岩手県畜産試験場研究報告 第3号(昭和48年3月発行)

ページ番号2004905  更新日 令和4年10月11日

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草地造成に関する研究

1. 不耕起によるシバ型野草地への牧草導入試験

久根崎久二・戸田忠祐・小針久典・小原繁男

第1部 刈取利用による牧草導入試験
 シバ野草地への牧草導入法を火入れ、殺草剤、石灰窒素散布処理の面から検討した。

  1. 試験地はワラビ、スゲ等を若干含むシバの優先するシバ型野草地である。
  2. 各処理区ごとの牧草の発芽定着教の違いから、播種当年の牧草化の過程は異なった。即ち、殺草剤区はクロレートソーダにより野草が枯殺されたため、野草との競合はなかった。火入れ区は枯れ草の焼却によって地表が整理されたため、牧草種子の着床が最も良く播種当年すでに50%牧草化した。無処理区は種子の着床定着が悪く、野草との競合が最も激しかったが、施肥と刈取の繰り返しにより漸次牧草率が高まった。石灰窒素の施用は余り効果的でなかった。
  3. 播種2年目には越冬後、早春のシバの生育開始期が遅いのに対して、牧草はきわめて早く旺盛な生育を示すため、1番刈時には完全に野草を凌駕し、各処理区ともに牧草率が90%以上に達した。
  4. 生草収量は各区間に大差なく、年間アール当たり500~600kgであったが、2ケ年間を通じて火入れ区が最も高い収量を示した。
  5. 以上要するに、不耕起によるシバ型野草地への牧草導入は、種子の着床の良否が野草と牧草の競合を左右するので、播種当年は処理間で牧草導入率に明らかな差がみられたが、ある程度牧草が定着しておれば、その後の施肥および刈取りの繰り返しにより牧草化率を著しく高めることができる。

第2部 放牧利用による牧草導入試験
 シバ型野草地への牧草導入法を火入れと牛の放牧を組合せて検討した。

  1. 火入れによってシバ型野草地の堆積してある枯れ葉が焼却され、播種床の整理に効果的で牧草の着床を有利にした。
  2. 播種前後に牛を放牧することによって野草の抑圧、牧草の定着を促し野草との競合を有利に導いた。また、放牧の効果は火入れ処理と組合わせることによってさらに向上した。
  3. 牧草の定着は播種当年には各処理区間に大きな差がみられたが、翌春の牧草の生育開始がシバなどの野草に比べ約1ケ月早いため、ある程度の牧草の定着があれば、シバは牧草に庇陰され減少が顕著である。
  4. 野草は利用が進むにつれ減少し、施肥量の多い区ほど牧草が野草との競合において有利に導かれ、牧草化率は高められた。
  5. 牧草導入時の牧草の定着が少ない場合でも、多施肥することにより牧草率は著しく改善された。
  6. 家畜の放牧を用いたシバ型野草地への牧草導入の技術体系としては、火入れ(播種床整理)-施肥播種-後放牧(踏圧及び野草抑圧)-管理放牧(施肥と放牧利用)が望ましい。

2. 放牧用草種の選定に関する試験

小針久典・久根崎久二・小原繁男

  1. 牧草々種の放牧における嗜好性を比較しようとした。
  2. 14草種の単播区と混播6組合せを設け肉牛を放牧し、入退牧時の草丈及び退牧時の採食面積割合を調査した。
  3. 入牧時の草丈の高い牧草ほど、退牧時の草丈(残草高)が高くなる傾向がみられた。
  4. 入牧時草丈に対する採食された草丈の利用率から推定すると、利用率の高いものは、スムーズブロームグラス、リードカナリーグラス、チモシー、ケンタッキー31フェスタ、ラジノクローバであり、利用率の中位のものはオーチャードグラス、ホワイトクロ一バ、バーズフットトリフオイル、レッドトップ、ペレニアルライグラスなどであり、利用率の低いものはクリーピングレッドフェスク、ケンタッキーブルーグラス、ハイランドベントグラス、ゴーツルー等であった。

3. 放牧用草種の組合せに関する試験

小針久典・落合昭吾・久根崎久二・小原繁男

  1. 放牧用草種の組合せ12例について、刈取法によって、収量性・季節生産の分布、草生密度・永続性等を検討した。
  2. 年間合計収量上位の組合せの基幹草種はオーチャードグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスク、ラジノクローバであった。
  3. ルーサン、バースフットトリフオイル・ゴーツルーは収量上混播効果が認められない。
  4. シロクローバ混入区に比べラジノクローバ混入区の方が収量的にまさっており、マメ科率も高かった。
  5. 利用2年目で、アカクローバは痕跡程度しか認められず、イタリアンライグラス、バーズフットトリフオイル、ルーサン、ゴーツルーは消失した。
  6. 季節生産のふれの小さいのは、以下の組合せなどであった。
    No.1:イタリアンライグラス+オーチャードグラス+ペレニアルライグラス+ケンタッキー31フェスク+アカクローバ+ラジノクローバ
    No.2:イタリアンライグラス+オーチャードグラス+ペレニアルライグラス+ケンタッキー31フェスク+シロクローバ+ケンタッキーブルーグラス+バーズフィットトリフオイル
    No.4:オーチャードグラス+ペレニアルライグラス+ケンタッキー31フェスク+アカクローバ+ラジノクローバ+チモシー
    No.11:ケンタッキー31フェスク+シロクローバ+リードカナリーグラス+スムーズブロームグラス+ゴーツルー
  7. DCP含有率の少ない組合せはNo.2、9であり、TDN含有率の比較的高い組合せはNo.2、4、9などであった。
    No.9:ペレニアルライグラス+シロクローバ+ケンタッキーブルーグラス+レッドトップ+クリーピングレットフェスク

