岩手県畜産試験場研究報告 第2号(昭和45年4月発行)

ページ番号2004906  更新日 令和4年10月11日

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牧草および牧草サイレージを主体とした乳牛の飼料給与基準設定試験

三浦由雄・佐藤彰芳・伊藤敏夫・田中喜代重・佐藤進一・後沢松次郎・村松 緑・村田敦胤

 当地域の立地条件から、粗飼料からの給与量の適量限界と摂取養分量の適量限界を把握明示することが重要となったが、試験結果から帰納された諸点は次のとおりである。

  1. 飼料の採食量
     乾涸・妊娠期の採食適量DM量は、体重当り1.6%、うち粗飼料よりは、夏1.3%、冬は1.1%程度であった。泌乳期の採食適量DM量は、体重当り2.3%、うち粗飼料よりは、夏は2.0%、冬は1.5%程度であった。
  2. 粗飼料の実測組成と養分表との差
     実測組成の養分表に対する比率で、一般にDCPの差り大きく、-30~-60%で、TDNも一般に低かった。なかでも牧草、牧草サイレージの変動低下は、はなはだしく、DMについては牧草-14%、サイレージ-55%でTDNの低さもこれに比例する傾向がみられた。これらのものは給与量も多く、水分量も大きいので、給与にあたっては、水分含量を測定の上、給与量の調整を行なう必要がある。
  3. TDNの自給率
     試験結果からの試算で、年間自給率70%程度、一乳期産乳量、4,000~5,000kg程度を得た。岩手県酪農近代化計画では自給率80%以上、産乳量4,500~5,400kgとしているので、自給率に大きな差が生じたが、試験の低自給率は、冬の牧草サイレージに起因するので、これの良質なものの給与が望まれる。しかし、サイレージの調製技術の未普及と、粗飼料多給による粗効率低下等から考えれば、近代化計画としても自給率を引下げ、70%台におくのが無難であろう。
  4. 牧草刈取時の条件による水分含量の変化
     刈取条件(主として気象)による含有水分の日変動は大きいものがあり、とくに梅雨末の大雨期、盛夏の早ばつ期には15%程度の幅の差がみられた。
  5. 牧草サイレージのDM含量と採食量との関係
     サイレージのDM含量と採食量には強い相関があり、またDMとTDN含量にも強い相関がみられたので、サイレージは可能な限り、低水分化して、良質なものを調製給与する必要があると思われた。

牛のピロプラズマ病防除に関する研究

関 毅一・浅沼春雄・村田敦胤・戸田忠祐・沼田 茂・佐藤彰芳・及川誠一・柴田義春・菊地茂樹・滝本喜男・宮野信一・岩崎正幸・沢口靖雄・佐々木忠男・佐藤室鬼・渡辺芳明・及川幹夫・千葉正男・板垣精六・北川清二・千葉春雄・及川岑夫・伊藤 力・工藤和夫・沢野宏四郎・佐藤 隆・三浦賢良・田口敏夫・佐々木勝人・芋田 博・田中修一・田村栄一・草葉文史郎・米沢清太郎・瀬川清彦

 牛のピロプラズマ病を人工感染免疫の方法で防除する技術を開発するため試験を行った。

  1. 人工感染の対象牛は、未種付の育成牛で、妊娠しているものは避けること。
  2. ワクチンは、その現地で過去にピロの大型、小型を確認した健康牛より採血した脱繊血であること。
  3. 接種は放牧120日以上前に頸側に2cc皮下接種し、接種後20日以降に抑制剤を使用すること。
  4. 放牧によるストレスを緩和するため、放牧馴致をするのがよい。

