岩手県立農業試験場研究報告 第6号(昭和38年3月発行)

ページ番号2004872  更新日 令和4年10月6日

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火山灰新開田における稲作改善に関する試験

菊池猛雄・鎌田嘉孝・大川 晶・佐々木昭四郎・佐々木信夫・増戸靖久・大槻 斎・佐藤正栄・高橋藤五郎

 東北地方に広大に分布する火山灰土壌は、その位置・地形並びに土壌的性格からみて、沖積土壌とは著しい相異があるが、従来火山灰水田の稲作技術は沖積地帯の技術をそのまま導入していたために、生育遅延・イモチ病の激発等のために低位生産地帯或は冷害常習地帯とされてきたのである。

 この低収且不安定性の原因は、その母材的因子及び堆積様式に由る所が大きい。従って火山灰水田の稲作技術は、これら土壌の特性に応じた耕種・肥培並びに土壌管理技術の確立にあり、その要点は漏水・冷水及び燐酸欠乏という点に集約されるものと思われる。

 冷水に対しては溜池・迂廻水路等の水温上昇施設の必要であることは当然であるが、更にベントナイトの客入や床締によって極端な漏水を防止することは、水地温を高め養分の流亡を防ぎ、初期生育を旺盛且促進せしめるものである。しかし過度の漏水防止は用水の節減並びに収量構成要素の増大には有利であるが、その反面土壌の還元や必要以上の肥効の持続を招き倒伏や赤枯れの発生等により収量決定要素の低下をもたらすものである。

 又施肥法としては、燐酸の多施用が基本条件であり、これと窒素・加里その他の養分が伴ってはじめて初期生育を旺盛にし、出穂を早め且稔実を良化し、低温年における生育遅延と登熟不良を防止するものであり燐酸は安定因子として作用しているのである。又燐酸の体内での生理作用は苦土の共存によって一層高められるのであり、この点過石と熔燐の併用は効果的であることを明らかにした。しかし燐酸の多施用は、後期窒素不足を来しやすく、窒素の供給が続かない限りは収量構成要素の低下によって増収とはなっていない。

 一般に酸性火山灰土壌では、有効珪酸・石灰及び苦土に欠乏している場合が多く、これの補給によって後期生育と稔実を確保すべきである。以上のような対策技術は、部分的に採り入れるのみでは、その効果は少く、綜合的な技術体系として実施する必要がある。勿論現実の開田地では、このような技術以外の因子-工事遅延による植付適期の遅れ、作土の不均一性等々-が、特に開田当初では生産を支配することもあるが、当胆沢地区の開田では、本研究の結果が実際に適用されており、これによって開田当初より予想以上の効果を挙げているのである。

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