草地の肥培管理技術体系化に関する研究

1. 早春追肥時期に関する試験

小針久典・蛇沼恒夫・小原繁男

  1. 早春の追肥時期の早晩が、収量と年間収量分布に及ぼす影響を知ろうとした。
  2. オーチャードグラス優占草地を用い、窒素肥料(尿素・硫安)について、追肥を4月上旬・中旬・下旬並びに5月下旬の4時期に実施した。
  3. 草丈では、1番草は追肥期の早い区ほど大きく、2番草、3番草は追肥期の遅い区ほど大であり、4番草以降は追肥終期の影響は見られなかった。
  4. 生草収量は、1番草では追肥の早い区ほど多収、2番草は追肥の遅い区ほど多収であった。年間合計収量は、早春追肥の早晩にかかわりなく、ほぼ同量であった。
  5. 追肥時期の早晩は、時期別収量の割合(とくに1番草・2番草)に大きを影響を与えた。
  6. 尿素と硫安との間には大差が認められなかった。

2. 秋施肥・春施肥に関する試験

小針久典・蛇沼恒夫・小原繁男

  1. 秋施肥、雪上施肥、春施肥が牧草の生育に及ぼす影響を知るため、オーチャードグラス・ラジノクローバの混播草地を用い、10月・11月・12月(雪上)・3月(雪上)・3月(融雪後)・4月にそれぞれ石灰・硫安・尿素・熔憐・過石・塩加それぞれ単用と四要素併用の施肥を行った。
  2. 年間合計収量について、各施肥区をこみにした平均収量の比較では、10月<3月中旬≒4月≒3月下旬<11月<12月の順に多収であった。
  3. 積雪前施肥と融雪後施肥とを比較すると、1番草では各肥料とも、春施肥が多収、年間収量では、塩加と四要素併用区を除き、春散布の方が多収となった。
  4. 雪上散布は、他区に劣らない成績を示した。
  5. 収量が多い施肥時期は、石灰では12月と3月、硫安は12月、尿素は11月・12月・4月、熔燐は12月・4月、過石は12月と3月下旬、4要素併用は10月と11月であった。カリはいずれの時期も大差なかった。

3. 同一施肥量に対する牧草の時期別施肥感応に関する試験

小針久典・蛇沼恒夫・小原繁男

  1. 同一施肥量に対する牧草の時期別施肥感応を知り、合理的施肥配分を行うための資料とするものである。
  2. オーチャードグラス・ペレエアルライグラスの混播草地を供試し、早春と1・2・3・4番刈後に、窒素とカリについて、それぞれ施肥する区と施肥しない区とを設けて、施肥による増収効果を追跡した。
  3. 同一施肥量に対する牧草の応答を、年内増収量に限ってみると、早春の追肥効果が最も高く、ついで1番刈後追肥、2番刈後追肥、4番刈後追肥と続き、3番刈後追肥(7月下旬)の効果は最も低く現れた。
  4. 年間収量分布は、追肥の有無によって大きく変動した。
  5. アール当り0.8kgの窒素・カリの残効期間は2ヶ月ないし3ヶ月程度と推察される。

4. 時期別施肥量に対する牧草の施肥感応に関する試験

小針久典・蛇沼恒夫・小原繁男

  1. 牧草の時期別施肥適量を求め、多収のための施肥配分の資料を得ようとした。
  2. オーチャードグラス・ペレニアルライグラス混播草地を供試し、早春と1番刈から5番刈まで、各刈取後に、窒素とカリについて2~4段階の施肥量を施し、施肥量と施肥後の牧草収量の増収との関係を求めた。
  3. 早春施肥量は、1番草収量に関しては2kg前後が適量かと思われた。しかし、早春のみの施肥の場合は、早春4kg施用しても3番草まで残効が認められた。
  4. 1番刈後の追肥量は、2kg施用区は1kg区にまさる増収を示すが、施肥効率は低くなる。
  5. 2番刈後および4番刈後では、1kg施肥が0.5kg施肥にまさるが、施肥効率は下がる。
  6. 3番刈後追肥は、0.5kgが限度と思われた。
  7. 分施の効果が二、三認められた。

