岩手県園芸試験場研究報告 第3号(昭和48年3月発行)

ページ番号2004883  更新日 令和4年10月6日

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リンゴ斑点落葉病に関する研究

平良木 武

  1. リンゴの斑点落葉病は、1956年7月、岩手県胆沢郡前沢町および水沢市佐倉河地区において、発生を見たのが最初である。
  2. 本病は、主として印度およびデリシャス系品種に発病し、7~8月ころ、葉に褐色不整形の斑点を生じて早期落葉するため、果実の肥大は停止し、樹勢は著しく衰弱した。
  3. 1958年には、発生地域がほぼ県下全域のリンゴ栽培地に波及した。
  4. 本県における発生確認から1~2年後の、1957~1958年には、東北各県および長野県のリンゴ栽培地で発生が確認され、現在では、北海道の一部を除いた全国のリンゴ栽培地に広く分布し、被害の激しいところから、リンゴの主要病害として取り扱われている。
  5. 本病の発生原因について究明した結果、病斑部から数種の寄生菌を分離した。さらにこれらの菌について、それぞれ寄生性を検討した結果、Alternaria maliが、無傷でも常に強い寄生性を示すことから、本病の病原であると結論した。
  6. 病斑部から常に分離される、Alternaria属菌以外のPhyllosticta sp.、Sphaeropsis sp.、Mycosphaerella sp.、など数種の菌は、いずれも有傷感染に限られるところから、二次的な腐生菌であるものと推定した。
  7. 本病は、葉では5月中、下旬ころから、紫褐色針頭大の小斑点として発現し、重紋を措いて不整形に拡大し、病斑中央部に胞子を産生して煤状を呈する。
  8. 果実においては、幼果期に感染した場合、黒紫色の小斑点を形成し、やがてカサブタ状となって脱落する。成果期に感染したものでは、果点を中心に褐色円形、やや乾腐状の病斑を形成する。
  9. 枝梢の病斑は、1年枝に多く見られ、褐色20×10mmくらいの、陥没した乾腐状の褐色病斑を形成する。
  10. 本病の発生消長は、葉では5月下旬ころから見られ、7月中、下旬に急増し、8月中、下旬にまん延盛期となり、10月中旬に終熄する。果実での感染は、5月下旬の幼果期から10月中旬まで続くが、その盛期は7月中旬~9月中旬である。
  11. 発病に関与する気象的要因は、高温多湿である。本病の病原であるAlternaria maliは、25℃~28℃の温度、90%以上の湿度条件で、発育が好適し、感染が容易である。
  12. 葉令と発病との関係は深い。夏秋期の葉上発病が徒長枝葉に多いことは、当時の展葉が活発なため、若葉への感染が多くなることに起因する。
  13. Alternaria maliの分生胞子は、5月から10月までの、リンゴの全生育期間にわたって飛散するが、その飛散盛期は、7月中~8月下旬のほぼ50日である。
  14. 第一次伝染源は、枝梢病斑上に形成される分生胞子が主体で、被害落葉病斑からの胞子飛散は、きわめて少なかった。
  15. 品種による罹病性の強弱では、印度、デリシャス系およびこれらの交雑種で罹病性が高く、紅玉、祝、旭などでは発病が見られず、これらを耐病性品種と判定した。国光、ゴールデン・デリシャスなどは、その中間型とみられる。
  16. 枝梢越冬の病源を防除する殺菌剤としては、室内試験の結果、クロン加用サンソーゲンが有効であった。
  17. 生育期間中の有効な防除剤の散布により、越冬菌密度が著しく低下し、次年産の発病が抑圧されることが判明した。
  18. 生育期の防除剤は、予防的効果がすぐれるが、治病的効果はほとんど期待できなかった。
  19. 葉上病斑上における分生胞子の形成を阻止する殺菌剤として ポリオキシン剤、ダイホルタン、TPN剤の効果を認めた。
  20. ポリオキシン剤は、Alternaria maliに作用して胞子の異常発芽をおこすことを確かめ、生葉に吸収され 移行して殺菌性を発揮することを明らかにした。
  21. 果実感染の防除手段としては、パラフィン+殺菌剤含有の防菌袋が、菌の貫通を阻止し、防除効果の高いことが判明した。
  22. 秋期高温多雨に経過し、発病が続く場合は、除袋後においても感染が続くため、除袋後における有機殺菌剤散布の効果が高い。
  23. 本病の防除体系としては、5月下~6月の初発期には、防除効果の中庸な防除剤を用い、7月中~8月下旬にかけての多発期に、効果の高い防除剤を数回使用することが望ましい。

除草剤散布の省力化に関する研究 除草剤散布装置の試作開発とその効果

菅野広義・神 昭三

  1. 本報告は果樹園における除草剤散布の省力化を目的に1965~1972にわたる試験結果、並びに試作開発した除草剤散布装置について発表したものである。
  2. 散布方法としてPCPノズルの利用は吐出量が多いこと、走行中のわずかな傾斜により吐出角度が大きく変化し、散布むら、薬害の問題があり実用化には到らなかった。
  3. Vノズル、Tジェットノズルの使用は散布効果が勝れ実用性は高かったが、供試散布装置では樹冠下の散布が出来なかった。
  4. 果樹園草生管理に除草剤(グラモキソン)を通年利用した場合、草生の強弱により散布回数は異るが強い場合は年4~5回、弱い場合は3~4回の使用で可能であった。
  5. 樹冠下散布用に試作した散布装置は長竿による低圧広巾垂直散布方式で、2段階の障害回避機構を備えたことで樹冠下の散布が極めて容易にかつ安全均一にでき効果的であった。
  6. 散布装置の効率は大面積で巾広く散布する方法が効果が高く、動噴手散布3人組作業に比較し、散布時間で約6分の1に、使用薬量(散布量)は約70%節減され、労力的にも一人ですむ等の利点が認められた。
  7. 散布装置は地形の複雑な急傾斜では使用が難しく改良の必要があるが、平担地を始め緩傾斜地には使用可能である。
  8. 散布装置の使用法は基本的には散布速度時速1~2km、散布量10アール当り100~150リットル、散布圧平方センチ当り0.4~0.7kgの範囲であるが草生状況により適宜加減する必要がある。
  9. 散布装置使用に際しては下垂枝への先端Vノズルの送液停止操作、支柱等障害が多くなった場合の低速度散布、後退、急旋回時の散布竿の取扱い等を注意する。

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