岩手県畜産試験場研究報告 第17号(平成元年3月発行)

ページ番号2004892  更新日 令和4年10月11日

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乳牛の飼養環境改善のための断熱自然換気方式牛舎(オープンリッジ乳牛舎)

渡辺 亨・住川隆行・山口純二・皆川秀夫・瀬能誠之・堂腰 純

 当牛舎の換気量、温度環境、衛生環境、管理作業環境などについて調査した結果、冬期間:毎時10~15回、夏期間:毎時16~50回の換気量があり、他の牛舎に比べて、浮遊細菌数、粉塵濃度等が低く、また、舎外と比較して舎内の温度が冬期間の最低温度で15℃以上高く、夏期間の最高温度で2~3℃低かった。また、冬期間における舎内の結露を防止できた。以上、当牛舎の構造で概ね良好な環境が得られ、しかも低コストであることが明らかとなった。

 また、当場に建設したような断熱自然換気牛舎は県内一円に普及できるものと思われるが1頭当たりの牛床面積が8平米程度の牛舎に適用され、これより狭い牛舎(フリーストール方式など)では断熱施行及び天井構造をより簡易にすることが可能と思われ、これより広い牛舎についてはさらなる試験研究を要する。また、舎内の結露を防止しながら温度を0℃以上に保持する対策も必要と思われた。

 また、当牛舎と同様の換気方式について北海道その他で試験研究を進行中であり、今後に期待される。

高標高地におけるサイレージ用とうもろこしの安定生産技術

川村正雄・橘 千太郎

  1. '85年に予備試験を行い、'86~'88年に本試験を行った。この間、'85年の6月15日や'86年6月10日には県内に晩霜が見られ大被害をもたらしたが、試験を実施した850m圃場では霜害を回避できた。また、葛巻町塚森でのとうもろこし栽培は'84年に始まり、'88年に24.5ヘクタールの作付けが行われた。この間、特に大きな問題はなく、早播技術や適品種の選定により、安定した栽培が行われた。
  2. 岩手県の高標高地においてサイレージ用とうもろこしの安定生産を行うためには、相対熟度90日以下の品種を用いて早播をすることが重要であり、その際には、低温発芽性についても留意する必要がある。本試験の結果、適品種を選定して早播を行うことにより、10アール当たり乾物収量1,500~1,800kg、TDN収量1,000kgを期待することができる。

とうもろこし連作障害回避のための飼料作物の間作・交互作栽培法

小針久典・細川 清・伊藤陸郎・佐藤勝郎・山田 互・太田 繁・山田和明・佐藤明子

 サイレージ用とうもろこしは高エネルギー粗飼料として大家畜経営において、その栽培面積の伸びが注目されているが、その栽培適地が限定されていることから、連作栽培が大家を占めている。このため、収量低下や病虫害の発生、飼料成分の悪化等の連作障害の発生が懸念されている。連作障害の軽減回避を図るため輪作や冬作導入が望ましいが、土地条件や気象条件の制約のためその普及は未だ緒についたばかりである。輪作や冬作導入の普及を妨げている大きな理由の一つとして、とうもろこしと冬作物との作期の競合がうまく調整できないという点があげられている。そこで、特に冬作物の播種期ととうもろこしの収穫期の問題を解決する方法として「とうもろこし立毛間への冬作物の間作導入」と「とうもろこしと他飼料作物との混作における交互畦播種栽培」とについて検討した。

  1. 冬作物のとうもろこし立毛間導入法と後作とうもろこしへの影響(1)
     とうもろこしの収穫8日前に、ライ麦・イタリアンライダラス・かぶ・レープ・アカクローバ・アローリーフクローバ・ヘアリベッチを立毛間播種した。イタリアンライダラスは雪腐れのため消滅し、マメ科牧草のアカクローバ・アローリーフクローバ・ヘアリベッチは越冬不良であった。ライ麦・かぶ・レープは乾物でアール当たり51~75kgの収量が得られた。冬作物導入跡地のとうもろこしの生育はレープ跡が最も多収で、次いで小岩井かぶ、ライ麦が続いた。冬作物と跡作のとうもろこしの合計乾物収量はライ麦導入区がアール当たり246kg、レープ及び小岩井かぶ導入区が231kgで、この3種類の間に大きな違いは見られなかった。
  2. 冬作物のとうもろこし立毛間導入法と後作とうもろこしへの影響(2)
     とうもろこしの立毛間に、ライ麦・イタリアンライダラス・アカクローバ・かぶ・レープを播種時期(3時期)、播種法(粗耕・直播、散播・条播)を組合せて播種した。越冬直前までの生育では、早期播種での生育は良好であったが、立毛間の生育期間が、ライ麦を除き、1ヶ月~2ヶ月と長いこともあって、発芽はしたものの後に消滅する個体が目立った。播種床では、概ね耕起播種が不耕起播種より良好であった。越冬できたのはライ麦とアカクローバのみで、ライ麦及びアカクローバの後作とうもろこしの生育には、差が見られなかった。
     間作を挟んだ2ケ年間の合計乾物収量を見ると、アカクローバ導入法が最も多収で、次いでライ麦導入区と間作のないとうもろこし連作区はほぼ同収であり、ソルガムとうもろこし組合せ区は最も低収となった。立毛間作物の定着のためには、冬作飼料作物の越冬態勢の確立のため、播種期の外、立毛間の生育期間について、更に検討を加える必要がある。
  3. とうもろこし連作障害回避のための交互作栽培法
     主作のとうもろこしに対し、副作の飼料作物としてイタリアンライダラス・ライ麦・アカクローバ・エンバク・レープ・かぶを2畦ないし3畦ずつ交互播種した。副作作物の生育は、ライ麦以外はいずれも、3畦交互作が最も成績よく、対照区の立毛間作導入区は最も不良であった。主作のとうもろこしの乾物収量は、交互作区が対照区の間作区の半分の作付面積であるにもかかわらず、約5%少ない程度で、対照区の全畦播種区と大差なかった。また、交互作区のとうもろこしは、乾物率・雌穂重割合・TDN含有率において対照区を上回り、品質が優れていた。主作と副作の合計では、交互作は立毛間作と同等ないし、これを上回る収量を上げることができた。
     交互作栽培は、立毛間播種による間作に比べ播種作業が容易である上、副作作物の生育は安定的であった。交互作栽培において、主作と副作の作付位置を年次によって交替することにより、連作を中断し、連作障害を軽減回避できることが明らかになった。なお、交互作栽培法の圃場作業性や最適畦数について、更に検討の余地が残されている。

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