5. 牛糞尿の施用に関する試験

久根崎久二・蛇沼恒夫・小針久典・伊藤敏夫・落合昭吾・小原繁男

(第1試験)
 乳牛1頭が1年間問に排泄する糞尿を20アールと40アールの混播草地に還元し、化学肥料との対比においてその肥効を検討した。

  1. 乳牛1頭1年分の糞尿を20アールに還元した場合の5ケ年間の平均収量はアール当たり718kg、40アールの場合は625kgであり、乳牛1頭1年間飼養に要する草量を24,000kgとすると、1頭当たりの糞尿を40アールの草地に還元することが収奪と還元の均衡上最も望ましい施用量であると考えられる。
  2. 糞尿還元区は施用3~4年次から対照金肥区より収量はまさり、化学肥料区は4年次より減収傾向を示した。糞尿還元区は安定した収草を維持することができた。
  3. 牛糞尿の施用によりマメ科牧草率は高まる傾向があり、特に糞尿の施用量が少ないと多くなる傾向が強いので、化学肥料(特に窒素)の併用によるマメ科率のコントロールがのぞまれる。
  4. 糞尿還元により土壌の化学性が改善され、地力は高められた。

(第2試験)
 乳牛1頭が排泄する糞と尿をそれぞれ単独に30aに還元し、牧草生産に対する役割を明らかにしようとした。

  1. 糞と尿の単独の施用では、糞施用区は年次の経過につれ草生が悪化するのに対して、尿施用区は肥効が高まる傾向を示した。糞尿混合施用では糞、尿単独の肥効に対し年次経過と共に漸増傾向がみられ、糞尿の混合施用が肥料三要素成分のバランスの面からも望ましい形であることが確められた。

草地の維持管理に関する研究

1. 追播方式による草生の維持試験

小針久典・前田 敏・蛇沼恒夫・小原繁男

第1部 クローバ単一草地へのイネ科牧草追播導入試験

  1. クローバ単一草地へオーチャードグラスを追播し、定着させる方法を検討した。
  2. ラジノクローバ単一草地をディスキングしたのちオーチャードクラスを追播した。播種法(散播、条播)と施肥法(基肥窒素成分アール当0、1、2kg)とを組合わせ秋播きし、越冬後各区をさらに早春無追肥区と追肥区とに分けて、2番刈までの経過をみた。
  3. ラジノクローバ単一草地へオーチャードグラスを導入定着きせるためには、散播法と条播法との間には大きな違いが認められなかったが、窒素施肥が発芽個体の生存歩合、越冬歩合およびオーチャードグラスの草丈伸長と混在率収量等多くの点において好ましく、オーチャードグラスのラジノクローバに対する競合を有利に導くものと思われた。

第2部 オーチャードグラス単一草地へのマメ科牧草追播導入試験

  1. オーチャードグラス単一草地へラジノクローバを追播し、定着させる方法を検討した。
  2. 1963年8月、オーチャードグラス単一草地をディスキングし、播種法(散播・条播)と基肥施肥法(無肥・窒素単用、燐酸・カリ併用)とを組合せて追播し、1964年に各区を更に早春無追肥区と早春追肥区とに2区分し、追播ラジノクローバの定着の経過を追跡した。更に1965年には、カリ質肥料の分施方法(早春カリ少肥区・早春カリ多肥区)のクローバの生育に及ぼす影響をみた。
  3. オーチャードグラス単一草地へのラジノクローバの追播導入を進めるためには、追播牧草の生存歩合、草丈の推移並びに収量、草種構成の面からみて、
    (イ)散播より条播の方がやや有利
    (ロ)基肥は燐酸・カリ併用が最も有利、
    (ハ)早春期における追肥は無追肥に比べ収量的に多収であったが、マメ科率は低くなりやや不利
    (ニ)カリ質肥料の早春重点施肥は、追播ラジノクローバ収量維持の面で、早春カリ少肥区より有利であった。

第3部 クローバ追播草地の肥培管理に関する試験

  1. イネ科優占草地にラジノクローバを追播した後の肥培管理の方法が追播草種の存続に及ぼす影響を見ようとした。
  2. 刈取回数を5回刈と6回刈の2区とし、これに施肥条件の3区(窒素・燐酸・カリをそれぞれアール当たりで「2対4対4」、「3対4対4」、「3対6対6」の割合で施す区)を組合せた6区について、収量並びに草種構成をみた。
  3. 刈取回数別収量は5回刈より6回刈が多収、マメ科率は5回刈より6回刈が低かった。これにはスタンドの影響があったと思われる。
  4. 施肥条件別収量は施肥量の多い区ほど多収であり、マメ科率は低く現れた。窒素の増肥によってオーチャードグラスが増収し、ラジノクローバは減収した結果、マメ科率は低下した。燐酸カリの増施によってオーチャードグラスは増収したが、ラジノクローバの収量は変らず、マメ科率はさらに低下する傾向を示した。
  5. マメ科率は5番刈から著しく低下したが、これは盛夏期における過繁茂とウリハムシモドキによるクローバの食害があったためと思われる。

第4部 クローバ優占草地に対するイネ科牧草追播試験(現地試験)

  1. クローバ優先草地に、オーチャードグラスを追播して適当な混播草地をつくるための追播方法並びに追播後の施肥法について検討した。
  2. 追播方法として、ロータリー耕うん機による地表掻把の有無、窒素施用量、播種量を組合わせ追播し、翌年追肥法として、窒素単用区と三要素併用区とを設けた。
  3. 追播オーチャードグラスの生育・定着を有利にするためには、追播時の地表攪乱の効果が認められた。また、追肥は窒素単用よりも三要素併用の方が全収量やイネ科率を高める面で有利であった。
  4. スタンドの不均一性や追播種子の発芽不良等の関係から、追播時の窒素施用量の多少、播種量の多少の影響は認められなかった。

