農作物技術情報　号外　凍霜害対策（果樹）（令和2年4月7日発行）

• 現在、県内のりんごの生育ステージは発芽期から展葉期となっており、今後開花期に近づくにつれ、凍霜害の危険性が高くなりますので、毎日の気象情報に注意し、被害軽減対策の徹底を図りましょう。

りんご

1　生育概況

定点観測地点の調査結果（表1）によると、発芽は多くの地域で確認されています。本年は暖冬で推移したため、生育進度は平年より10日程度早くなっています。
現時点の開花予想について、平年の発芽から開花に要する日数を、今年の発芽日に当てはめて算出すると、「ふじ」で4月第5半旬には開花始期を迎えると推察されます（表1）。
一般に展葉期以降、開花期に近づくほど、凍霜害を被る危険性が高くなります。今後毎日の気象情報に注意し、事前対策の徹底を図りましょう。特に例年凍霜害を被る園地では注意してください。

2　展葉期以降の低温に注意

県内の「ふじ」の生育ステージの凍霜害発生危険限界温度を示したのが表2で、凍霜害発生温度や被害の様相は、品種や部位、生育ステージ、低温遭遇時間などによって異なり、一般に展葉期を過ぎて開花期に近づくほど、凍霜害の危険性が高くなります。
また仙台管区気象台発表（4月2日）の1か月予報によると、4月18日から5月1日の平均気温は平年並か高いと予報されていますが、この期間はりんごの開花直前で低温に弱い時期に当たりますので、毎日の気象情報には注意し凍霜害発生のリスクが高いと判断された場合は、事前対策の徹底を図ります。

3　凍霜害対策

降霜は無風、晴天の日で、降雨の1～2日後は特に危険性が高く、さらに前日夕方18時の気温が6℃以下の場合は要注意です（図1）。但し、強い放射冷却現象が起きた場合は、前日夕方が10℃以上でも翌朝の最低気温が2℃以下になる場合もあります。

（1）凍霜害の防止対策

ア 霜溜まりの解消
傾斜地の場合、園地下方の障害物は、霜溜まりを作りやすいので除去します。例えば、園地周囲の防風ネットが冷気の流れをせき止めるような場合は、巻き上げておくか除去します。
低温層の発生位置をできるだけ低くするため、マルチを除去し草刈り等で清耕状態にしておきます。

イ 燃焼法による防止
降霜は、数日間連続することが多いので、燃焼法で対応可能な園地では、燃料を十分準備しておきます。
例）市販の防霜資材、灯油、霜カット等
火点数は概ね40カ所／10a以上を確保し、風上側に多く配置します。着火は気温が0℃になる直前に行います（表3）。
なお、灯油にせん定枝チップを混用した燃焼法も効果的であり、灯油をそのまま燃焼させたときと比較し、黒煙の発煙量が少なく、燃焼時間も長くなります。また、点火性も良く、資材費等の面からも有効で、1.5mの高さで2～4℃の気温上昇が期待できますので、参考にしてください（表3）。

ウ 防霜ファンの準備
防霜ファンを設置している園地では、動作の確認、始動温度（2℃）の確認をしておきます。
エ 1輪摘花を控える
摘花作業は1花そう1花とする「1輪摘花」を避け、数花そうに1花そうを残す「株摘み」とします。
オ 散水氷結法
畑地かんがい施設が整備されている地域では、スプリンクラーかん水による散水氷結法が可能ですので、防霜ファン同様に始動温度の設定等準備しておきます。

（2）被害発生後の対策：被害が発生した場合は次の対策を講じてください
ア 被害状況の確認
凍霜害発生後、被害状況を把握するためにはナイフなどでつぼみや花を割り、内部の状況を肉眼で確認して下さい（図2参照）。確認する内容は、めしべから胚珠の色が健全か否かです。褐変している場合は結実が期待できません。
そして、以下の点を確認し、被害の少ない品種、少ない部位を確実に結実できるように結実対策を実施します。

1. 中心花と側花の被害程度（中心花及び側花は結実可能であるか）
2. 樹上部と目通り高さの被害程度（樹上部の花は結実可能であるか）
3. 傾斜した園地では、園地下部と上部の被害程度
4. 品種毎の被害程度（被害の少ない品種は何か）

イ 人工授粉の徹底
被害を免れた花を確実に結実させるため、人工授粉を徹底します。
ウ 摘花・摘果
摘花作業や摘果剤の散布は控え、荒摘果は正常なガク立ちと果実肥大を確認後、過剰な着果を除く程度に行います。

なし、おうとう

なしは、りんごより若干、霜害に強いといわれていますが、りんごより生育が早い品種が多いため、霜害のリスクはりんごと同程度と考えられます。
おうとうも、りんごに比べて開花が早いため、特に今年のような生育の早い年は凍霜害に遭うリスクが非常に大きいと考えられます。
凍霜害が懸念される場合には、りんごと同様の対策を行い、凍霜害にあった場合には、被害を免れた花に人工授粉などの対策を施します。