岩手県農業研究センター研究報告 第16号

ページ番号2004380  更新日 令和4年1月17日

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【報文】水稲新品種「銀河のしずく」の育成

小舘琢磨・菅原浩視・佐々木 力・太田裕貴・阿部 陽・高草木雅人・阿部(川代)早奈恵・木内 豊

 「銀河のしずく」は、2006年8月に耐冷性、いもち病圃場抵抗性に優れる中生の良食味品種の育成を目標として、岩手県農業研究センターにおいて「奥羽400号」を母、「北陸208号」を父として人工交配を行い、その後代から選抜育成された品種である。奨励品種決定調査において中生の主食用良質良食味品種として有望と判断され、2015年2月に岩手県の奨励品種として採用され、同年11月に品種登録申請を行った。

 「銀河のしずく」は、出穂期、成熟期とも「あきたこまち」に比べ2~3日遅い“中生の中”に属する岩手県中部及び沿岸南部で栽培可能な品種である。草型は“偏穂重型”で、耐倒伏性は「あきたこまち」より強い“やや強”、障害型耐冷性は“極強”、いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,Pii,Pik”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちは“中~やや強”、穂いもちは“やや強”で、穂いもち圃場抵抗性遺伝子“Pb1”を有する。収量性は「あきたこまち」に比べてやや優る。食味は、「あきたこまち」並からやや優り、炊飯米が白くつややかで、適度な硬さと粘りが特徴である。

 本県の主力品種として、県中部及び沿岸南部地帯、20,000ヘクタールでの普及が見込まれる。

【報文】早生の低アミロース新品種「きらほ」の育成

仲條眞介・佐々木 力・菅原浩視・阿部(川代)早奈恵・木内 豊・田村和彦・宍戸央子・高草木雅人・阿部 陽・遠藤あや・神山芳典

 「きらほ」は、2002年8月にアミロース含有率変動の少ない早生の低アミロース品種を目標として、岩手県農業研究センターにおいて、「ミルキープリンセス」を母、「岩手61号」を父として人工交配を行い、その後代から選抜育成された品種である。2006年から生産力検定試験、特性検定試験に供試し、2008年に「岩手91号」の系統番号を付し、奨励品種決定試験に供試して有望と認められた。

 「きらほ」のアミロース含有率は約9~12%と他の低アミロース品種よりも年次変動が少ない。玄米はわずかに白濁するが良質である。炊飯米の粘りが強く、食味の総合評価は「いわてっこ」並から上回る。

 熟期は「いわてっこ」並で岩手県中北部で栽培が可能な低アミロース品種である。障害型耐冷性は“極強”、耐倒伏性は“やや強”、いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii”と推定され、その圃場抵抗性は葉いもちは“やや強”、穂いもちは“極強”である。

 穂長がやや短く、穂数が少ないため「いわてっこ」に比べ少収であるが、推奨する栽植密度と施肥量の遵守で10アール当たり600kgの収量確保が可能である。

 「きらほ」は岩手県中北部の気象条件下でアミロース含有率が安定しており、冷凍米飯等に利用できる品種である。2013年に品種登録申請し、2015年に品種登録された(登録番号 24582)。

【要報】飼料用米割合を高めた配合飼料がバークシャー種肥育後期豚の発育・肉質に及ぼす影響

佐々木康仁・細川泰子・齋藤久孝

 バークシャー種への飼料用米給与が発育及び肉質に及ぼす影響について調査するため、平成25年度、26年度に、飼料用米の配合割合を各55%区、75%区に設定し、農家実証試験を行った。

 その結果、発育は同等で、肉質ではロース肉の脂肪含量の上昇、皮下脂肪内層及び筋間脂肪のオレイン酸割合の上昇、同リノール酸割合の低下を確認した。また、55%区と75%区を、対照区と比較して2点比較法による官能評価を実施したところ、総じて55%区と75%区が好まれる傾向にあった。

 以上の結果より、バークシャー種に飼料用米を55%又は75%にまで高めた飼料を給与しても発育に遜色はなく、飼料用米給与により食味が向上することから、飼料用米を多給することにより高付加価値な豚肉生産が可能であることが示唆された。

【要報】国産くず大豆の給与が黒毛和種去勢肥育牛の増体および肉質に及ぼす影響

神山 洋・児玉英樹・米澤智恵美・齋藤久孝・細川泰子

 飼料自給率の向上を目的として、黒毛和種去勢肥育牛の配合飼料の5%をくず大豆で代替した際の増体および肉質に及ぼす影響を調査した。黒毛和種去勢牛11頭を対照区6頭、試験区5頭に配分して10~29か月齢まで肥育し増体および飼料摂取量を調査するとともに、定期的に血液を採取し血中ビタミンA分析を行った。

 その結果、試験区間で増体、飼料摂取量、枝肉成績、筋間脂肪中脂肪酸組成に有意差は見られなかったが、試験区で、22か月齢での血中ビタミンA濃度は有意に低下した。また、試験区で、1頭あたりの飼料費は約3千円低下し、CP自給率は約12%向上した。

 以上のことから、黒毛和種去勢肥育牛において、配合飼料の5%をくず大豆で代替して給与しても、定期的な血中ビタミンA濃度のモニタリングは必要であるものの、発育および肉質は慣行区と差はなく、飼料費を低減させるとともに飼料自給率を向上させることができた。

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