2. 草地の草種比率維持に関する試験

小針久典・前田 敏・蛇沼恒夫・小原繁男・伊藤敏夫・久根崎久二・落合昭吾

第1部 刈取高さと刈取間隔が草種構成に及ぼす影響試験

  1. 刈取の高さ並びに刈取間隔がマメ科混在率に及ぼす影響を検討した。
  2. オーチャードグラス、ラジノクローバ、イタリアンライグラスを供試し混播した。刈取高さは3cm、6cm、10cmとし、それぞれ刈取間隔を40日間隔区と25日間隔区に分けた。
  3. イタリアンライグラスの成育が予期以上に旺盛で、刈取操作によるマメ科率の大きな変動は認められず、マメ科率は1割前後の値に終始した。従って8月上旬頃までは圧倒的に旺盛なイタリアンライグラスの成育を刈取によって抑し得た程度がマメ科率となった。その後はイタリアンライグラスの成育は多少衰えたとはいえ、頻繁な刈取区でば燐酸カリ欠乏がマメ科率を支配するようになったと思われる。
  4. 刈取高さに対するマメ科率は統計処理では有意差はないが(マメ科率が1割前後の値に圧縮されたため)低刈するほどマメ科率が高まる傾向がうかがわれた。
  5. 刈取間隔がマメ科率に及ぼす影響については、統計的有意差は認められなかったが、年間総収量から求めたマメ科を比較すると、40日間隔区より25日間隔区の方が、マメ科率が大きくなっている。しかし、大差が認められなかったのは、刈取操作よりも、燐酸・カリの欠乏が支配要因になったものと考えられる。

第2部 草種構成におよぼす刈取法の影響試験
 刈取法が混播草地の草種構成におよぼす影響をマメ科率の推移を中心に検討した。

  1. マメ科率の推移は、両草種の再生速度の変化にともなって推移して行くが、草丈の再生速度のズレ(草丈比)に基づくものよりも、両草種の単位草丈当り再生量(再生密度)の相対比の変動による影響の方が強かった。
  2. 低刈りを続けると、ラジノクローバの再生速度は次第に大きくなり、低刈りはマメ科率を高める傾向がみられた。
  3. 刈取時期の早晩に基づく影響は刈取高さによって、その現れ方が異なる様相を示した。

第3部 刈取高さに関する試験

  1. 施肥条件が異なる場合、刈取高さの草種構成におよぼす影響がどのように違ってくるか知ろうとした。
  2. オーチャードグラス、ラジノクローバの混播草地で、施肥条件3と刈取高さ3とを組合わせた。
  3. マメ科率は、窒素多肥、燐酸カリ少肥になるほど低下する傾向がみられる。その上、高刈であるほどマメ科率の低下が見られる。これに対し、窒素少肥、燐酸・カリ多肥の条件では、高刈であってもマメ科率の低下が見られなかった。

第4部 刈取法と窒素施用量に関する試験

  1. オーチャードグラス・ラジノクローバ混播草地において、刈取後の早晩、刈取高さの高低並びに窒素施用量の多寡を組合わせて、それぞれの条件が生育・収量・草種構成におよぼす影響を追究した。
  2. オーチャードグラスに対するラジノクローバの草丈の割合は、窒素施用量の多いほど小さくなる傾向がみられた。
  3. 年間合計乾物収量は、早高刈<遅高刈<早低刈<遅低刈の順に多収であった。窒素施用量が増すにつれ、オーチャードグラスは多収となったが、ラジノクローバは減少した。
  4. 早刈及び低刈はマメ科率を増大させ、窒素増肥はマメ科率を低下させる傾向が認められた。刈取高さと窒素施用量との間には交互作用が見られ、高刈の場合は低刈に比べ、窒素増肥によるマメ科率の低下が著しかった。早刈低刈区では、年毎にますますマメ科が増大する傾向がみられた。
  5. 一般飼料成分と刈取の早晩及び刈取高さとの間には関連がみられ、窒素施用量の多い区ほど粗たん白質の含有割合が高まる傾向にある。
  6. 刈取法・施肥法の相違により、草地の密度に差が生じた。

第5部 刈取法と窒素施用量に関する試験(現地試験)

  1. 刈取法と窒素施用量が混播草地の草種構成と収量に及ぼす影響を知るとともに、地域による違いを知ろうとした。
  2. オーチャードグラス・ラジノクローバを主体とする混播草地について、県北(軽米町)と県南(大東町)において調査した。
  3. 刈取期の早晩、刈取高さ、窒素施用量の多寡を組合せ12処理区について草丈、収量、草種構成について調査した。
  4. 年合計生草量では、刈取の早晩と収量との間には一定の傾向は認められず、県北(軽米)では遅刈が多収、県南(大東)では早刈が多収を示し、刈取高さについては、いずれの地点においても、低刈の方が多収であった。また、窒素の増肥に伴って増収する傾向がみられたが、優位差は認められなかった。
  5. マメ科率の点では、刈り取りの早晩による影響は各地共通の傾向が認められなかった。窒素施用量の多寡はマメ科率に大差を与えなかったが、大東では窒素の増肥によってマメ科率が低く維持される傾向がみられた。刈り取り高さの影響には優位差が認められ、低刈りは高刈りよりマメ科率が大であった。
  6. 大東におけるマメ科率は、早刈り区は遅刈り区より、また低刈り区は高刈り区より高い値を示し、利用2年目は利用1年目に比べこの傾向が強くあらわれた。