豚の雑種利用に関する試験 -1代雑種(yL)の産肉性-

村田亀松・伊藤 菁・熊谷喜三夫・村松 緑・渕向正四郎・井上年男・熊谷勇太郎・白沢義雄

  1. 1代雑種yLの産肉性を知る目的で、yとLを対照に飼養条件を濃厚飼料主体や一部自給飼料(馬鈴薯、いも糠サイレージ)を添加利用した群飼い方式で3年、3回にわたって飼養試験を実施した。
  2. 豚産肉能力検定飼料を用いた比較では体重90kgになる生後日令はL178±9.34日、y210±8.65日、yL198±15.14日となり、yLはLよりややおそいが、yより早く仕上った。また、1日平均増体量(試験期間内)はLの0.648±0.032kg、yの0.531±0.052kg、yLの0.588±0.078kgでL寄りにあった。飼料要求率はyLはLとyのほぼ中間値を示した。(y=4.07、L=3.68、yL=3.888)と殺解体による枝肉の状態では、と体長、背腰長II、脂肪の厚さ、大割肉片の割合などにおいてはyよりよく、Lに近かったが、肉質においてはLよりややよく評価された。
  3. 馬鈴薯(生)を用いた比較では、3品種とも発育、増体量は豚産肉能力検定飼料を用いた場合に比べやや悪く、発育では17日~20日の遅れをみた。飼料要求率は自給飼料という条件もあって3品種とも4.0以上を示したが、yLはほぼ中間値の4.6であった。と殺解体による枝肉の状態では、Lは本来の品種の特性を発揮し、とくに、肉質ではしまり・肉色がよかった。しかしyおよびyLは脂肪量が多く、赤肉量が少なかった。
  4. いも糠サイレージを用いた比較では、給与養分量(可消化養分総量)が若干多かったことにも起因するが、3品種とも発育、増体量はよく、とくに前回2回の増体量(期間内)に比べて1日当り平均増体量ではLが0.669±0.037kg、yが0.577±0.030kg、yLが0.597±0.047kgと濃厚飼料給与時よりもよかった。また、飼料の利用性もよく、その要求率は3品種間では、Lがややよかった(y=4.00、L=3.69、yL=3.87)。と殺解体成績ではLが全体によい性能を示したが、yとyLは馬鈴薯(生)の利用のときと同様に、脂肪がやや厚くなる傾向を示した。このことから、yとyLについての馬鈴薯、いも糠サイレージの給与は、その量を若干修正することが必要であろう。

 以上のことから、1代雑種(yL)の産肉能力をLとyを対照にみるならば、Lに対しては肉質以外にまさるという成果は得られなかったが、yよりは発育もよく、と体形質ではと体長、背腰長II、ハムの割合、赤肉の割合などが、L寄りにみられたことから、yLの肉用豚としての活用性は、yを肉用豚とするより有利であると考える。
 また、自給飼料の利用でも、この組合せによるyLはyよりよいと判断するが、今後Lの飼養管理技術の向上と他品種の組合せによる肉質改善が行なわれるならば、yLについても考えを新たにしなければならないが、当面する本県の養豚事情の背景からはyLへの評価は充分、実用化できる雑種豚であると考える。

蹄耕法による草地造成後の維持管理に関する試験

久根崎久二・戸田忠祐・沼田 茂・小原繁男

第1次試験 放牧頻度が草生に及ぼす影響
 蹄耕法によって草地造成した結果、良好な牧草の定着をみたが、その後の利用管理の適否が草地の生産性を左右するものと思われるので放牧頻度と施肥条件が牧草の生産量および植生に及ばす影響について検討した。

  1. 蹄耕法による造成3年目の草地におけるアール当り生草収量は標準施肥区370~390kg、窒素倍量施肥区420~450kgであった。
  2. 生草収量とDCPはイネ科牧草の草丈20~30cmで放牧を繰り返した区が最も多く乾物とTDN収量では草丈30~40cm区が多かった。草丈40cm以上の場合はDCP、TDNとも最も少なかった。
  3. 放牧頻度の多いほどマメ科率の増加が著しく、窒素多施肥によるマメ科牧草率の抑圧効果は長草放牧区において若干認められたが、マメ科率を下げることはできなかった。

第2次試験 追肥配分に関する試験
 昭和39年に蹄耕法によって造成した草地を用い、急傾斜草地において草地の放牧利用上の支障となる季節生産の偏り是正のための追肥配分について検討した、その結果、

  1. 蹄耕法による造成4~5年目の生草収量は早春重点施肥区が最も多くアール当り約440kgであった。
  2. 追肥配分による生草収量は早春重点施肥区が最も多く、夏~秋重点追肥区が最も年間収量が低く早春重点追肥区より13~18%の減収を示した。
  3. 季節生産の変動は早春の追肥による春の生育によって左右され春の施肥を控え、夏~秋に施肥の重点をおき、秋の収量を高めることが、収量の年間平衡に役立つが、年間収量は低下した。
  4. 秋期多施肥の翌春への残効は若干認められた。

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