糸状菌の増殖が著しく、対照区より3~5倍の数値を示し、敷条の効果が認められた。なお、放線菌においては変動は殆んどみられなかった。
  12. 以上の結果を総合すれば、桑樹根圏土壌における微生物は土壌の理化学的組成、季節、人力等の環境条件の組合わせによって大きな影響をうけることが判明した。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

岩手県農業研究センター 企画管理部 研究企画室
〒024-0003 岩手県北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4402 ファクス番号:0197-68-2361
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。