第6部 刈取法と燐酸・加里施用量に関する試験

  1. 刈り取り時期の早晩、刈り取り高さの高低、燐酸カリ施用量の多寡が、草種構成および収量に及ぼす影響を知ろうとした。
  2. 低刈り区は、高刈り区に比べて年合計生草重では多収、マメ科率は高く、乾物率は低く、クローバの密度を高め、オーチャードグラスの株数は多いが、株の大きさは小さい等の傾向が認められた。
  3. 燐酸多肥区は少肥区に比べて、年合計収量とオーチャードグラスの収量は多収、マメ科率は低く、粗たん白質含有率も低く、クローバの密度は小さく、オーチャードグラスの株の大きさが若干大きい等の傾向が見られた。
  4. カリ多肥区は少肥区に比べ、収量は両草種とも多収、マメ科率は高く、粗たん白質含有が低く、クローバのランナーが多い等の影響が認められた。
  5. 1年目に比べ、2年目はオーチャードグラスの減収が目立ち、このためマメ科率は上昇した。とくに早刈り区、低刈り区の上昇が遅刈り区、高刈り区より上回った。

第7部 施肥バランスに関する試験(高レベル施肥区)

  1. 多収を前提とした施肥量の高レベルの下で、混播草地におけるマメ科率の調整のため、肥料要素のバランスが草種構成におよぼす影響を知ろうとした。
  2. オーチャードグラス・ラジノクローバの混播草地を用い、窒素・燐酸・カリの施用量を組合せ、高刈り区と低刈り区とを設けた。
  3. マメ科率の高い草地で低刈をしている場合には、窒素の多肥によってもマメ科率の低減を図ることは不可能であった。
  4. 高刈り条件でマメ科率の低下を防ぐため、燐酸・カリを増施してもマメ科率の向上は図れなかった。

第8部 施肥バランスに関する試験(低レベル施肥区)

  1. 施肥量の低いレベルの下で、肥料要素のバランスによって草種比率をコントロールできるかどうかを知ろうとした。
  2. オーチャードグラス・ラジノクローバ混播草地を用い、窒素施用量(アール当り0.5~2.0kg)とカリ施用量(アール当り2.0~4.0kg)とを組合わせた7区について高刈り区と低刈り区とを設けた。
  3. 低刈り条件で窒素施用量が少ない場合のクローバの優占傾向に対して、カリの施用量によってマメ科率をコントロールしようとしたが、カリ施用量とマメ科率との間に一定の関係が認められなかった。
  4. 高刈り条件で燐酸、カリ施用量の少ない場合のクローバの減少傾向を防ぐためには窒素施用量を下げることが有効であった。

第9部 肥料要素に関する試験

  1. 肥料四要素が混播草地の草種構成および収量に及ぼす影響をみた。
  2. 本試験地において、収量維持の点では、単一要素ではカリの影響が最も大きく、次いで窒素・燐酸の順になっている。肥料三要素中の2要素併用では、燐酸・カリ併用の効果が最も高く、次いで窒素・カリ併用が続き、窒素・燐酸併用効果は最少であった。
  3. 石灰加用の効果は大きくなかった。
  4. 年次別収量は無カリ区がカリが入っている区に比べ、減収度合いが高い傾向にある。
  5. 年平均マメ科率は、燐酸・カリ併用区とカリ単用区では高く維持されたが、燐酸単用及び窒素・燐酸併用区では低率にとどまった。マメ科率を高く維持するためには、単一要素ではカリの効果が最大で、次いで燐酸・窒素が続き、2要素併用の場合はカリとの併用が効果的であった。
  6. 草生密度と収量との間に密接な相関が認められた。
  7. 四要素の欠除試験区に、5年目に欠除要素を補ったところ、石灰、カリ、燐酸それぞれ単要素及びカリ・燐酸両要素の補完はマメ科率を高め、窒素単要素及び窒素・燐酸両要素の補完はマメ科率を低下させた。

