岩手県農業研究センター研究報告 第18号

ページ番号2004378  更新日 令和4年1月17日

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【要報】飼料用米を活用したバークシャー種肥育後期飼料における収益性が高い籾米の配合割合

佐々木康仁・細川泰子

 バークシャー種は背脂肪が厚くなりやすい品種で、厚脂による格落で枝肉単価が安くなることが課題として挙げられる。そこで本研究では、 TDNが低く安価な籾米を玄米に混合した飼料をバークシャー種去勢豚(体重70kgから110kg)に給与することで背脂肪を薄くし、枝肉価格の高い豚肉を低コストで生産することを目的とした。

 試験は平成28年5月から平成29年11月にかけて当所ウインドレス肥育豚舎にて、単飼・不断給餌・自由飲水の条件下で実施した。供試飼料は配合飼料中の穀類(75%)の全量を飼料用米に代替したものを用い、うち籾米割合に応じて0%区(TDN76% 5頭)、10%区(TDN74% 4頭)、20%区(TDN72% 4頭)、30%区(TDN70% 9頭)、40%区(TDN68% 9頭)、55%区(TDN66% 4頭)、65%区(TDN64% 4頭)、75%区(TDN62% 4頭)の計8区とした。籾米及び玄米は飼料用米破砕機で0.2mm幅ローラーに通し粒度を統一したものを給与した。調査項目は発育、採食量、枝肉形質、肥育後期飼料コスト試算とした。

 飼料中の籾米割合を高めるほど一日当りの採食量は減少し、日増体量は低下した(0%区 804g/日、75%区 600g/日)。TDN要求率は40%区と55%区で他区に比較し0.1から0.5程度低下した.背脂肪厚は籾米割合を高めるほど薄くなり(0%区 3.5cm、75%区 2.4cm)、枝肉等級の等外割合は40%区、55%区で低下した(等外割合8%)。肥育後期飼料コストは、40%区、55%区で他区に比較し1頭当たり300から600円程度低くなった。

 以上より、バークシャー種肥育後期去勢豚に飼料用米を給与する場合、籾米割合を40%から55%に調製することで、低コストで枝肉価格の高い豚肉生産の可能性が示唆された。

【要報】トウモロコシ子実・飼料用米SGSを多給した南部かしわの発育及び産肉成績

吉田 登・細川泰子

 トウモロコシ子実、飼料用米SGS及びくず大豆などの国産穀類を南部かしわに給与する技術を明らかにするため、トウモロコシ子実、飼料用米SGS及びくず大豆などの国産穀類を南部かしわに給与し、発育、産肉性について、ブロイラー用配合飼料給与と比較した。

給与試験1
 県内産トウモロコシ子実主体の国産飼料100%区(試験区1) 、ブロイラー用配合飼料に、飼料用米SGS30%を添加した区(試験区2) 、ブロイラー用配合飼料給与区(対照区)とした。出荷目標体重(2.8kg)到達週齢は、対照区で15週齢であったが、試験区1では、17週齢と2週間の遅れ、試験区2では、対照区と概ね同等であった。試験区1では、摂取量が少ない傾向があった。

給与試験2
 試験区1と同様の配合割合で、トウモロコシ子実の破砕粒度を大きくした区(試験区3) 、嗜好性の向上を図るため試験区3に、飼料用米SGSを5%添加した区(試験区4)とした。その結果、2.8kg到達週齢は、3区及び4区ともに1区に比べて、1週間の遅れに短縮された。

 総飼料摂取量及び正肉量から算出した正肉1kg当たりの飼料費は、対照区100に対し、試験区1で75、試験区2で80、試験区3で88、試験区4で83となった。

 また、肉色及び脂肪色については、試験区1では、腿肉、胸肉色及び脂肪色の黄色度が対照区に対し有意に高く、試験区2では、腿肉の黄色度が対照区より高かった。筋胃については、全試験区で対照区より重かった。

  以上から、トウモロコシ子実を主体とした飼料を給与する際、トウモロコシ子実粒度を大きし、飼料用米SGSを5%添加する給与方法にすることにより、発育の改善が図られ、正肉1kg当たりの飼料費は低く抑えられた。また、脂肪色及び筋胃の大きさに特徴のある地鶏肉が生産された。

 飼料用米SGSについては、ブロイラー用配合飼料に30%程度添加することで、発育は配合飼料と概ね同等であり、飼料コストも低く抑えられた。

【要報】日本短角種肥育牛における良好な歩留を確保するための適正な発育指標と飼料給与方法

安田潤平・川畑(神山)洋・細川泰子

 日本短角種去勢牛について、平均的な枝肉重量を確保したうえで良好な歩留の枝肉生産に資するため、枝肉重量450kgを超過した個体39頭について、歩留等級A、B等級の各グループに区分(それぞれA区21頭、B区18頭)し、発育成績や飼料摂取量等を比較検討した。その結果、生後月齢17か月齢までの前期においては、DGを1.2から1.3kg/日程度を確保し、十分に発育をさせるとともに、後期は給与飼料を制限し、DGを0.8kg/日程度に抑えることで、皮下脂肪の厚化を防ぎ、良好な歩留基準値を確保できることが期待された。また、A区の成績から得られた発育値を満たすために必要なTDN、CP摂取量が算定され、これらの栄養摂取量を確保するために適した飼料給与例を提示した。

【要報】ホルスタイン種経産牛の乳蛋白質率、乳中尿素窒素(MUN)および発情持続時間が性選別精液深部注入後の受胎率に及ぼす影響

昆野 勝・細川泰子

 性選別精液を用いたホルスタイン種経産牛の受胎率は同未経産牛に比較し有意に低下することが知られている。また、性選別精液の受胎率向上には子宮角深部注入による人工授精が有効であることが報告されている。そこで、ホルスタイン種経産牛における性選別精液の受胎率向上を図るため、

  1. 牛群検定成績により把握した牛の乳蛋白質率、MUNおよび子宮角深部注入後の受胎率との関係、
  2. 発情発見装置(加速度センサ)を用いた、性選別精液の深部注入における授精適期、
  3. 活動量の増加続時間と受胎率との関係

を明らかにした。
 その結果、ホルスタイン種経産牛への深部注入では、

  1. 人工授精直前の牛群検定成績で乳蛋白質率が3.2~3.4%未満かつMUNが10~13mg/dl未満 、
  2. 活動量の増加持続時間が7時間以上の牛を選定し、
  3. 活動量の増加から12~17時間後の人工授精で受胎率が向上すると考えた。

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