岩手県畜産試験場研究報告 第16号(昭和63年3月発行)

ページ番号2004893  更新日 令和4年10月11日

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とうもろこしと有用マメ科作物の混作栽培技術

川畑茂樹・平野 保・瀬川 洋・遠藤宏隆

 サヤインゲンの晩性品種ケンタッキーワンダーは初期生育・蔓性に優れ、極早生種とうもろこし栽培期間にほぼ適合する生育ステージを兼ねそなえていることから、混作栽培マメ科作物として適するものと判断された。とうもろこし単作収量並の合計乾物収量を確保するための、とうもろこしとサヤインゲンとの組合せ密度は、とうもろこしの栽植密度が7,000株、サヤインゲンは4,000株以内と考えられた。播種期の問題では遅播によって生育競合の度合が強まり、生育状況を調査した結果でも異常の発生割合が早播単播区<標準播単播区<早播混播区<標準播混播区の順で高まった。実証栽培試験では、9.4%の最大の混入率を得たが、試験区試験時に懸念されたハーベスターの詰まりを起こすなど作業性の不良及び高い収穫ロスを生じた。サヤインゲン混作によるサイレージ栄養成分の向上効果は、10%混入した場合でDCP1.5%・Ca0.29%程度の向上が認められた。

 極早生とうもろこしとのサヤインゲン同時播種混作栽培は、両作物の生育期間がほぼ等しいため強い生育競合が観察され、混作の条件として、とうもろこしの健全な生育と適正な栽植密度の維持が必要と考えられた。この間題の解決として「ずらし」播種栽培を検討した結果、生育競合の軽減効果が確認された。ずらし播種の最適期間はとうもろこし発芽後2週間程度と考えられ、マメ科乾物混入率は最大で6.3%であり、DCPに換算すると0.7%程度の向上が推定された。

 一連のサヤインゲン・とうもろこし混作栽培試験の結果、混作栽培を行う前提として、耐倒伏性・低温成長性の高いとうもろこし品種との組合せ・鳥害、虫害による欠株の防止・播種機の調整による適正な株間の確保・正しい施肥管理など適正な栽培管理を行い健全なとうもろこしの生育を確保することが大切であり、生育競合の関係からサヤインゲン混入率は8%程度が限界と考えられた。ずらし播種を行うことでこれらの問題の多くを解決する見込みを得たが、なお収穫作来時の引き倒しの問題等残された課題もあった。また混作栽培での施肥量の問題として試験では特定できなかったが、サヤインゲンはマメ科作物としては窒素成分を多く必要とされていることから、単作時の窒素成分施用量に5kg程度増量する必要があるものと考えられた。

大規模畜産経営の発展と経営管理

杉原永康・村上哲太郎・下 弘明・漆原礼二

 現在、大規模畜産経営の負債問題が、世論をにぎわしているが、経営管理の分野から、電算機を利用した経営管理の手法及び経営管理指標の作成等について検討した。

1 経営管理と資金管理について
 パーソナルコンピューター用の肉用牛の肥育経営における総合的な経営管理の方式を検討し、経営管理プログラムを作成した。対象畜種は肉用牛の肥育経営であるが、農家の負担を軽減し、省力化を目標としたシステムである。

2 経営発展と投資の手順

  1. 安定型の経営と不安型の経営(酪農、肉用牛の肥育、乳肉複合経営)の昭和50年以降の財務状況の変化を調査し、安全性からの経営管理指標を作製した。管理指標は2段階となっており、第1段階では、自己資本比率などの基本指標を主体とし、第2段階では月商倍率など、第1段階での判断基準を深める形で作成してある。
  2. 1. の経営管理指標を受けて、酪農経営と肉用牛の肥育経営の優良農家の財務水準を調査し、細部にわたった畜種間の差を検討した。結果としては、優良農家の財務水準は共通した特徴が見られ、理想的な財務水準となっていた。
  3. 肉用牛の肥育経営の発展段階ごとの経営モデルを作成し、財務指標の限界値を策定した。モデルは経営開始時点に、素牛が安い場合と逆に素牛が高い場合を設定し、当初50頭の飼養頭数を10年後に100頭にする条件でシミュレーションしている。このモデル経営によって、自己資本比率、売上高対支払利息率、月商倍率など、主な財務指標の変化を検討したが、自己資本比率は20%以上、売上高対支払利息率は10%以下、月商倍率は20倍以下の水準がシミュレーションの結果として現れてきた。

高品質特殊肉用鶏「南部かしわ」の開発に関する研究

山舘忠徳・青木章夫・村田亀松・菊池 仁・下 弘明

 「うまい鶏肉」に対する消費者ニーズに応える肉用鶏を開発するために、当場保有の卵肉兼用種を中心に数品種を用い、二元母鶏の種卵生産能力、三元コマーシャルの増体能力を検討しそれらの成績から最も実用性の高い三元コマーシャル鶏を「南部かしわ」と命名し、さらに給与飼料と飼養法についても検討した。

1 試験1 二元母鶏産卵性能比較試験

  1. 産卵性能としては、RIR×BPRが最も良好で産卵率80.3%、日産卵量46.0グラム、飼料要求率2.46であった。逆にNG×RIRは50%初産開始日齢が他に比べ10日以上遅れ、最も劣った。
  2. 体重では、WRが交配されたものが大きく、300日齢体重で約3,300グラムとなり、飼料摂取量も1日1羽当り130グラムと多く、飼料要求率も3.0以上を示した。しかし、産卵率は73~75%と良好な成績であった。
  3. 人工授精によりGを交配した際の受精率・ふ化率では、NG×RIRが良好な成績を示した。

2 試験2 三元コマーシャル増体比較試験

  1. 体重では肉専用種であるWRが交配に使われた組合せが大きく、G×(WR×RIR)は16週齢で雄2.99kg、雌2.12kg、平均2.56kgとなり、飼料要求率でも3.34と最も優れていた。
  2. 「南部かしわ」(G×(WR×RIR))と市販ブロイラーとの味覚官能検査(三点嗜好法)では、識別差、嗜好差ともに5%水準で有意な差があり、「南部かしわ」が好まれた。

3 試験3 飼養法及び給与飼料の比較試験

  1. 飼養法の違いによる体重差は、採卵鶏育すう用飼料で放し飼いが9グラム大きかったが、ブロイラー用飼料で逆に95グラム小さくなった。
  2. 飼料要求率、生体1kg当りの飼料費では、ブロイラー用飼料で放し飼いをした区が最も優れ、それぞれ3.11、152円となった。
  3. 解体調査における精肉歩留(対屠体)、肉質検査におけるテクスチャー、色調においては一定の傾向はみられなかった。

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