第10部 単播・混播比較試験

  1. 混播牧草地における草種比率をコントロールするため、草種構成の変動要因のうち、混播することから生ずるところの内的要因にもとづく草種構成の変動がいかにおこなわれるかを知ろうとした。
  2. オーチャードグラス・ラジノクローバ混播区、オーチャードグラス単播区、ラジノクローバ単播区それぞれに窒素、燐酸、カリの施用量、刈取法、肥料四要素などの施肥および刈取要因別の試験区を重ね、単播区を対照として、混播条件における草種構成の変動の度合を知ろうとした。
  3. 混播条件でも、両草種がお互いに独立して生長すると仮定した場合の理論上のマメ科率に比較して、実際に現れたマメ科率は、ほとんどの試験区において低い値を示した。これは、オーチャードグラスに比べてラジノクローバは、単播条件から混播条件にうつした場合の収量の変動度合が大きいためである。
  4. 混播条件におかれた場合の両草種の生存度(単播収量に対する混播収量割合)の開きは、試験区および利用年次によってことなるが、刈取高さが生存度の開きに対して最も大きな影響を与えた。肥料要素の欠除においては、利用1年目はカリ>窒素>石灰>燐酸の順に、利用2年目は石灰>カリ>燐酸>窒素の順に要素欠除による生存度の開きが大きくなっている。

第11部 追播による草種比率調整試験

  1. ラジノクローバ優占草地へオーチャードグラスを追播して、草生の回復と適当な草種比率を保つことを目的として、地表処理を行わない条件での追播法について検討した。
  2. ラジノクローバ単一草地を用い、追播法として、前植生のクローバを刈取除去する区・無刈取区・刈取放置区の三条件の下で、播種した後、保護管理として発芽後の刈取時期の早晩とその程度について、発芽ならびに追播オーチャードグラスの混入度合について検討した。追播時期として5月と6月と9月の3回にわたって行った。
  3. 3回の試験のいずれも、追播時の条件としては無刈取播種は追播のため最も不利であった。刈取除去と刈取放置とのちがいは、播種時期などにより葉数や発芽数など個々の点について差が認められる場合もあったが、大差はないと思われた。
  4. 播種後の保護管理としては、5月追播と9月追播では、発芽後1~2週目の刈取がオーチャードグラスの定着に最も良い影響を与えた。6月追播では、発芽後早い時期に第1回目の刈取をし、しかも続けて2回目の刈取も早めに行うことが、よい結果を示した。

第12部 放牧用草種の比率維持に関する試験

  1. 放牧草地において草種比率維持の容易な草種とその組合せを播種量との関連の下で知ろうとした試験である。
  2. オーチャードグラス・ペレニアルライグラス・ラジノクローバ・シロクローバの4草種について、単播、混播、播種量の組合せについて38区を設け、刈取法によって収量、草種構成を比較した。
  3. 年間収量
    1)単播区の収量は、オーチャードグラスでは播種量の多いほど、ペレニアルライグラスは2kg以下が、シロクローバは0.5kg播種が多収であった。
    2)クローバ混播区の収量は、シロクローバよりラジノクローバ混播の場合が多収であった。
    3)オーチャードグラスとペレニアルライグラスの混播区収量は、それぞれの単播区の平均収量より少収となり、オーチャードグラス・ペレニアルライグラス・クローバ混播収量は、それぞれの単播区の平均収量より多かった。
  4. 草種比率
    1)オーチャードグラスに対するペレニアルライグラスの播種割合が小さいほど、ペレニアルライグラスの収量割合が低下傾向を示した。
    2)シロクローバ混播区に比べ、ラジノクローバ混播区のマメ科率は高かった。
    3)マメ科率の時期別変動は、ラジノクローバよりシロクローバ混播の場合が大きい結果を得た。
  5. 収量分布
    1)シロクローバ混播区は、ラジノクローバ混播区より時期別変動率が大きかったが、変動巾は小さい。
    2)オーチャードグラスの播種割合の多い区は季節分布のふれが大きく、ペレニアルライグラスの播種量の多い区は小さくなる傾向がみられた。

3. オーチャードグラスの株数密度と生産力について

久根崎久二・蛇沼恒夫・小針久典・落合昭吾・小原繁男

 オーチャードグラス株の平米当たり栽植密度を200株、100株、50株、25株の4段階にし、オーチャードグラス単一草地、オーチャードグラス・ラジノクローバ混在草地について、株数と株の茎の消長及び生産力について検討した結果、

  1. 株数は密度が高いほど日数の経過につれ株の消滅が著しく、特に採草的利用とオーチャードグラス・ラジノクローバ混在区においてその傾向が強かった。
  2. 1株当たりの茎数と株の直径には相関があり、株数密度が少ないほど増加し、株数の不足を茎数で補う傾向を示した。したがって平米当たりの茎数は、株数密度の少ない区の分けつ数の増加により、密度間の差は縮まる傾向を示し、その傾向は採草的利用ほど強い。
  3. 株数密度別収量は、採草的利用では、オーチャードグラス単一草地では100株区が、オーチャードグラス・ラジノクローバ混在区ではオーチャードグラス50~100株区が最も多収を示し、この程度の平米当たり株数が採草地における適正株数密度と考えられる。

 放牧的利用では、高密度区ほど多収を示し、草高の低い条件での頻回使用(放牧的)では高い密度が必要であることが認められた。

草地の利用に関する研究

1. 一番刈の早晩に関する研究

  1. 1番草の刈取時期が出穂開花及び収量に及ぼす影響を知り、1番草利用時期決定の資料とする。
  2. オーチャードグラスは、1番刈の早晩により、2番草の出穂茎の割合が左右された。
  3. オーチャードグラス・ペレニアルライグラス混播草地の年間収量は、1番刈の早晩により変動し、最も多収になるのは5月20日(出穂始め)を中心とした前後2週間に刈取られる場合であり、これより早まったり、遅くなる場合には減収した。

