岩手県蚕業試験場報告 第3号(昭和35年3月発行)

ページ番号2004916  更新日 令和4年10月12日

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糖質代謝からみた蚕の強健性について

宮坂義三

 家蚕5令期に連続ショ糖を添食した場合、並びに1~2令期及び5令期に葉質の異なる桑葉をそれぞれ連続給与した場合に、5令蚕児の体液中還元物質(真糖、総糖)の消長、生体重増加及び強健性に及ぼす影響を調べ、次の結果を得た。

  1. ショ糖を添食された蚕児の血糖量は、添加した糖の量に応じて平衡的に増減した。生体重は添加した糖の量が少ないと重くなり、多いと軽くなった。その限界は添付ショ糖水溶液濃度5~10%の間にある。
  2. 糖の増給が継続すると血糖量は異常に高まり、蚕は体腔型多角体病(併発か否かは不明)の症状を呈するようになる。また蚕が体腔型多角体病になると血糖量は異常に高まり、軟化病(中腸型多角体病を含む)になると低下した。後者は絶食蚕のそれと同じ傾向である。
  3. 5令期において葉質の異なる桑葉を与えると、血糖量は桑葉の糖含量に応じて変動し、特にその還元糖含量が血糖を増減させるに支配的のようである。また1~2令期のみ葉質の異なる桑葉を給与しても、5令期血糖量には特に著明な傾向の差はあらわれないが、概して硬葉は血糖量を高め、体腔型多角体病を多く誘発した。
  4. 蚕はある程度の血糖調節能を有するが、至適範囲を超えると異常を呈してくる。このように平衡が崩れ低血糖に傾くと軟化病が、高血糖に傾くと体腔型多角体病の発生が附随する。したがって、桑葉中還元糖含量-血糖量-強健性は密接な関連を有することを推定した。

家蚕の水分代謝に関する研究(第1報)

宮坂義三

 春、初秋、晩秋の3蚕期について、1~2令期(晩秋)および5令期に葉質を異にして飼育した場合の5令期体液水分率の変化並びに、蚕体の器官および組織の水分率の変化に及ぼす影響を調査し次のことを知った。

  1. 蚕の体液水分率は、一般に軟葉給与によって高くなり、中葉では低くなるが、硬葉(水分率70%附近以下と思われる)では高くなる事実が判明した。
  2. 稚蚕期の極端な硬葉給与は、5令期体液濃度の変調を来たし、減蚕歩合を多くした。
  3. 食下する桑葉の含有水分量の多少は蚕体の器官および組織の水分率をも左右し、その間に水分平衡の関係が存在することを推定した。
  4. 葉質の差異により体液率に明らかな差がみられ、桑葉水分-体液濃度-体液率は健康度と密接な関連が存在することを推定した。

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