農作物技術情報 第8号 畜産(令和2年10月29日発行)

ページ番号2000314  更新日 令和2年10月28日

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  • 牧草地 翌年の良質粗飼料確保を経済的に行うために、秋の草地管理を適切に実施しましょう。
  • 子牛 外気温が下がってきました。防寒対策の準備をし、増体の維持を図るとともに、呼吸器疾病の発生を防止しましょう。

1 牧草地管理

(1)早春代替施肥としての堆肥散布
堆肥施用は、早春の萌芽期の方が効果的といわれています。しかし、早春施肥の難しい地域では、晩秋に堆肥を散布することで春先の生育促進効果が得られます。
散布時には、翌年の減肥に向け、各圃場への散布量(肥料成分量)を概ね把握しておきます。散布後、堆肥の固まりが裸地を作るので、「パスチャーハロー」などで粉砕します。
(2)雑草対策
ギシギシ類への選択性除草剤の秋処理は、3番草の収穫後、葉の大きさが手のひら大に生育した時期に実施します。しかし、気温が低くなると葉面からの薬剤吸収が低下しますので、降霜後の防除は行わないようにします。
(3)石灰資材の追肥
経年草地には、pH5.5を下回らないように石灰施用が必要です。石灰の施用効果は、化学肥料施用などによる酸性化の抑制の他に、土壌微生物の繁殖、有機物の分解等による牧草の生育促進があげられます。酸性化等を抑制するために必要な石灰量は、年間約50kg/10aです。

2 子牛の防寒対策

(1)防寒対策の目的
防寒対策が不十分だと、「体温維持のため体を震わせたり、被毛を伸ばすことでエネルギーを余計に消費する」、「抵抗力が落ちるうえに冬場の乾燥とあいまって肺炎や風邪などの呼吸器系疾患にかかりやすくなる」などの状況に陥ります。子牛は、成牛と比較して皮下脂肪や筋肉が薄く、外気温の影響を受けやすいものです。生産性を落とさないためにも、防寒対策はしっかりと行ってください。子牛の防寒対策は保温、清潔、換気の3つが重要なポイントとなります。
(2) 防寒対策として気をつけること
保温
牛舎にすきま風が吹き込み、牛体に当たると熱が奪われますので、できるだけ隙間を塞ぎ、風が入らないようにします。
人工哺乳をしている場合は、ミルクの調製から給与までに温度が下がることを考慮して、少し温度の高い湯でミルクを作ります。
カーフジャケット、ネックウォーマーやカーボンヒーターの利用も効果的です。ただし、カーフジャケットは、時々洗い、衛生的に保ちます。
また、牛舎の一角をコンパネなどで囲ったり、カーフハッチを設置すると、そのスペースに子牛が集まり、温度を確保できます。

写真1

写真2

写真3

清潔
牛体に糞や尿が付いた状態では、下痢、肺炎等の病気にかかる恐れが高まりますので、牛体を濡らさないようにしま
す。尿やこぼれた飲み水で身体が濡れていると、水分が蒸発する際に、気化熱として牛体から熱が奪われます。子牛の休息スペースに乾いた敷料を厚く敷くなどして対応します。水場や飼槽から少し離れた位置に休息スペースを設置することが大切です。

写真4,5

換気
防寒対策のあまり牛舎を閉めきり、換気が不十分になると、尿などから発生したアンモニアが牛舎内に溜まります。アンモニアは刺激の強い物質であり、牛が吸引すると気管支粘膜を刺激し、ダメージを与えます。気管支粘膜が弱くなることでウイルスなどの病原体が牛体に侵入しやすくなり、風邪や肺炎などの呼吸器病にかかりやすくなります。防寒対策ですきま風を入れないようにしますが、朝方や暖かい時間帯をねらって一定時間換気を行い、牛舎からアンモニアを追い出します。また、牛体を冷やさない程度に換気扇を低速で回転させることも有効です。

(4)飼料給与量の増加
どんなに防寒対策をしても、やはり冬季には体温維持に必要なエネルギー量は増加します。適切に飼料給与量を増やし、増体に必要なエネルギーをしっかり確保してください。子牛の場合、牛舎内温度が-4℃の場合、適温時と比較して維持にかかるエネルギーが32%増加するといった知見もあります。
寒冷期は、スターター給与で寒さに対する栄養を充足させることが重要なため、スターター摂取量の確保や、腹冷え防止にも温湯給与が効果的です。

(5)観察→異常発見→対処を速やかに
一旦呼吸器病が発生すると、瞬く間に同居牛に感染していきます。感染が広がると、治療の日々が続き、管理者の時間的、経済的、精神的な負担が増すだけでなく、増体が滞るなど、悪影響を及ぼします。早めの異常発見、治療がカギです。

  • エサを食べに来ない
  • 元気がない、耳が垂れている
  • 鼻水をたらしている、鼻が乾いている、咳をしている

このような子牛がいないか、しっかりと観察します。
もし、異常な牛を発見したら、できるだけその牛を隔離し、「熱を測る」「獣医師を呼ぶ」などの対応をとります。また、子牛が共用している餌槽、給水槽の清掃は1日1回行い、踏み込み消毒槽を活用するなど、消毒を徹底してください。

3 寒くなる前に、牛舎消毒で病気知らずに

牛舎には色々な病原体が存在しています。特に集合施設等では、各所から子牛が集まるため、牛舎の消毒を行い、病原体をできるだけ少なくして感染の機会を減らします。
(1) 牛舎洗浄
埃や蜘蛛の巣には病原体が付着しています。また、牛舎が糞などで汚れていると消毒薬の効果が減少しますので、取り除きます。発泡消毒は汚れを浮かせることができて、乾燥も速いのでおすすめです。

写真6

(2) 石灰消毒
作業は大変ですが、有効な消毒方法です。塗る場所の汚れを落としてから、ドロマイト石灰を水に溶かして、牛舎全体に塗り付けます。「アルカリ消毒」と同時に病原体の「封じ込め」を行えるため、消毒薬に強い病原体にも有効です。
石灰を塗布した後は良く乾いたことを確認してから牛を移します。なお、洗浄機と石灰塗布機は家畜保健衛生所で貸出しています。
(3) 消毒のポイント
ア 定期的な消毒

牛舎消毒は一度で終わりではありません。定期的に行うことで予防効果が高くなります。病気が蔓延しやすい時期の前を中心に、年2回は実施してください。
イ 部分的な消毒の実施
牛舎全体の消毒の他にも1週間に1~2回程度飼槽、水槽、哺乳柵等を消毒します。人畜に比較的安全な逆性石鹸薬剤がおすすめです。

フッタ

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