2. 牧草地の最終利用時期に関する試験

小針久典・蛇沼恒夫・小原繁男・佐藤進一・佐々木正勝

第1部 最終利用時期と利用程度に関する試験

  1. 草地の最終利用時期が翌春の再生、収量に与える影響を検討した。
  2. 試験は9月20日から10日おきに初冬にかけて刈取る区と、同時期に刈取るほかに、再生した量を10日おきに反覆刈り取る区を設けた。刈取には低刈り(10cm)と高刈り(12cm)の2種を組合わせた。その結果は、
  3. 年内の収量は、平均気温が15℃になる頃(10月中・下旬)に最高収量に達し、その後漸減した。
  4. 年内利用の時期と程度の違いは、高刈りでは翌春の1番刈りの収量に大きな影響はみられなかったが、低刈りは特に10月中・下旬、つまり年内収量の多かった時期の刈取りの影響が翌春にあらわれ減収を示した。
  5. 頻繁な年内の刈取利用の繰返しは、時期と程度を異にするが、高刈りにおいては10月中・下旬、低刈りでは9月20日の刈取りから翌春の収量に影響し、収量減をもたらした。
  6. 高刈り、低刈りとも11月下旬の遅い時期、つまり草体内に貯蔵養分が十分蓄えられたと思われる時期の刈取りは翌春に影響なく、むしろ収量増の傾向さえみられた。
  7. 以上、草地の秋より冬にかけての過度の利用と低刈りは、翌年の再生、収量に影響し、時期的には11月よりむしろ10月中・下旬の利用が影響しやすいと思われた。
  8. 養分蓄積の終わった以降の草であれば、遅い時期の利用が可能であると思われるが、今後さらに検討を要する。

第2部 最終利用時期と最終利用時の草生に関する試験

  1. 牧草地の秋から冬にかけての利用時期と程度のちがいが翌春の再生におよぼす影響を知り、牧草地の利用期間延長のための資料とするものである。
  2. オーチャードグラス・ラジノクローバの混播草地を供試し、最終刈取1回前の刈取日と最終刈取日を組合せた36区と放任区を設けて、越冬前の刈取条件をたがえ、翌春1番草に対する影響をみた。
  3. 最終刈取期が同一時期であっても、その直前の刈取期によって1番草の収量が左右された。最終刈取期が10月5日から11月14日の間にある場合、前回の刈取が9月24日から10月14日の間に行われた場合に翌春の減収が大きかった。
  4. 1番草で最も減収を示した最終刈取時期は、最終刈取の1回前の刈取後の再生カーブがピークに達した時期か、もしくはピークを越した直後の時期に該当するように見られた。この時期以後は最終利用時期が遅くなるほど減収の程度は軽くなった。
  5. 最終刈取の1回前の刈取が10月下旬以前に行われた場合、その刈取後の再生をみると、気温、日照等により10月上旬ごろから生育緩慢となり、したがって10月中旬頃に再生カーブがピークになるか、或いは下降をたどりはじめる。そして丁度この時期に最終刈取りを行うと、翌春の収量に大きく影響をおよぼす傾向が認められた。

3. 牧草収量の利用時および時期別変化に関する試験

小針久典・小原繁男・蛇沼恒夫

  1. 牧草の季節または利用次ごとの収量変化を把握し、飼料生産と給与の計画化の資料を得るため実施した。
  2. オーチャードグラス・ラジノクローバの混播草地を用い、1番草の生長追跡区と1番刈開始時点を早中晩の三期に違えて、それぞれの各番草の再生を追跡する区とを設けた。
  3. 刈取時期別全収量は、1番刈の早晩にかかわりなく刈取回次が進むにつれて低下の傾向を示した。全収量の収量曲線とオーチャードグラスの収量曲線は似通った傾向を示し、刈取後40~50日目にピークが現れた。ラジノクローバの収量曲線は、刈取後20~30日目にピークがみられた。
  4. 年合計収量は1番刈が遅く行われた区ほど多収であった。
  5. マメ科率は各区とも、刈取後日数の経つにつれ、低下する傾向がみられた。

