岩手県園芸試験場研究報告 第1号(昭和46年3月発行)

ページ番号2004885  更新日 令和4年10月6日

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訪花昆虫増殖利用保護に関する研究(第1報)リンゴ園における訪花昆虫相

小林森己

 リンゴ園の訪花昆虫相の実態を究明して、その優位種を探索し、利用保護上の基礎資料を得るために、1962年から1970年にわたって、異った環境にある2地域の園地について満開期1日、1時間ごとに採集される全訪花昆虫について比較調査を行うとともに、県内12ケ所のリンゴ集団栽培地の園について採集を行い(1970)地域ごとの実態を環境との関連性とともに解明した。

 9年間にわたりリンゴ花上において採集された昆虫のすべてをまとめて見ると、クモ類1科1属1種と半翅目1科1属1種、鱗翅目4科5属5種、双翅目12科28属34種、鞘翅目6科10属10種、膜翅目8科13属17種となる。

 またA圃場とB圃場の結果をまとめるとつぎのようである。A圃場ではクモ類1科1属1種と鱗翅目3科3属3種、双翅目11科28属29種、鞘翅目4科5属5種、膜翅目5科7属11種、B圃場の結果は半翅目1科1属1種、双翅目4科12属15種、鞘翅目3科4属4種、膜翅目7科10属13種である。

 A圃場の9年間調査のうち最優位を占める年数の多かった種類にEristalis Cerealis EABRICIUSがあり、5回を数えた。またHelophilus virgatus COQUILLETTの密度も高く、2位以下ではMelanostoma scalare FABRICIUS、Calliphora lata COQUILLETT、Lucilia caesar LINNEによって構成され、またApis mellifera LINNEは人工的介入があれば密度を高めている。2位以下の種類については年による変動が大きいが、安定した有力訪花昆虫の種類はEristalis cerealis FABRICIUSということが出来よう。

 B圃場の水田を主体にした環境では1965年当初Melanostoma scalare FABRICIUSが最優位であったが、以後4回はApis mellifera LINNEによって占められ、Eristalis cerealis FABRICIUSは1回、2位で4回を占めて、比較的安定した傾向が見られる。しかし種類の多少から見るとハナバチ類が豊富であった。またこの場所ではCalliphoridaeの種類は極めて僅少であった。

 岩手県内12ケ所の訪花昆虫相を見ても、水田地帯にあるリンゴ園は極めて貪弱であり、畑作、山間地帯のリンゴ園が豊富である。この場合も各地から比較的安定してEristalis Cerealis FABRICIUSが採集され、ことに北部の地帯ではハナバチ類が豊富であった。

 年変動を見るとハナバチ類は多湿年の活動が少く、低湿の乾燥した年に種類、量とも豊富な活動が見られる。Eristalis cerealis FABRICIUSではこの関係は低い傾向にあり1966年のPeak以後1969年にPeakが現れて、(A圃場)年による変動が見られる。

 訪花昆虫の主要種の日週活動ではEristalis cerealis FABRISIUSは早朝8時頃から訪花が見られ、午前と午後各1回のPeakをつくる。Helophilus virgatus COQUILLETTは活動開始はやや遅く、午前11時頃から午後2時頃までの訪花が盛んである。

 Calliphora lata COQUILLETTは午前8時以前から訪花が見られ午前9~10時頃最大Peakに達して、午後の活動は少い傾向にある。Lueilia caesar LINNEは量的に多かった1969年の場合で見ると、前種同様の早朝からの活動と、1日3~4回のPeakをつくり、かなり変動がある。ハナバチ類の訪花開始は双翅目昆虫より遅く、午前10時頃から午後3時頃までが盛んで、Peakは12時前後に現れることが多い。

  1. 昆虫相互間の関係では、Apis mellifera LINNEの多訪花時は他のハナバチ類の活動が少く、それ以前にPeakに達している。またEristalis cerealis FABRICIUSのPeak時は、Helophilus virgatus COQUILLETTは低下して、その少い時間帯にPeakに達する傾向がある。Calliphoridaeの2種は前種の訪花開始頃最大に達して、その種の多訪花時は減少しているが、Lucilia caesar LINNEはその後も数回Peakが現れて、他種の影響は比較的少いと思われる。また安定した訪花虫見としてのEristalis cerealis FABRICIUSと、人工的要素のあるApis mellifera LINNEの関係を見るとApis mellifera LINNEの活動Peak時は減少して、それ以外の時間帯に最大に達している傾向が見られる。

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