4. 草地の管理面積と牧草生産量に関する試験

久根崎久二・小針久典・落合昭吾・小原繁男

  1. 大規模草地の輪換的な収穫法では、作業能率と草地管理面積から規制される年間刈取回数別生草収穫量は、10アール当たり適期刈区6,250kg(100%)に対して、サイレージ利用体系の場合(刈取運搬)、年間1回刈29%、2回刈59%、3回刈79%、4回刈91%、5回刈89%で、4回刈規模の草地が最も高い反収を示したが、適期刈区に対して約10%の減収であった。また、天日乾燥による乾草調製のような体系の場合には、3回刈以上の草地規模では更に各々10%の減収を示した。
  2. 草地の生産性からみた適正管理面積規模は、年間4回の刈取可能面積が最も良く、サイレージ利用体系のような場合(収穫可能日数/4)×(1日当たり作業能率ヘクタール)、天日乾燥のような場合、2番草以降の収納作業能率を1番草の25%増とすると(収納可能日数/3.4)×(1日当たり作業能率ヘクタール)で表される。
  3. 草地の必要面積規模は、
    収穫必要草量/(収穫可能日数/年間刈取回数)×(1日当たり作業能率ヘクタール)×(年間刈取回数別ヘクタール当たり収量)
    で表される。
  4. 年間収穫草量から見た草地の管理面積規模は、1回当たりの刈取収量の多い年2回刈草地面積が最も収穫草量が多くなるが、負担面積の増大と1番草の質の低下、及び草地に与える影響を考慮すると、年3~4回刈取可能程度の草地管理面積が適当と考えられる。
  5. 1番草は収量及び養分組成の変化から、遅くとも6月下旬までに収穫を完了することが望ましい。
  6. 草地管理面積が多くなり年間刈取回数が少なくなるほど残草率が多く、また草地の裸地率も高まる。

5. 秋季放牧用(Saved pasture)の管理方式に関する試験

久根崎久二・小針久典・小原繁男・蛇沼恒夫・佐々木正勝・渕向正四郎

 夏季の休牧期間と晩秋の牧草収量及び草地に対する影響について検討した。

  1. 夏季の休牧による晩秋の生草収量は、休牧1年目には75日休牧区(8月6日から休牧)が最も多く、水分含有率80%に換算するとアール当たり約200kgの生草が草地に温存できた。また、夏季の休牧を連年行うためには、草地への影響とその回復及び年間収量を考慮に入れれば、滝沢(平地)では8月20日から、外山(高冷地)では8月6日頃から休牧することが望ましい。
  2. 休牧期間が長くなるほど枯葉の割合が多く、長期休牧区では混播草地に比べイネ科草地、平地に比べ高冷地が少ない。
  3. 休牧期間による草地への影響は、休牧期間が長くなるほどマメ科牧草の減少が著しく、裸地率も高まり草生密度が低下した。
  4. 休牧期間が翌年の草生に与える影響は、早春の第1回利用時には休牧期間が長いほど減収の割合が高いが、第2回利用時以降には外山の草地では草生の回復が認められたのに対し、滝沢の75日以上の休牧では収量の回復が認められなかった。マメ科率、裸地率とも滝沢草地では8月6日以前からの休牧ではほとんど回復もしなかったが、外山草地では各休牧区とも回復の傾向がみられた。

6. 模擬放牧に関する試験

小針久典・蛇沼恒夫・小原繁男

第1部 混播草地

  1. 入退牧時の草丈・草高が牧草の再生に及ぼす影響を知るため、家畜の採食の代わりに刈取操作によってその影響を見ようとした。
  2. オーチャードグラスとペレニアルライグラスの混播草地を供試し、草高が20cm、30cm、40cmに達した時点と適期に、それぞれ刈取高さを違えて刈り取った。
  3. 刈取時草高の低い区ほど、また刈取高さの高い区ほど草丈再生速度は早く、オーチャードグラスとペレニアルライグラスの草丈差は縮小した。
  4. 年間合計収量では刈取時草高の高い区ほど、また、刈取高さの低い区ほど多収傾向がみられた。刈取高さが低く、刈取時草高の低い区ほど年次経過による減収がひどくなる傾向が伺われた。
  5. 刈取時草丈が高く、刈取高さの低い区ほど、オーチャードグラスの密度と収量比率が高まり、低い草丈で頻繁に利用する場合にはペレニアルライグラスの比率が高くなる傾向にある。
  6. 再生収量の多少は、草丈伸長速度の大小より、草丈1cm当たりの草重の多少と有意の相関が認められた。

第2部 単播草地
 入退牧時の草丈・草高が牧草の再生に及ぼす影響を知るため、家畜の採食の代わりに刈取操作によって、その影響をみた。ペレニアルライグラス単播草地を供試し、20cm、30cm、40cm、適期に達した時に、それぞれ5cm、10cmの高さに刈り取った。平均草丈再生速度は、おおむね刈取時草高の低い区ほど大きく、また10cm刈区より5cm刈区の方が大きかった。年合計収量は、草高20cm区<草高40cm区<草高30cm区の順に多収を示した。風乾物収量では5cm刈より10cm刈の方が多収の傾向がみられた。

第3部 模擬放牧跡地

  1. 模擬放牧跡地を採草利用した場合、前年までの利用法により、牧草生産力に差がみられるかどうかを知るため、オーチャードグラス・ペレニアルライグラス混播草地で、1966年・1967年の2ヵ年模擬放牧した草地を供試し、無肥の場合の残効と施肥した場合の生産力とを検討した。
  2. 無追肥区の草量と前年度収奪量との間には相関がみられず、残効には差がないものと思われた。
  3. 追肥区の収量は、前年度放牧的利用をした区ほど多収であり、前年度採草適期利用した区の収量は最低で、前年度収量に比べて収量の逆転がみられた。
  4. 前年放牧的利用をした区の収量が採草的利用をした区より多収となったのは、利用法の違いが草生密度や草種構成の変化をもたらしたことと関連があるものと思われた。

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